これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(1)


なるべくローコストで注文住宅を建てたい。それは家を持ちたい人にとって、自然な願いです。
でもそれは決して簡単なことではありません。

いくらお金をかけても良いから、立派な家を建ててくれ。という願いを叶えるのは簡単ですが、しっかりとした家をなるべく安く建てるというのは並大抵のことではないからです。

さらに建て売りならまだしも、自分の希望を反映させた注文住宅ならばなおさら。

また、アフターコロナによって家づくりに対する考え方も大きく変わってきました。
そのため、ローコストで注文住宅を建てようと思うと、超えなければならないハードルがいくつも存在するのです。

では、どうしたらローコストでも満足のいく注文住宅を建てられるのか?

その方法を考える前に、これまでの家づくりのメリット・デメリットを見ていきましょう。
現状をしっかり把握することが、最善の方法を探るための近道だからです。

注文住宅を建てる時には、次の3つの方法が一般的です。

  1. ハウスメーカー、パワービルダーで建てる

  2. 大工さんのいるような工務店で建てる

  3. 建築家・設計事務所に設計を依頼し、工務店で建てる

コスト的には①の「ハウスメーカー、パワービルダーで建てる」のが一番安く、②、③といくほどコストは高くなる傾向があります。

逆に、自分の思い通りに建てられるという自由度という観点から言うと、③の「建築家・設計事務所で設計からはじめて工務店で建てる」が一番自由度が高く、②、①と自由度は下がっていきます。

そのため、予算や自分の家づくりの考え方をもとに、どの方法が最善かを見極めなければなりません。

まず大前提として覚えていただきたいのが、ローコストでも建つ家のクオリティは決して悪くはない、ということです。

建築技術の向上や企業努力によって、今ではコストをそれほどかけなくても、ある程度しっかりとした家を建てることができるようになりました。回転寿司やファミレスの提供する料理が、安くても美味しいのと同じ理屈です。

ですから、家づくりに関してそれほどこだわりがないのなら、上の3つのどの方法で建てても問題はありません。それこそ、コストだけで決めるという考え方もありでしょう。

しかし、自分らしい家づくりを、かつローコストでと考えているのであれば、それぞれの方法のメリットとデメリットをしっかりと抑えておかなければなりません。

それが分かれば、自ずと自分にあった注文住宅の建て方も見えてくるからです。

では、それぞれの建て方のメリット・デメリットを順番に調べていきましょう。

①ハウスメーカー、パワービルダーで注文住宅を建てるメリット・デメリット
<メリット>
● 大量仕入れ・大量生産による大幅なコストカット
<デメリット>
● 規格通りに建てなければならないため、仕様の変更が難しい

パワービルダーと呼ばれる飯田産業や、タマホームのようなハウスメーカーで注文住宅を建てる最大のメリットは、やはりそのコスパの良さでしょう。
回転寿司チェーンがマグロを一本まるごと買い付けることによってお寿司を安く提供するように、こうしたメーカーでは材料を大量購入してコストを下げる努力をしています。また回転寿司やフェミレスチェーンがオペレーションを画一化しているのと同じ様に、家の規格をある程度統一化することによって、全体のコストを下げているわけです。
当然、ハウスメーカーやパワービルダーで注文住宅を立てる場合、コストと引き換えに自由度が犠牲となります。統一化することによってコストを下げるわけですから、当然ですよね。
そのため、ある程度見栄えと性能がしっかりしているのであれば構わない、という人にはとても良い選択となりますが、家づくりに自分のこだわりを反映させたいという人にはあまりおすすめできません。

②大工さんのいるような工務店で注文住宅を建てるメリット・デメリット
<メリット>
● 広告費や人件費などの間接費が不要な分、ローコストで建てられる
<デメリット>
● 職人さんとのコミュニケーションギャップが原因で、工期の延長や追加工事などが発生することも

工務店はしっかりとした技術をもつ大工さんを抱えていることが多く、安心感をもって工事を頼めます。大手メーカーのような広告費や職人さん以外の人件費というコストがかからない分、ローコストで家を建てられる可能性があります。
一方で、職人さんと依頼者との間でコミュニケーションギャップが生じることも多い。依頼者が建築の素人の場合(多くの場合はそうなのですが)、なるべくコストを抑えたいという依頼者と、しっかりとした家を建てたいという大工さんとの間で話が噛み合わず、結果的に工期の延長や追加工事が必要になることも少なくないのです。営業マンなどが間に入ってくれれば良いのですが、工務店ではあまり人材も豊富ではありません。大工さん以外の人件費を削っているのが、結果的に裏目に出ることもあるわけです。
そうした大工さんとのコミュニケーションギャップを克服し、ローコストな家づくりを工務店で実現させるためには、依頼者が建築についてそれなりの理解がある方が望ましいでしょう。

③建築家・設計事務所に設計を依頼し、工務店で注文住宅を建てるメリット・デメリット
<メリット>
● 間取りも含めて自由設計のため、自分の希望通りの家づくりが実現できる可能性が高い
<デメリット>
● 自由設計のためローコストではない。デザインや施工で工務店と揉めることもある

建築家や設計事務所に図面を書いてもらうので、当然ながら自分の希望を思う存分盛り込むことができます。ただしその分、やはりコストはかかってしまいます。また設計事務所はデザインを重視した設計を手がける傾向があるため、見栄えは良くても使いにくい家になったり、修正のために余分なコストが発生するということもありえます。
家づくりにそれほどこだわりがなく、基本的な性能がしっかりしているなら十分という人なら、ハウスメーカーやパワービルダーに頼むのが一番良いでしょう。コストには少し目をつぶってでも家づくりにはこだわりたい!という人なら、設計事務所に依頼するのが良いでしょうし、建築のことをしっかり理解している人なら、工務店としっかりコミュニケーションを取りつつ、ローコストでも納得のいく家づくりが可能になるに違いありません。

このように、それぞれの注文住宅の建て方のメリットとデメリットをしっかり見極めれば、自分の家づくりにはどんな建て方が適しているかがより良く分かるでしょう。
それに加え、それぞれの家づくりの方法でローコストを可能にする「理由」についても理解しておきたいところです。


次回はローコストを可能にする「理由」についてお話しします。



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