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「彩礼」(結納品)に見る、中国における時代の要請

M-SHANGさんのnoteが面白かったです。

いまの中国の現役世代、とりわけ社会に漕ぎ出したばかりの若者が抱えがちな悩みについて書かれています。簡潔かつ的確に書かれているので、ぜひ一読をおすすめします。

なかでも僕が気になったのは、若者の「結婚の悩み」に関するこの部分です。

結婚する際には、新郎側が家と車を用意しなければならない。そういう決まりが言われるようになってきたのはいつの頃からでしょうか。実はこうした決まりは決して伝統的なものではありません。考えてみれば、中国で自家用車が本格的に普及してきたのはここ10年のこと。なので、新郎の家車付き絶対条件というのは最近定着した習慣なのです。

いまの若者、特に男性は結婚に必要とされる家と車を準備できない、あるいは準備できたとしてもそこに膨大なお金を注ぎ込むくらいなら結婚などしない方がマシだと考える人が少なくありません。その結果未婚率は上がり続け、それにともなって出生率も下がっています。

しかしここでの指摘の通り、結婚に家や車が必要とされるようになったのは、わりと最近のことです。じゃあそれまではどうしていたかというと、それらとは別のものが結婚に必要なものとして採用されてきた歴史があるようです。

中国にはそもそも、「彩礼cai li」と言われる日本でいう結納のような習慣が存在しています。すなわちカップルどうし、ないしは家どうしが結ばれたということの確約として、物品や金銭を送りあう習慣のことです。「我が家とあなたの家は同盟を結びましたよ」という確認の儀式です。結婚を個人どうしのものではなく、家どうしのものとして捉えていることから生まれた習慣と言えるでしょう。

そして、近代の中国において「彩礼cai li」として求められるものの内容は、時代とともに移り変わってきたといいます。とある中国語の記事によると、結婚に必要なものは「三大件san da jian」として、各時代ごとにそれぞれ3つのモノが設定されてきたとあります。

その変遷はこんな感じだそうです。

70年代:手表、自行车、缝纫机(腕時計、自転車、ミシン)
80年代:冰箱、彩电、洗衣机(冷蔵庫、カラーテレビ、洗濯機)
90年代:空调、电脑、录像机(エアコン、パソコン、ビデオレコーダー)
21世纪:房子、车子、票子(家、車、お金)

これを見ると、「彩礼cai li」が負ってきた役割のようなものがわかる気がします。

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