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【短編】彼女の思い出

彼女と同棲し始めて2年目のある春の日、「猫を飼おう!」と突然彼女が言いだした。
唐突な提案に僕は正直驚いた。
なんで猫を飼おうと思ったのか、彼女の言い分は「あなたは友達がいないから」らしい。彼女はクスクス笑いながら言っていた。「僕にだって友達はいるさ」とちょっと怒ってみたが、実際は彼女以外の人には、ほとんど興味なんて持ってなかった。

「スコティッシュフォールドがいいな。」と彼女は言った。僕は断然、三毛猫が好みだったんだけど、結局彼女に押し切られることになった。

新たな仲間の名前は「スコティ」になった。相変わらず彼女の単純明快さにはなんていうか純粋無垢な子供のような可愛さがある。僕が彼女を好きになった一番の理由もまあそんなところかなと思ったりする。
スコティの世話を分担することになり、僕は餌をあげる当番になった。ちなみに彼女はトイレの担当だ。
ご飯を食べる場所は、台所のすぐ下にある。ちょっと大きめのタンクがついていて、手元のレバーを押すと一食分の餌がザザーッとお皿に出てくるタイプだ。猫が自分で食べたいときにレバーを押せば食べられるのでとても便利なものだ。
スコティは最初手こずっていた。前足でレバーを下に倒すということがわからないようだった。困惑する彼女(スコティはメスなのだ)をなだめて、僕は根気よく教えてあげた。初めて彼女が自分でレバーを押せた時、僕は我がことのようにとても喜んだ。

そんなふうに3人での生活がはじまり、なんだかんだと幸せな時が過ぎていった。

そして3年目の春、最高の幸せが訪れた。
僕らに子供が出来たのだ!!

彼女「毛並みはママ似かなあ。ねえ、とうとうパパになったのね、おめでとう、ミケ。」
僕「にゃあ!」

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