推しが死んだ話②
前回までのお話
推しの死の波動を感じつつも、直視しないことで心の安定を保っていた私。オフ会の行きの電車で未読だった数話を一気に読み、最終回まで駆け抜けた。
推しは死んだ。推しカプに救済はなかった。
その場では友人と久しぶりに会えた楽しさとか未読分を読んだ興奮などで、テンションは最高にハイってやつだったが、帰りの電車で一気にローに落ち込んだ……。
*推しは週刊漫画のキャラクターです。
*この記事を書いている人は、男と男の情愛とか性愛を好む人間で二次創作の小説を書くことが趣味です。
内省するオタク
巷に雨の降るごとく、わが心にも涙ふる。
私は考えた。何故、ここまで落ち込むのか。
このやるせないモヤモヤは、いづこから来るものなりや……?
問題は三つあるように思われた。
推しの死
作品が終わったこと
そのどちらにも納得がいっていないこと
推しが死んだことだけが問題ではなかったのだ。
悲しみの根っこはスパイラルにねじれていた。
推しの死はもちろん悲しいが、結末に納得がいっていれば受け入れられたのでは……?
しみじみと良い作品だった……って感じられる最終回だったら、今も溌剌と二次創作に励んでいたと思う。
事実がどうであれ、私には良い終わり方だとは思えなかった。
これが意外と根深い問題で。
モヤモヤを抱えながらも、私はその気持ちをSNS等で公言しなかった。
推しの死は事実だが、最終回に納得がいかないのはあくまで私の個人的な気持ちだからだ。
推しの死が辛い……に引っかかりを覚える人は少ないだろうが、結末の良し悪しに関しては話が変わってくるだろう。
ここが辛いよ!推しの死
推しの死は、なかなか人に言えない(=周囲の人から理解されがたい)という一面がある。
現実に落ち込んでいるのに、理由を話せない。
リアルで「最近元気ないけど、どうしたの?」と聞かれた時に、「実は……推しがお隠れになって……」と告げられるだろうか。
私はできない。
相手もリアクションに困るだろうし、理解するどころか馬鹿にされたり怒られる可能性がある。
理解のある相手でも、ネタバレになる、という問題がある。
別ジャンルのオタ友やコミックス派の家族には、これが原因で話せなかった。
どこにも行き場のない気持ち
推しの死で、私は平安貴族化した。
何を見ても悲しいし、何を聞いても推しを連想してしまう。
花を見ても月を見ても悲しい。ヨヨヨと泣いて和歌を千首ひねりたい。
お前は一体、推しの何なんだよ……?っと自分でも思った。もちろん何でもないんだから、どうしようもない。
推しが死んで、自分の好きな色がわからなくなった。
何か色を選ぶ時は、何の迷いもなく推しカラーを選んでいた。
漠然とその色が好きだと思っていた。
が、本当に自分はその色を好きだったのか?
色だけじゃない。
行きたい場所も聴きたい音楽も、わからなくなった。
私の主体性 IS どこ?
この状態は正直きつくて、かなり戸惑った。
私はいい歳した大人である。今まで生きてきて、悲しいことも辛いことも人並みにあったはずだ。
なんでこんなんなっちゃってんの……?
心の平安を求めて
周囲のオタクたちは平安貴族化した私を心配し、様々なジャンルを紹介してくれた。漫画・アニメ・小説・ゲームetc……
どれも素敵な作品だったんだと思う。でも、新しいものに向き合う気力がなかった。
それなら味がなくなるまで、現ジャンルをしゃぶっていれば良いのではないか?
が、一気に最終回まで読んだあの日以来、原作もアニメも全く読めていないし、見れていない。心の傷は生々しく血を流しており、本能がやめとけ……時期尚早だと叫んでる。
そんな状態だったから同カプものと語り合うこともできないし、自分のなかで結末を咀嚼することもできない。ましてや二次創作で気持ちを昇華することなんて、無理無理すぎる……。
この時期、かなり迷走していて仏教や心理学の本を読んで乗り越えようともした。執着を捨て悟りを開かなければ、この状態を抜け出せないのでは……?という心境に。
私は成仏できるのか……?