大都市・地方都市・田舎、それぞれのゼロコロナの温度感

日本の報道では、中国に関するものとして「厳しいゼロコロナに市民の不満が溜まっている」という論調のものがよく見られます。

たしかに全体の傾向として、ゼロコロナ政策が厳しさを増すようになってはいますし、あまりに長く続く措置に対する不満も、以前よりはかなり聞かれるようにはなってきました。

ただ、実際にそこに暮らしているものとして、こういった描写が微妙に腑に落ちない部分もあります。なぜなら、コロナ対策としての措置の厳しさや、それに対する住民の印象には、地域による差異がかなり存在しているように思うからです。

今日はそのような差異を、北京や上海などの大都市、それ以外の中堅ともいうべき地方都市、そして内陸地域や農村、民族自治区などの田舎という3つのレイヤーに分けて書いてみたいと思います。

ゆるめの雰囲気漂う地方都市

まず、上に挙げた順番とは前後してしまうのですが、僕が自分で住んでいてもっとも実感のある地方都市から話をさせてください。

僕が住んでいるのは東莞とんがん市という、広東省にある片田舎の中堅地方都市です。ここでは日本のニュースで聞かれるような、まとめて隔離施設に人が送られるような極端な防疫措置や、その措置への住民の大きな反発のようなことは、ほぼ見聞きしません。

実は数日前から僕の住んでいる街でも陽性者がちらほら出てきており、封鎖措置が始まっているのですが、そこで行われている措置はおおむね穏便な範囲のものに収まっています。

居住区への出入りに24時間以内のPCR検査結果が必要になったことは少々の手間ですが、それも1日のうち15分ほど列に並んで喉をグリグリっとやれば終わりです。しかも、最近はその「グリグリ」ですら、ものすごくいい加減にやるようになっています。面倒だしホントに意味あるのかよとは思いますが、付き合ってやれない程度でもありません。

そのほかの行動制限もそこまで厳しいものではありませんし、少なくとも表面上は普通の生活を問題なく送ることができる程度のものです。したがって、大きな不満というのもあまり見られません。

日本の報道などをみていると、中国全土でものすごく厳しい封鎖措置がとられているように読めるものがありますが、生活実感としては必ずしもそうではないということを、まずは知ってほしいと思います。

厳しくせざるをえない大都市

しかし、そのようなある種のゆるい空気が流れる地方都市に対して、上海や北京など中国でも中心とされる大都市では、どんどん対策が厳しくなっている旨の情報が流れてきます。

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