チャイニーズ・PCR・ドリームの終焉と、いまも新たな夢が生まれては消えているという話
去年の末ですが、中国でこんな文章が話題になっているのを、ある読者さんに教えていただきました。
中国でPCR検査員をしているという、とある男性の独白です。
ここでいう「検査員」とは、綿棒をもって人々からサンプルを採取する人員ではなく、そうして採取したサンプルを施設などで検査し、陽性か陰性かの判定をする人のことです。
記事によると、とあるバイオ企業で仕事をしていた研究員の若者が、コロナの影響で仕事がなくなり困っていたところに、上述の検査員に転職したらなんと最高で月に10万元(日本円で190〜200万円)もの収入を得るようになった、という話です。
ここ描写されているのを読む限り、仕事は決して楽ではなさそうですが(毎日12〜14時間に及ぶ反復作業をしたり、地方に移動して検査をする際は隔離リスクを避けるためにホテルにも泊まれず、検査室で寝泊まりすることなどもあったそうです)、それでも月に10万元とはずいぶん景気のいい話です。
中国はある意味資本主義の国以上に「市場原理」が働く国で、ひとたび人手やモノが不足しているとなると、その不足を補おうとしてとんでもない価格高騰などが局地的に起こったりします。このPCR検査員はそうした時流に乗り、うまく富を得たひとりといえるでしょう。
ただ、そんな状況も中国が急激にゼロコロナを撤回したことで、あまり芳しくないものとなりました。上述の文章によるとPCR検査の急激に需要が減ったことで、12月は収入が月に3万元(日本円で57〜60万円)まで下がったそうです。
それでも中国の平均的な給与基準からいえばとてつもない高給ですが(この人物が住むという山東省済南市の平均給与は、2020年時点で4,000元程度だそうです)、この人物は今後給与はもっと下がっていくであろうこと、また検査の仕事は単純作業の繰り返しで新しいスキルが得られないことから、転職を検討しているといいます。中国における「チャイニーズ・PCR・ドリーム」は、長続きはしなかったようです。
この文章はアップロードされるやいなや、「検査員ってそんなに儲かるのかよ」とか「儲けすぎでは?」という声が上がり、瞬く間に大きなバズを起こしました。お金の話となるととたんにみんなが食いつくのは万国共通です。
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もうひとつ、「チャイニーズ・PCR・ドリーム」の終焉を感じさせる出来事が起きています。それは、PCR検査に関わる資材を製造する工場での労働争議です。
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