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Temuが中国で猛抗議に遭っている件。中国式弱肉強食の世界はかくもえげつない

<2024/08/06>Temu側の見解の情報を寄せてくださった方がいたので、追記しました。

いまや世界中で人気の中国発の激安ECサービス・Temuですが、顧客の個人情報の扱いや、売っているものの適法性(著作権や品質、安全性の問題)など、消費者にとっては大丈夫なのか? と思うような話も絶えず聞かれます。

そんなTemuですが、中国国内でいまけっこう大変なことが起きています。

というのもここ1週間ほど、広州市にあるTemuの本社にセラーたちが抗議に詰めかけているようなのです。

抗議の理由は、返品などの場合にセラーに課されるペナルティがあまりにも重く、かつ理不尽だからだそうです。

たとえば、Temu側とセラーの間の規定ではある商品について、返品や品質問題などが続いた場合に商品金額の5倍の罰金を課すと定めているのですが、明らかに顧客側が原因の返品(サイズを間違えて買ったなど)であってもそれにカウントされてしまうために、普通に商売をしているだけでもどんどんペナルティが課されてしまうといいます。

そのほかにもTemu側が十分な説明や調査をせず、顧客のいうことを鵜呑みにして返金を受け付けたり、商品の返送すら必要ない返品キャンペーンを勝手に実施するなどして、セラー側の負担がどんどん重くなっていきました。

ひとつのセラーにつき数万元の罰金はザラで、大手だと合計で100万元を超えるペナルティを課されていたセラーもいたと言います。これでは、商売になるはずがありません。あるセラーは「海外向けの慈善事業をやってるみたいだ」とこぼします。また一説によると、この罰金によってTemu側が得た金額は数十億元にものぼるといいます。

つまりTemuは世界の消費者に向けて怪しいものを売りつけるだけではなく、その商品の供給元であるセラーたちにもアコギなことをやり、両側からダブルで儲けていたのではないか、ということです。

結果として、この理不尽に怒ったセラーたちの集団が広州市にあるTemuの本部に詰めかけ、連日抗議をしている状態です。抗議活動自体は5月ごろから小規模に続けられていたそうですが、そこに同調する人々が集まり続け、昨日(7月29日)には800人あまりが集結。警備を破り、オフィスにまで詰めかけたということです。

ただTemu側としてはこれらの騒動は誇張されて伝えられており、抗議があることは事実であると認めつつも、それらの事業者は一部であって大半の事業者は適正なルールに基づいて利益を上げていること、法的手段や契約に基づく仲裁を拒否しているのはセラー側であるなどの主張を、海外メディアの取材の際に行っているようです。

まだちょっと騒動の着地点は見えていませんが、このような抗議活動(中国語では維権行動wei quan xing dong=権利を守る活動、などという)が行われること自体が公権力の側からは嫌がられます。なので単にTemuとセラーだけの問題では終わらず、何らかの介入によってオトシマエがつけられ、沈静化が図られるのではないかと思います。

とはいえ、その「オトシマエ」がセラー側に有利になるとは限らないのが中国の怖いところですが……多くの人が泣き寝入りにならないことを祈るばかりです。

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以下、この件への個人的な雑感です。

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