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『中国嫁日記』既刊分一気読み感想(前編)

『中国嫁日記』。言わずと知れた、イラストレーター・漫画家の井上純一さんによる、中国は瀋陽出身の奥様・月さんとの結婚生活を描いた大ヒット漫画です。

同じく中国人の嫁を持つ日本人としてもちろん存在は知っており、読みたいと思っていたものの、今までなんとなく手が出ずにいました。しかしこの度、noteでこつこつ貯めてきたサポートや記事の売り上げを使って、現行の一〜八巻を一気にAmazonより電子版で思い切って購入しました。

以下、それぞれの巻ごとに印象に残ったエピソードについて書いていきたいと思います。なお、ページ数の表記はページ左下の漢数字表記に基づきます。

一巻

ジンサンさんと月サンの出会い編。カルチャーギャップのお話が多め。

〇一七ページ:怒ると言いたいことがたくさんあるけど、日本語でどう言っていいかわからず「私が日本語できないことに感謝するネ!!」と言い放つ月さん

これに関しては気持ちが超わかります。月さんの方の気持ちです。我が家の公用語は中国語なので、ケンカになったら僕は圧倒的不利です。とはいえ、中国語がそれなりに話せるようになってきたらケンカで険悪になる場面も増えてきたので、カタコトの時の方が幸せだったのではと思う時もあります。

〇二九ページ:中国語の先生の王さんが、日本人男性(のちの夫)と初デートの時に「ワリカン」という言葉を投げかけられ「大変な屈辱」を受けたエピソード

中国における「デート代は男性が出すべき」という規範意識は日本のそれよりも何倍も強く、下手をすれば年々厳しくなっているようにも見えます。中国の男性は大変ですねえ。

我ら夫婦はというと、基本的に僕が出すようにしていたけど、それほど厳しく求められるということもなかったような。でも確か数年前の僕の誕生日に「ご飯を奢ってあげる」と言われレストランに行った時に、会計時に僕に銀行カードを渡して「お金は出すけど、支払いはあなたがやるようにして」と言われたのはすごく覚えています。

〇五二ページ:「ガンポ」(願望)、「カンホ」(漢方)など、月さんの日本語いいまちがい

これ、うちの嫁もまったく同じです。前にもnoteに書いたけど、最後が母音になる音や伸ばし棒などはしょっちゅう抜けてしまいます。他の中国人の日本語話者もみんなこんな感じなので、やっぱりあるあるなんでしょうね。

二巻

東日本大震災時のエピソードが泣かせる。

〇五四ページ:一巻の印税が入る報告を両親にしなさい、と井上さんに迫る月さん

親、ないし家族の大切さは日本の比ではない中国。うちもしょっちゅう実家に連絡しろと言われます。自身も割とよく実家に電話しては、「孫はまだか」とプレッシャーをかけられている模様。つらい。

〇七三ページ:四川への家族旅行にて、本場の辛い鍋に衝撃を受けるご家族

店、場所によりけりですが、辛い火鍋は本当に・マジで・ヤバいくらい辛いです。舌を戦闘不能にする目的で作られたんじゃないかと思うほど、辛さに特化したつくりになっています。かくいう僕も四川には行ったことがなく、本場の火鍋はすげえんだろうなと想像します。

ちなみにうちの嫁の実家である湖南省は四川省と並んで辛いものを好む地域で、料理に親の仇のごとく大量の辣椒(トウガラシ)が入っていることが特徴です。一度嫁家族を日本に連れて行った時に、「日本の食べ物は辛くなくて味がしない」と言っていました。辛くないものは即ち食べ物ではない。怖い。

一三五ページ:書き下ろし漫画より、結婚三年目のプロポーズ

うちもプロポーズらしいプロポーズはしてないんだよなあ。もう三年目は過ぎちゃったけど、この方法はいつかパクらせてもらいたい。

三巻

中国は広東省にお引越し編。お二人は我らがMAD CITY、東莞にお住まいだったこともあるのですね。

〇三七ページ:140㎡で家賃3100元のお部屋を見つけて、至上の笑顔を見せる月さん

不動産価格が果てしなく上がっている今では、おそらく東莞とはいえどこんな価格の部屋はもうないだろうと思います。ただこれは東莞でも中心地の花園の話なので、もう少し郊外に行けば安い部屋は今でもまだまだあるかもしれない。生活環境がアレだけど。

