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『中国嫁日記』既刊分一気読み感想(後編)

昨日の記事に引き続き、『中国嫁日記』の感想です。今日は五〜八巻です。

五巻

桂林旅行、そして会社での金銭トラブル編。

〇一四ページ:外よりも部屋のほうが寒い広東省東莞

これも超共感しました。広東省の部屋には基本的に暖房が付いていないうえ、壁材や床が冷えやすいためか、外よりも家の方が寒いという事態が頻繁に起こります。

このエピソードは「部屋に帰ってきたら寒かった」という形で描かれていますが、逆に家の中の感覚で服を決めて出かけ、外に出たら暑すぎて結局上着をカバンに入れっぱなしになるということもしばしば。

〇五五ページ:嫁日記以外の仕事は儲からないからやめましょう、と合理的な月さん

月さんは注釈で「中国流ナイデス! 私言う現実デス!」と仰っていますが、僕個人の観点から見ても中国の人は儲からないことや成果の出ないことに対しての見切りが早い印象があります(日本人に比して、です)。

うちでも仕事や勉強に対して、これを続けるか、あれをやめるかという話でしょっちゅう言い争いになります。まあそれが楽しかったりするんですけどね。

一〇四ページ:会社での金銭トラブルに遭遇した際に、ショックを受けつつも井上さんを心配させまいと気丈に振る舞う月さん

僕のnoteでは繰り返し書いていますが、問題が起きた時の気持ちの切り替えや、問題を問題として受け入れて解決策を探そうとする際の肝の座り方に関しては、中国人の方が圧倒的です。この点は日本人が大いに見習うべき点だと思っています。

しかし、それをさっ引いても月さんの井上さんを気遣う気持ちはすごいなあ。

六巻

書き下ろし漫画が涙なしには読めない。

〇四〇ページ:圧力鍋の爆発を心配する月さん

これもあるあるなのでしょうか、うちでも便利だからと僕が圧力鍋を買おうとした時、「中国の圧力鍋は爆発するから、買うなら日本製のちゃんとしたやつにして」と言われました。

プラスチック片入りの粉ミルクのように、何かそういうイメージが醸成されるような大きな事件があったのかな? ちょっと調べただけではわかりませんでしたが、とかく中国の人は買い物に対して慎重で、特に国内で作られるものを信用していないような空気があります。自動車とかね。

〇五八ページ:ひどい生理痛の原因はカニを食べたからだと断定する月さん

全ての食べ物に陰陽の区別、「上火」「下火」などと言ったりもしますが、中国では体温を上げる食べ物と下げる食べ物が分かれており、いわゆる生理の時には体温を下げるものは食べてはいけないとされています。

白湯を何よりも好んだりと基本的に体温が下がることを嫌う中国の皆さんですが、「下火」の食べ物は体の熱が上がっているときに好んで食べられたりします。身近なところだとナスとかキュウリとか水分の多い食べ物がそれにあたるイメージ。しかしカニが「隠」の食べ物だとは知らなかった。

〇八四ページ:湿気で壁がボロボロになる東莞のお家

これもある。というか今も玄関の壁がボロボロ。大切なのは部屋を借りる際に、少しでも壁に崩れや破損が見られたら大家とともに確認し、可能なら写真を取っておくこと。そうしなければ勝手に崩れた壁に難癖をつけられて、契約した時の押金(保証金みたいなもの)が返ってこなかったりするのです(しました)。

七巻

奥様の故郷に関するエピソードが強烈。

〇〇六ページ:部屋の停電を直そうと業者を呼ぶと、「このスイッチを押すとこの階が全部停電する」と言われる

これも経験したことがあります。自分でトイレのLED電球を換えようと頑張っていたら、突然「ブッ」と音がして停電し、あちゃーやっちゃったなあと思っていたらしばらくして同じフロアの家から次々と大騒ぎする声が聞こえ始め、どうやらフロア全体が停電しているらしいことに気づき、大変気まずい思いをしました。

電気関係は詳しくないのですが、何でこんなことが起こるんだろう?

