見出し画像

「泡」としての中国のあり方

ある人から、こんな動画を教えてもらいました。

とあるベルギーと中国の混血であるYouTuber・インフルエンサーによる動画です。彼は上海に滞在していたらしいのですが、今回のロックダウンを受けて先頃ベルギーに緊急帰国。そして中国のコロナウイルスによる混乱、および中国の国としてのあり方を痛烈に批判するような内容を中国語で述べています。

アップされている他の動画や、Wikipedia(中国語版)の彼のページでの情報を見る限り、本人にはいわゆる「炎上系」のような気質があるらしく、おもしろおかしく話を盛っている感というか、一種の軽薄さがあることは否めません。話している内容も中国に関する告発というより、YouTuberとして注目を集めることを主眼に置いたものになっているように見えます。その意味で、ある程度は割り引いて見る必要はあるでしょう。

ただ、動画の最後に言っていたことが個人的に印象に残りました。書き起こして、簡単な翻訳をつけておきます。

真的覺得中國在一個很大的泡沫裡面。他們有自己的現實,有自己的新聞,有自己的人民的集體思想,然後這一些所有他們自己的這些屬性,都和其他國家的人民格格不入,都不一樣。(中略)肯定没一个国家,每一个文化,他們都有自己的優勢,還有劣勢。但是当你離開了這個中國泡沫的時候,你就會發現中國泡沫裡面的其他一些事情,是多麼的荒唐,是多麼的胡扯,是多么的魔幻。(中略)然後如果說,未來這個社會的運行方式和走向的話,那麼這會是一個很可怕的一個未來。他們不管怎麼監控你,不管怎麼玩弄你,你都會接受。

中国は一つの巨大な「泡」だ。彼らは自分だけの現実や、ニュースや、思想を持っている。そしてこれらは、他の国の人々とは全く異なった、相容れないものだ。(中略)もちろんそれぞれの国や文化には、それぞれのいいところや悪いところがある。しかし、中国を離れた人が気付くのは、中国という泡のなかの出来事は、あまりにも荒唐で、でたらめで、非現実的だということだ。(中略)このような社会が向かう先は、恐ろしい未来だ。あなたをどのように統制し、弄んだとしても、あなたはそれを受け入れてしまうだろう。

上掲動画より、一部会話的表現を編集済み、翻訳は筆者

今日はこれについて考えてみます。

+++++

中国を「泡」にたとえるのは、たしかに言い得て妙かも知れません。

「泡」のように、外界とは膜によって区切られている。そのあり方はどことなく揺らいでいて不安定ではあるが、しかしそう簡単に割れたりすることはない。「泡」の中には「泡」独自のルールがあり、それを乱さない限りは安定している。こうしてみれば、中国の姿はいかにも「泡」っぽく思えてきます。

そんな「泡」の中で暮らす人々に、動画の彼は警告を発します。世界から見て異質な、しかも単一の価値観の中で暮らしていると、やがて人は自分でものを判断できなくなる。そうなった人々は、すべてをなすがままに受け入れてしまうだろう(ここでは、中央による支配や抑圧のことを言っているのでしょう)。それでいいのか? と。

たしかに、いまの上海におけるコロナ感染対策のように、明らかにバランスを欠いた出来事が起こっても、結局は積極的・消極的かかわらず、なんとなく中央を支持してしまうような人々の姿は、世界から見れば奇異に映ることでしょう。彼のような「国際的な」視座を持った人なら、なおさらそう思うかも知れません。

+++++

しかし、彼が見逃していることがあります。この「泡」ような国としてのあり方は、まさに中国の根幹なのです。

ここから先は

1,091字
この記事のみ ¥ 300

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。