中国・石家庄市でPCR検査取り消し、からの「やっぱり一斉検査します」に思うこと
先日のマガジンで、中国のコロナ対策が緩和されるような発表があったけど、それってどうなのかな、ということを書きました。
もとになった政府発表はこちら。ここでは進めるべきとされた新しい防疫措置が20項目にまとめられていたことから、この発表は中華圏で「二十条」と呼ばれ、ニュースなどで扱われるようになりました。
今日はこの「二十条」をめぐって、中国のある地域で起きていることについて書きます。
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「二十条」が発表された直後の13日、河北省の石家庄(せっかそう)市では、防疫措置を大幅に調整する旨の通知が出ました。
具体的な内容としては住民全員の一斉PCR検査を課すことをやめ、無料の検査場を順次閉鎖、さらに公共交通機関でもPCR検査の陰性証明のチェックを廃止する、というものでした。PCR検査については、必要な人(市外へ出る必要がある人)だけが有償で受ける、ということになりました。
つまりは、PCR検査にかかる事項の大幅な緩和です。このほかにも「二十条」に合わせて部分的な防疫措置の緩和を発表した自治体などはありましたが、そのなかでもラディカルというか、ずいぶん思い切った措置だということで話題になりました。
しかし新しいルールでの運用が始まるや否や、混乱が始まりました。
まず、現実にはPCR検査結果の提示が求められる場所がまだたくさんあるにも関わらず、検査場はどんどん閉められているもんだから、検査を受けられず身動きが取れなくなる人が続出しました。
また突然の緩和に人々のほうが動揺してしまい、萎縮する動きも見られました。特にこの状況で子どもを学校や幼稚園に行かせていいものかと憂慮する親(もしくは孫の面倒を見ている祖父母)が多く、子どもを登校させないという選択をとった家庭が相当数に登ったようです。ある幼稚園では、児童が一人しか登園しなかったというケースもあるといいます。
そして日が経つにつれ、一度は閉鎖したはずの検査場が結局はまた開いているとか、地域によって結局は住民の一斉検査が実施されているとかいう話が聞かれるようになりました。中国ではよくある、ルールとその運用実態がかけ離れてしまう現象が早くも起きたのです。
また折の悪いことに、ほぼ同時に同市では1日に数百人〜1,000人以上の感染者が確認されるようになりました。防疫措置の緩和とどれほどの因果関係があるのかはわかりませんが、どうしても「措置を緩めた途端に感染者が増えた」という風に見えてしまうことは事実でしょう。
そして結局、昨日20日の深夜には一部の地域で全住民にPCR検査をするという政府筋からの発表が出ました。その間わずか1週間、「一斉PCR検査の取りやめ」はどこかに吹き飛んでしまったようです。
いまこれを書いているのは21日の朝ですが、きっと今ごろ石家庄市ではてんやわんやになっているでしょう。度重なる方針変更に振り回される、現場の人々の苦労がしのばれます。お住まいの皆さんが混乱なく、無事にこの騒ぎを過ごせることを祈るしかありません。
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まさにグダグダというほかない、石家庄市における一連の動きですが、意外とこのことから見えてくるものが結構あるのではないかと思います。以下はそれについて。
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