成就しなかった願いに惹かれるのかもしれない #あえていまセカチュー
「世界でいちばん好きだった人」を見送るなら冬がいい。
あなたが煙となって空へ昇っていくさまを見届けよう。
勝手に見送るな、季節まで決まっているのかと、まだ見ぬ「世界でいちばん好きだった人」に怒られそうだ。
セカチューと呼ばれ大ヒットした『世界の中心で、愛をさけぶ』。
初版第一刷発行は2001年と書かれている。
2001年!
もう20年以上前の作品なのか。
大ヒットしたのは知っているけれど、実は読むのは初めて。実際どのくらいヒットしたのだろう。
発売当初から売れていたわけではないらしい。話題となったあとに漫画化、映画化、テレビドラマ化、ラジオドラマ化、舞台化されたと。
いやほんと大ヒットじゃないか!
これほどまでに広がった作品を読まなかったのは何故だろう。単に流行りに乗りたくなかったのかも。
今も昔も、泣かせにかかる(と感じた)作品を敬遠していたから。全米が泣いたり日本中が涙したりすると涙腺が詰まる仕様です。
朧げに覚えているのは「助けてください!」と叫ぶ森山未來。流れる音楽といえば平井堅の『瞳をとじて』だけれど、原作を読みながら脳裏に浮かんだのは山崎まさよしの『One more time,One more chance』だった。
この曲は新海誠監督の『秒速5センチメートル』の第3話で使われた。物語に登場する貴樹と明里も一人っ子だったな。
互いに思い合っていたけれど離ればなれになる2人。その後、再会できたが添い遂げることはできなかった。
❄︎ ❄︎ ❄︎
アキの葬儀は12月末に執り行われた。霰が降るほど寒い日で、火葬場へ向かう間に霙へと変わっていった。
世界でいちばん好きだった人を焼いた煙を眺める朔太郎。そんな彼を思い浮かべながら思い出したのは『アンナチュラル』の中堂先生だった。
共通しているのは冬のみなのに、雪の舞うなか空を見上げ佇む彼を思い出していた。彼もまた、恋人の死に目に会えなかった。
「あの世って、この世の都合で作り出されたもののような気がしない?」
そうアキは言った。
その通りだろう。あの世は、この世の人が作り出した。
あの世だけではなく、およそ「死」にまつわるあれこれは、生きている人がこれからも生きていくためのもの。
地獄も?そう、地獄も。あんなところへ行くのはごめんだと、我が振りを直すかもしれない。それでも魂の行き着く先があるのなら、死ぬのも少しは怖くない、かどうかはわからないけれど。
そう言えばアキが亡くなったあと、「彼女は立派に闘った」とか「病と闘いながら懸命に生きた」とか、その類の言葉を誰も言わなかった。そういうセリフが出てくる話じゃないと言われれば、まぁそうかもしれない。
ただ『ミステリという勿れ』の整くんはずっと疑問に思っていた。
闘うぞと思う気持ちも大事なのかもしれない。
それでもこの世界では、アキの周りには、鞭打つ人はいなかった。
❄︎ ❄︎ ❄︎
今回はじめて読んだけれど、悔やまれるのは、発売当時に読んでも今のような心境になったのか確かめることができないこと。同じように思ったところもあれば、違った見方をしたところもあっただろう。
それでもあちこち寄り道しながら道草食いながら書けたので良しとする!
ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございます。
#あえていまセカチュー #読書感想文 #世界の中心で、愛をさけぶ
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