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ひとつのことをやり続けるべきか、そうせざるべきか。中国でのことを振り返って考える

ゆる言語学ラジオでおなじみ、堀元見さんの「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」という本を読みました。

表紙はゴリゴリのビジネス書や自己啓発本のように装っておきながら、その実態はビジネス本あるある(いわゆる「クリシェ」)を茶化してみせたり、いろんな本の教えを組み合わせて悪ふざけをしてみたり(怒りを感じたら「1〜2時間散歩したあと、風呂場で放送禁止用語を叫び、その叫んだ放送禁止用語をメモに記録する」といいらしい)、箕輪厚介とホリエモンをこれでもかとイジり倒すなど、非常に悪質な悪ふざけ(褒め言葉)満載のユーモア本です。

著者ご本人いわく「この本は現代アート」「まっとうなビジネス書と間違って買い、怒り出す人がいるところまでを含めて作品」ということで、その徹底した諧謔的な姿勢にニタニタしてしまいます。世の中を斜めに見がちで、かつシャレのわかる人はぜひ一読をおすすめします。

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さて、この本の主旨とは若干ズレるのですが、僕がこの本を読んで考えたことのひとつに「ひとつのことをやり続けるべきか、やり続けるべきではないか」ということがあります。

「ビジネス書どうしで相反する教えの矛盾に思い悩む」ということも、この本のひとつのテーマです。その中でも真っ向から対立するものとして、「ひとつのことをやり続けるべき」「ひとつのことをやり続けるべきではない」ということをそれぞれ説いているビジネス書があり、いったいどっちが正解なんだよという気分にさせられます。

今日はこのことを、僕の住む中国に絡めて考えてみます。

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中国では、ビジネスにしても何にしても、なによりもスピード感が重視されます。人々はあらゆるところに興味を持ち、いろいろな商売に手を出します。中国は「ひとつのことをやり続けるべきではない」という価値観のほうが支配的な土地であると言っていいでしょう。価値やベネフィットの生み出し方として、「とにかくいろんなことを試してみよう」ということが是とされやすいのが中国です。

いっぽうで、中国の人が「やり続ける」ことにまったく価値を見出していない、というわけではありません。たとえば町の食堂のキャッチコピーや、ECサイトの店舗紹介などには「〇年老店」という表現がよくみられます。これは「この道〇年の老舗」というような意味で、同じことを続けていることをアピールすることによって、「うちは安定しているよいお店ですよ」というメッセージを出しているというわけです。

また、数年前に虚偽の「日本ブランド」を掲げて問題になったとある鉄鍋の販売業者のECページには、鍋の匠を名乗る「伊藤慧太」氏の写真とともに、「一生にひとつだけのことをする」(一生只做一件事)という文言が掲げられています。たとえが悪すぎるかもしれませんが、「ひとつのことを続ける」ことに価値を見出そうとする考え方は、中国にも多少なりともあるということです。

画像出展元:文春オンライン「ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由」より

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そんな中国で、僕自身がどうしてきたかといいますと。

個人的には中国っぽい「ひとつのことをやり続けない」という発想で物事を進めるのは、自分にはあまり向いてないのかも……という気持ちになることの方が多かったです。

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