〇四八ページ:日中のトイレの違い談義

トイレの真横にシャワーがある違和感。いつまでも在中日本人を悩ませるトイレ問題です。最近は仕切りがあったり、完全に別になっているところも増えてきているようですが、まだまだ完全に一緒のところが優勢です。

何年か前に引っ越しを検討したときに、トイレとシャワーが完全に一体(仕切り版などもなし)、しかも洋式ではなく中国式(便座がなく穴が掘ってある形式)なこと以外は完璧なのになあ、という物件に出くわしたことがあります。結局僕の強硬な反対によってその家に引っ越すことはなかったのですが、嫁は「別にそれぐらいいいじゃない」というスタンスでした。こっちにとっちゃよくないんだよ。

〇八二ページ:毛沢東と鄧小平について熱く語る月さんのお父さん

センシティブな話題を避けがちなイメージのある中国人ですが、家族や気心の知れた仲間同士であれば政治談義が始まることはよくあります。

僕も嫁の実家に帰った時、地方話で話しながらヒートアップする親戚衆を見て「何をあんなに盛り上がっているの?」と嫁に聞いてみたところ、ゴリゴリの体制批判だと聞いて戦慄した思い出があります。俺ここにいていいんだろうかという気持ちでした。

八巻(ママたいへん編)

ついにバオバオさん誕生。

〇五五ページ:へその緒の扱いにカルチャーショック。月さんはバオバオさんが生まれた時のへその緒を、マンションの門の上に捨てたという。いわく高いところに捨てると縁起がいいらしい

これは読んだ時に衝撃で、嫁に「これほんとなの?」と聞いてみたところ、嫁はそもそもそんな習慣すら知りませんでした。へその緒の重みの違い。そして日本では専用の箱に入れて大切に保管すると言うと、たいそう気味悪がっておりました。

〇五八ページ:墓の隣に家があることにショックを受ける月さんのお母さん

これもうちの嫁が日本に来たとき驚いてたなあ。窓からお墓が見えるなんて考えられないとのこと。

そういえば嫁実家に行ったときに連れて行かれた先祖の墓参りでは、片道1時間半くらいのかなり分け入った山奥にお墓がありました。中国人の死生観のようなものは、特に「死」に対する忌避の考え方において、日本とかなり違っているような気がします。

〇九〇ページ:子供が生まれるから絶対に家が買うことが必要だ、と主張する月さん。理由は「いつ追い出される分からナイデスヨ!」

不動産価格が暴騰する中国において、それでもみんなが自分の家を求めて止まない理由の一つがこれです。自分の所有物でない以上どれだけ借主として品行方正にしていても、ある日大家の都合で「親戚を住ませることにしたから来週出ていってくれ」などとさらりと言われてしまう、という現実があります。たしかにこれでは、子供を育てるにあたっては家を持たないことがリスクだと考えても無理はありまあせん。

他にも戸籍や地域への住宅積立金、子供の就学条件などが絡むため、単に「面子」の問題と言い切れないのが中国の持ち家問題の難しいところです。

最後に、全体の感想

全編にわたって全俺が共感の嵐で、ものすごい勢いで8巻分読み切ってしまいました。「あーこれうちにもあるなぁ」とか「これ、なんか懐かしいなあ」とあるあるを楽しむ一方で、妊娠や出産、子育てといったライフイベントはまだうちの夫婦には訪れておらず、なんだか過去と未来を一気に見せてもらったような気分になりました。

お二人のように素敵な夫婦になれるかどうかはわかりませんが、うちの夫婦もこれからもいろんなことを経験しながら、少しずつ前に進んでいけば、未来は明るいのではないかと思わせてくれるような内容でした。

これからも夫婦で頑張っていきます。

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