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組織でシナリオプランニングのプロジェクトに取り組んだあと、参加者から出てくる感想として多いのが「社長が危機感を持て、と言っていた理由がよくわかった」というもの。

それもそのはず、現場を中心に動いている社員と社長とでは、自社を見る視座が違う。

もちろん、現場にいる自分としては、何よりもその範囲での成果を上げなければいけないので、いくら社長が持っているような長期的な視座がすばらしいからといって、自分の視座を捨て去るわけにもいかない。

そのように「自分の視座(短期)」か「社長の視座(長期)」かの二者択一ではなく、「いまの自分の視座に社長の視座を加えると、何が変わるか?」と考えてみると、日々の意思決定や結果のとらえ方が変わってくるだろう。

同じようなことは、個人の意思決定にも当てはまる。

意思決定やそれに基づいた行動を先延ばしせずに、合理的に行うことができれば、私たちがあげられる成果は大きく変わるだろう。

しかし、そう簡単にいかないのは、私たちがそんなに合理的ではないからだ。

なかなか意思決定ができないという状況を考えてみると、多くの場合、

・長い目で見るとポジティブなんだけど、今は大変
・長い目で見るとネガティブなんだけど、今は楽

というどちらかに収まる場合が多い。

意思決定の影響を受けるのが、自分以外の人もからんでくる場合は特にこのどちらかに当てはまって悩む場合が多い。

例えば、後者の例で言えば「今のうちに、こうしておいた方が良いんだけど、そうするとAさんに迷惑をかけることになるかもしれない…」というような状況だ。

そうして考えあぐねた上、Aさんに気を遣ってしまい、ずるずると明確な意思決定をせずに進んでしまう。

「こういう時は行動経済学の本を読むと良いらしい」と思って、新しい本を手に取る前に、ここで、冒頭のシナリオプランニングのプロジェクトの例のように、目の前の意思決定をする際に長期的な視座を加えてみるのも良いだろう。

そうすると、短期的にはAさんに気を遣えば済むものの、あとあとになって今の意思決定をしようとすると、結局Aさんと大ごとになるかもしれないということがわかってくるかもしれない。

シナリオプランニングは、普段なら考えないような長さの未来を考える上、未来の可能性を複数描いて、今の意思決定を見直す。結局これは何をやっているかというと、今のことを考えるための視座を増やすことだ。

その本質を理解すれば、シナリオプランニングの考え方を(手法そのものではないにせよ)個人に応用できることもわかるだろう。

わざわざシナリオプランニングの手法に完全に則らなくても、今のことを考えるための視座を増やすという観点から、未来のことを考えてみると良い。

そうすることで、ついつい先延ばししたくなる意思決定も、違った見方をすることができるようになるだろう。

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Photo by Kyle Popineau on Unsplash

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