未来のことを上手く考えられるようになるためには?
シナリオプランニングをやっていると、
「シナリオプランニングを身につければ、未来のことをうまく考えられるようになるんですよね?」
という質問を受けることがあります。
そうではない、ということを(もちろん理由も添えて)回答しても、そんな答えをもらった方はどうも釈然としない感じをしています。
スピーチを上達させるためには?
そういう疑問を持つ人たちに、どう説明をしたら良いのかを頭の片隅におき続けて、日々、いろいろと考えていたとき、たまたまYouTubeでConor Neillという人の動画を見つけました。
動画のタイトルはImprove Your Speaking。
スペインのビジネススクールであるIESEにて同氏が担当しているPersuasive Communicationsという授業のダイジェストです。
今後、10日間で自分のスピーチを上達させるために、もっとも重要なことはという問いから動画が始まっています。
彼が学生に指示していることは、今後10日間、パソコンに付いているウェブカメラを使って、毎日3分間、何かしらのテーマについて話したものを録画するということ。
そして、10日目には "A Value You Would Share with a Child as the Basis of A Good Life" というテーマで話しをするように伝えています。自分が考える素晴らしい人生を送るための元となる価値を、子どもに伝えると仮定して3分で話すというもの。
その説明をしたあと、なぜ、そんなやり方をするのかという彼の解説がユニークでした。
No amount of watching YouTube videos of Bill Clinton is going to turn you into Bill Clinton. No amount of reading is going to turn you into a writer. Only by speaking that you turn into a speaker.
(試訳:ビル・クリントンのYouTubeをいくら見ても、ビル・クリントンになれるわけじゃない。本をいくら読んでも、作家になれるわけじゃない。実際に話してみることでしか、(良い)スピーカーにはなれないんだ。)
手段・手法よりもトレーニングを
この動画の最初の方では、マルコム・グラッドウェルの本を紹介して、おなじみの「一万時間の法則」を紹介しています。
私たちは、ついつい「自分が目指すところにたどり着くために、もっと楽な道があるんじゃないか?」と考えて、トレーニングをすることを脇に追いやり、目的を達成するための手段・手法に目を向けてしまうことがあります。
そうやって、身体を鍛えるトレーニングするのではなく、ダイエット本を読み漁り、英語力を伸ばすトレーニングをするのではなく、英語学習本を読み漁ったりするのです。
このことは冒頭で紹介した「未来のことをうまく考えられるようになりたい」人にも当てはまります。
たしかにシナリオプランニングはすぐれた手法です。そう思うからこそ、あの手この手で、この手法を広めるための取り組みをしています。
でも、「未来のことをうまく考えられるようになりたい」人にとって、シナリオプランニングを知ることはゴールではなく、スタートです。
肝心なことは、シナリオプランニングという手法(あるいは、それ以外の未来を考えるための手法)を知った上で、未来のことを考え続けること。
Conor Neill氏が伝えるスピーチ上達法と同じように、伸ばしたいと思うもの自体に取り組む時間をかけなければ、そのスキルは上がっていきません。
シナリオプランニングや「未来を考えること」に限らず、自分が伸ばしたいと思うものに取り組むときは、手段や手法ではなく、そのもののトレーニングに時間を使うようにしましょう。
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Photo by VanveenJFon Unsplash
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