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~神話・民話の世界からコンニチハ~ 15 フンババ退治 ギルガメシュさまとエンキドゥさま

おはようございます。今日もいい天気になりそうです。

第十五回は! 前回で男どうしの熱い友情で結ばれたギルガメシュさまとエンキドゥさまが、森の番人である怪物フンババ退治をしに行くお話&インタビューです。

今回のお話

ギルガメシュさまの大親友となり、都市ウルクに迎え入れられたエンキドゥさまでしたが、町での安穏とした暮らしは彼にとって面白いものではなく、すぐに飽きてしまいました。

そこでギルガメシュさまは、遠方レバノンにある杉の森を守る怪物、フンババ退治をしようと思い付きました。

「レバノンの杉の森を切り開き、太陽神シャマシュ(真実と正義を司る神とも)の嫌う悪、フンババを国から追い払い、永遠に我らの名を刻もう」

そうギルガメシュさまが誘いますと、エンキドゥさまは目から涙を流してこの遠征に反対しました。エンキドゥさまは、悪とはいえ、大いなる風、嵐などを司る神エンリルさまがレバノンの森の番人として定めたフンババの持つ天命を、自分たちの手で断ってしまうことへの罪悪感と、フンババは人の恐れそのものであることを言いました。

ギルガメシュさまはエンキドゥさまの涙に戸惑いました。土から出来た彼にも、人らしい感情があることに驚き、焦りましたが、大きくため息をついてこう言いました。

「エンキドゥよ、お前は俺の後ろについて、前へ進めと励ましてくれればそれで良い」

そうして、遠征へ二人で行くことを決めました。

ギルガメシュさまの母、女神ニンスンさまは息子の未来の苦しみを見通したのか

「シャマシュよ、なぜあなたは私の息子の気持ちを動かすのか」

と不満を言いましたが、ついにはギルガメシュさまの遠征を認め、エンキドゥさまを養子に取って義兄弟とし、ウルクの長老たちとともに神々のご意思を伺い、遠征に対するシャマシュさまの許しを得て、女祭事たちとともに丁寧に神々からの守護を願う祈祷(きとう)を行って二人を送りだしました。

二人は普通のひとが45日はかかる距離(約1500km)を3日で歩き、レバノンの杉の森に到着しました。それまでに、不思議な夢を何度か見ていたギルガメシュさまは、そのことをエンキドゥさまに明かしますと、それはシャマシュさまの加護があるための吉兆だ、と言うのでそれを信じました。本当は、エンキドゥさまも夢を見ていて、それはエンキドゥさまにとってとても不吉なことを予測する夢であったのですが、ギルガメシュさまにはあえて吉兆、と告げたのです。

森の入り口で、フンババの手下を倒したふたりは、森に入って杉の木の見事さに見とれていますと、ついに怪物フンババが現れました。その容貌(ようぼう)は恐ろしく、剣呑(けんのん)な口は竜のようであり、顔はしかめっ面の獅子のようでした。その咆哮(ほうこう)は洪水であり、その口は火を意味し、吐息はまさに死そのものでありました。杉の森の守り手であるフンババは、その聖域に踏み入ったギルガメシュさまとエンキドゥさまにここへなぜ来たのかを二人で一度考えるように言いました。そしてエンキドゥさまに、

「ギルガメシュを我が前まで連れて来たのは何故か? お前は、よそ者である彼と共に立つというのか。わしはお前たちの喉と項を噛み砕き、毎日ハゲタカやワシにそれを喰わせよう!」

と言いました。

その言葉にギルガメシュさまは怖気づいてしまいましたが、エンキドゥさまが「後ろ向きになるな」と応援したので、気持ちを奮い立たせました。

そして、森番のフンババとふたりとの戦いが始まりました。

両者の戦いで、大地と木々が割けるなか、太陽神シャマシュさまの加護が現れ、いくつもの風がフンババの足を煽(あお)り、その動きを止めました。

ギルガメシュさまがとうとう自分の武器でフンババを捕らえますと、森番は、

「お前の望むままに木材を与えよう」と言い、降参しました。

エンキドゥさまが「フンババの言うことに耳を貸すな」とギルガメシュさまに言うので、フンババは「そのギルガメシュに言って、我が命を救ってくれ」と嘆願しましたが、エンキドゥさまは「友よ、フンババを捕らえよ。絞り上げよ。撃ち殺せ。エンリルが怒らぬ内に、神々が我々への憤怒で満ちる前に」と態度を変えることはなく、勝ち目がないと悟ったフンババは「2人を老齢まで生かしてはならない。エンキドゥはギルガメシュ以上に、高齢を得てはならない」と呪いの言葉を告げたあと、ふたりに殺され、その首を落とされました。森の番人が命を落としますと、森には静けさが訪れました。

