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「過去未来報知社」第1話・第68回

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>>第67回
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「昔、この町で映画の撮影があった、それは知ってるな?」
「はいはい、50年前にあった映画で、未公開のやつですね」
 撮影隊の後をこそこそ歩きながら、田中は谷口に語りかける。
「あのネズミみたいな顔した町の人が言ってた、アレですね」
「俺、ちょっと調べてみたんだが」
「田中さん、よくそんな時間ありますね」
 顎を撫でながら言う田中に、谷口は呆れる。
 いったいいつ家に帰っているのか分らないぐらい、田中はスタジオにいる。
 もしかしたら、住み着いているんじゃないのか、と思ったが
 本当にそうだったら嫌なので詳しくは聞いていない。
「勿論、フィルムは残ってなかったんだが、写真があった」
 古びた写真を取り出してみせる田中。
 セピア色の写真の中では、端正な顔立ちの男女が微笑んでいる。
「どうよ?
「やあ、美形だな。この時代の役者さんは皆美形ですよね。
 最近じゃ、美醜よりどっちかっていうとユニークさだから、
 美形じゃない役者さんも増えたからな~」
「違う! そこじゃない!」
 田中は谷口の頭を思い切りはたいた。
「な、なにすんですか!」
 噛み付く谷口に、田中はチッチッチと指を振ってみせる。
「それだからお前は、AD止まりなんだよ」
「まだこの仕事始めて、1年ぐらいしかたってないんですけど」
「注意力が足りないってんだ。よく見てみろ」
 谷口、じっと目を凝らす。
「……このあたりで撮られた写真、ですか?」
「違う! よく見ろ!」
「……あれ? えええっ?! なんで?!」
 田中、撮影隊と写真を見比べる。
 撮影隊、笑美と飯島を先頭に、和やかに歩いている。
「あ、もしかして、ご親戚? それなら納得が……」
「いや、聞いたところによると、余所者らしいぞ、あの人」
「……え?」
 谷口、ぽかんと口を開ける。
「合成ですよね?」
「なんでそんなことする必要あるんだよ」
「だって、これが本当の写真なら
 ……それじゃあ、本当にオカルトじゃないですか!」
「ふっふっふ。俺のカンは正しかったぜ」 
 不適な笑いを浮かべると、
 田中は立ち止まる谷口の尻を蹴って先を急いだ。


>>第69回

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