〇五八ページ:機材のためにお金が必要になったのに、月さんが定期預金に入れていたのでお金が引き出せなくて困る井上さん

中国はシケた日本()とは違って金利が違うのです。先日調べたら、最もメジャーな銀行の一つである中国銀行の5年定期の年利が現状で2.75%。この本で描かれている時期はかなり前だと思うので、当時はもっと高かったはず。

それでいて、もっと高金利を謳っていたであろう他の不安定な金融商品に手を出さず、定期預金を選択した月さんは堅実で、正しく、美しいです。

一二一ページ:書き下ろし漫画より、結婚写真について

何かとネタにされがちな結婚前の盛り盛り写真。ウチも撮りました。最初は「あんな恥ずかしいもんできるかい」と必死で抵抗していましたが、最終的に嫁に泣かれてしまい、やむなく撮ることに。そんなに大事なことだって知らなかったんだよ。

撮っている間はやはり始終恥ずかしく、「花束を掲げて飛べ」だの「ポケットに手を入れて壁にもたれかかれ」などという、いまどき三流雑誌でもやらないであろうポーズを取らされるという恥辱を経験しましたが、撮っている間の嫁のうれしそうな表情を見ていると、まあやってよかったのかなと思えるくらいには楽しかったです。

四巻

井上さんの手術と、反日デモの時期のお話。

〇三三ページ:ひまわりの種をものすごいスピードで食べる月さん

ひまわりの種に限らず、こちらの人は種系のおやつ(瓜子(guā zǐ)という)が好きです。ひまわり以外にもスイカやカボチャの種がメジャーでしょうか。

種を割って、中の身(?)をほじくって食べるのですが、こちらの人は歯や手を使って上手に外の殻を割り、次から次へと種を消費していきます。外国人であり、種を食べる習慣ももちろんない僕はこれがうまくできないのですが、周りの中国人からは「なぜできないのか」と不思議がられます。

〇四八ページ:東莞のボッタクリタクシーに憤る月さん

ずいぶんマナーが良くなったと言われるタクシーですが、東莞においてはいまだにメーターを倒さず適当な言い値のタクシーが多いです。ひどい時など相場の倍くらいを提示されることもあり、まず値切り交渉から始めないといけないのでとても面倒でした。

「でした」と過去形になっているのは、滴滴出行などのカーシェアサービスがあるのでタクシー自体を使う機会が劇的に減ったことが理由です。安いし、ちょっと待てばすぐ来てくれるので、ぼったくられる可能性のあるタクシーを使う理由は正直ないというのが現状です。ドライバーもみんなカーシェアのほうに流れているようです。

〇九二ページ:書き下ろし漫画より、不妊治療の第一歩として、検査を受ける井上さん。そこでの精子の検査がアレであった

実はこの検査、僕もやったことがあります。「精子を取ってこい」と言われ、独房のような小汚い部屋でつまりその、精子を採取するために必要な行為をするわけです。中国に来て最もテンションが下がった出来事だったかもしれないというくらい、なんというかアレな体験でした。

下世話な話が続いて恐縮なのですが、その「採取部屋」の壁には男性の自家発電をサポートするべく掲げられた「参考資料」ともいうべき、悩ましい姿の女性の写真がありました。それを見た時には「いわゆる工口(gōng kǒu)に対しての規制が厳しい中国において、これが中国の行政が必要最低悪として許容できる工口(gōng kǒu)の上限なのか」という謎の感慨が生まれました。

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気がつけばめちゃくちゃたくさん書いてしまいましたが、まだ既刊八巻のうち半分です。これでもエピソード的にはけっこう削ったのですが……続きは明日!

(追記)子編アップしました!


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