戦いに勝利したギルガメシュさまとエンキドゥさまは、森の杉の大木を切って船を作り、杉の木とフンババの首を持ってウルクの都に凱旋しました。

フンババの首は、彼を森の番人に定めた大いなる神、エンリルさまへの元へと届きました。エンリルさまは、ギルガメシュさまとエンキドゥさまがフンババを殺したことに激怒しました。二人に復讐するということはありませんでしたが、

「本当ならば、フンババは今だってお前たちの食べるパンを食べているはずだったのだ。お前たちの飲んでいる水を飲んでいるはずだったのだ。本当なら彼は讃えられているはずだったのだ」と非難しました。

その後、エンリルさまはフンババを手厚く供養しました。


(^^♪ 張りつめたぁ、弓のぉ ~♪

いや、元祖「もののけ姫」(姫成分がまったく無いけど)ですね! 自然と人間との戦いが、物語によく現れているように思います。そして今この時としては、認められにくい森林伐採による完ペキな環境破壊……。


それでは! ギルガメシュさまとエンキドゥさま、おふたりのインタビューと参りましょう!

すー: ギルガメシュさま、エンキドゥさま、ふたたびよろしくお願いいたします。……エンキドゥさまの暇つぶしにフンババ退治って、お話の中でエンリルさまもかなり怒っておられますけど、ぶっちゃけひどいアイディアじゃないですか?? フンババがちょっと可哀想になります。

ギルガメシュ: 英雄とは、悪を倒し、勇名を上げるものだ! 死闘で勝ったのは俺とエンキドゥなのだから、正義は俺たちふたりにある!

すー: そのせいで、なんか良からぬ呪いをエンキドゥさまが受けてますけど(ボソリ) エンキドゥさまも、最初は反対したものの、命乞いを許そうとするギルガメシュさまを止めてフンババを殺すことを決めるくだり、そしてフンババの言葉をすこし考えると、野人であったときにはフンババとエンキドゥさまの面識があったようにも見受けられますね。古代の都市国家のひとびとと、まだ小さな部族として自然とともにあるひとびととの戦いの歴史から、敵味方が入り乱れていた様子をこの物語に込めたようにも感じます。

エンキドゥ: そうだな……オレが野人として誕生したことが、野蛮の象徴であり、フンババが自然の畏(おそ)れそのもの。仲間としたり、退治して平定する、という物語は、王を戴(いただ)いた国が大きくなっていくことの例えかも、な。

すー: 日本神話の英雄譚である、スサノオノミコトさまのヤマタノオロチ退治は、相手が山脈と川のサイズの巨大な化け物ということになっていますけど、このギルガメシュさまとエンキドゥさまのフンババ退治は、より敵と味方とのやりとりや、心のありさまが記録されているようで。太陽神シャマシュさまはフンババ退治を許しますけど、大いなる風、嵐などの神エンリルさまは激怒するというあたり、神さまがたも一致していなくて。北欧神話のように神々の戦いとまでは行きませんが、敵と味方、という戦時中は分かりやすい立場が、その後戦いが終わるとどちらかの滅亡であり、英雄とは人殺しである、というメッセージがフンババを悼(いた)んでお二人を非難するエンリルさまのお言葉に強く含まれているようにも感じます。

ギルガメシュ: そうだな。いつ寝首(ねくび)をかかれるか分からない者が、王たる存在でもあるからな! 後ろを預けていられるエンキドゥがいてくれることが、どれほど頼りになることか!

エンキドゥ: オレをそれほど頼りにしてくれる……この友情は永遠だぞ、ギルガメシュ!

ギルガメシュ: おう、エンキドゥよ!

すー: 敵との死闘をともにして、ますます友情が深まったわけですね。でも、今回エンキドゥさまが受けてしまった言葉の呪いは……。次回に続きます! ギルガメシュさま、エンキドゥさま、どうもありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

次回予告

十六回は、ウルクに凱旋して戻ったおふたりのうち、ギルガメシュさまに惚れてしまった女神イシュタルさまと、その求愛を断ったために起こる出来事のエピソードをご紹介&インタビューを予定しています。お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからさとやまくらし@note
さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。






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