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無人運転タクシーと、中国から失われつつあるものの話

2日連続でタクシーの話題です。またタクシーかよと怒られそうですが、今日は自分の体験談ではなく中国で話題になっているニュースから。

そのニュースとはこちら。

1000台規模の本格的な「無人タクシー」の運用が湖北省武漢市で始まった。形式上は「実験」だが、対象地域は同市の7割に達し、利用回数は150万回を超えた。タクシー運転手からは収入減を訴える声も出始めており、自動運転モビリティーサービスは事実上、実用化の時代に入った。

無人タクシーが本格的に運用を始めたという話です。

すでに多くのお客さんを獲得し、かなり成功しているようです。おそらくは、そのうち全国的に広がっていくのではないでしょうか。まだ僕の住む街には来ていませんが、もしサービスが始まったらすぐに体験したいと思っています。

いっぽうで、問題やそれに関する議論も出ています。その争点は大きく2つあります。

まず、自動運転車が交通の妨げになったり、事故を起こす場合があるということ。

やはり完全無人ということで、その安全性には疑問が出ています。法整備なども含めて、安全をどう確保するのか、事故が起きた場合の責任問題はどうなるのかなどは、今後も議論されていくでしょう。

ただこれは、ある程度は時間の問題で解決するのではないかと考えられます。サービス開始初期は多少の問題が出ることは避けられないし、人々のほうも自動運転車をどう扱っていいかわからない部分があるでしょう。みんなが慣れてくれば、いまあるような問題はある程度収束していくのではないでしょうか。

ただ、もう一つの問題のほうはそれより少し厄介です。というのも、こうしたサービスの普及自体が人々の仕事、つまり食い扶持を奪ってしまうのではないかという懸念が出ています。

今回始まった自動運転サービスは、タクシーやライドシェアに比べて劇的に安いことも消費者に受け入れられている理由のひとつのようです。人件費がかからないうえに、無人運転はタクシー料金の規制外にあるのが低価格の理由ですが、ともあれこれでは普通のタクシー運転手は勝負になりません。

いまはまだ人と自動運転のサービス内容に差があったとしても、それが時間の問題で埋まっていくのだとしたら、人間の運転手は早晩、ほとんど自動運転に取って代わられるということになります。

それはさすがに困るということで運転手たちから声が上がり、それが社会的な議論となっています。特に中国においては、運転手は手軽にできるギグワークとして雇用の受け皿になっている側面もあるので、その影響力が大きなものとなり、広範な議論を呼んでいるようです。

まさに近年のホットな話題である「AIに仕事を奪われる」や「機械 vs. 人間」の話という感じがしますが、僕はそうした普遍的な話題としての性質のほかに、こういう議論が出ること自体が、中国のある種の変化を反映しているのではないかと思っています。

その変化とは、

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