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自「国」肯定感もいいことばかりじゃない。中国を例に

ずいぶん前ですが、こんなはてなのエントリがX(Twitter)に流れてきました。

日米ハーフでありアメリカでの生活を経験した筆者が、アメリカ式の「あなたは素晴らしい」と言い続ける教育法に、疑問を呈する内容です。

それは単に社会的な圧(=そう言わなければならない)でそうなっているだけであるということや、本人がそうでないのに「素晴らしい」と言い続け、現実とセルフイメージのギャップを広げていくことは、むしろ無責任あるいは欺瞞ではないのか? それは本当に本人のためなのか? ということを問うています。

もちろん自己肯定感は生きるにあたって大切なものだし、日本には自己肯定感がなくて苦しんでいる人が多いっぽいので、アメリカ人を見習った方がいい部分もあると思うのですが、なにごとも過ぎれば毒だということなのかもしれません。

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ところで、中国は個人の自己肯定感はともかく、人々の自国への肯定感がものすごく高い社会です。

愛国教育の成果なのか、もともとの文化なのかはわかりませんが、中国人はおおむね自国のことが好きです。グラデーションはあるし、単純に手放しで自国を好きという人ばかりというわけでもありませんが、人々の中央値は国を好きなほうにかなり寄っているといっていいでしょう。「是々非々」だとしても、「是」のほうの比重がかなり強い、というバランスです。

それは特に、経済的な安定が達成された近年において顕著になっています。

最近はゼロコロナ対策の終わり側のグダグダ、また落ち込みがちな経済のためか、以前よりは少し強固な信頼が揺らいでいる感はありますが、大きな傾向としての人々の愛国はいまでも変わっていません。

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さて、こうした自「国」肯定感の高い中国ですが、もちろん国を愛することは悪いことではないものの、それによる弊害も起きているように思います。

それはまるで、上のはてなのエントリで触れられているような、自己肯定感が高すぎる、あるいは実態にともなっていない個人の問題とも相似形です。

ここで、先日のマガジンで扱った安田峰俊さんの「戦狼中国の対日工作」のまえがきから、印象的な部分を引用してみましょう。

私が実情を観察した限り、現実の戦狼中国の工作活動は、むしろ極度に短絡的で垢抜けず、自分たちの行動が相手国にどう受け取られるかという想像力にも欠けている。カネと人海戦術という単純な武器だけで、無為無策のまま正面突撃を繰り返すような、粗雑で直線的な動きが数多く見られる。

安田 峰俊. 戦狼中国の対日工作 (文春新書) (pp.6-7). Kindle 版、太字強調は筆者

そう、特に国としての行動に顕著ですが、いまの中国、そして中国人は大国としての自国に自信を持ちすぎているせいか、自らの行動が他の国、すなわち「ソト」からみてどう見えるのかということに、まるで想像が至らなくなっている部分があります。

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