プロジェクトマネージャー 事業環境の変化への対応【論文の書き方】(令和4年秋問1)
本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、令和4年問1で出題された過去問を分析します。
実際に論文を書く上での考え方を整理し論文骨子を設計するところまでやっていきます。
※本記事は、メインである論文の書き方については無料で読めます。論文本文のみ有料部分なので、読みたい方は記事の購入またはメンバーシップの加入をご検討ください。
問題(令和4年問1)
過去問は試験センターから引用しています。
表題:『システム開発プロジェクトにおける事業環境の変化への対応について』
設問文は以下の通り。
上記問題文・設問文には筆者のメモが記載されていますが、章立てなどはメモの通りにする必要は無く、参考としてください。
何が問われているかを把握する
はじめに意識したいのが、昨年に行われた試験センターによるシラバスの改定です。
本改定では、明らかにプロジェクトマネージャー試験範囲を意識した内容になっています。
注目する点としては、"変化や不確かさへの対応力"が求められるようになったということです。
>ご参考:IPAシラバス変更のまとめ(ver4.9版)プロジェクトマネージャ
本問題も、明らかに”変化や不確かさへの対応力”を求めていると考えられます。
よって、旧来のシラバスでプロジェクトマネージャーが当然行うべき単なる変更の管理では、出題趣旨に反する可能性があります。
上記に、出題趣旨に合う・合わないという観点で論述テーマの例を整理しました。
問題文では”競合他社に追随するための事業部門からの要望”が例示されていますが、これが単なる"業務部門からの追加要望"ではないという点に注意が必要です。
また本記事の例としては"グローバルサプライチェーンの変化"を題材に論述骨子を作りますが、これも単なる"調達の遅れ"ではないという点に注意が必要です。
"不確かな変化への対応"と"単なる変更の管理"の違いについては、本記事内でも掘り下げてご説明したいと思います。
出題要旨と採点講評からの分析
試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して出題の意図と論述のNG例を把握します。
出題要旨
出題要旨の1文目に次の記述があります。
"不確かな変化への対応"を求める新シラバスの傾向に合致していることが分かります。
出題要旨の2文目には次の記述があります。
この2点は設問イで論述を求められる部分であり、"変化への対応"の具体的な手順とされているところです。
論述の分量を最も大きくしたい部分と言えるでしょう。
出題要旨に波線で記載しましたが、計画変更の要求が"実行中"に発生しているところもポイントです。
"計画中"に発生したことならば計画に盛り込めばよいことなので、そうではなく、"実行中"に発生したものをどう対応したかを論述します。
"実行中"の対応を書くには、"計画"として何を定めていたかを書くことが必須です。
なぜなら、"なぜその対応をしたかの根拠"として計画段階の基準などが参照されるべきだからです。
今回は、"事業環境"レベルの変化が想定されるので、計画自体を見直しているという展開が必要となります。
そのため、最初に定めた計画と、変化に対応させた計画を分けて論述する必要があるでしょう。
採点講評
採点講評によると、"脅威を抑える対応策"は論述できた受験者が多かったが、"機会を生かす対応策"については満足に論述できていない論文が散見されたとあります。
これはそもそも"変化"がネガティブな印象で捉えられているため、脅威としてコントロールすることはできても、機会として捉えることは難しいと考えられます。
本論文はじめ、新たな標準である"不確かな変化への対応"のためには、意識を変革し、機会として捉えるマインドセットが不可欠であるということでしょう。
論文を設計する
問われていることの概略を把握したら自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめてどのように論述を展開するかを設計します。
設問アの設計
設問アは「プロジェクトの概要と目的」「背景となった事業環境の変化」「計画変更の要求の内容」の3点について問われています。
一例としてはこの3点をそれぞれ1-1、1-2、1-3節として論文を設計すると書きやすいと思います。
この3点の例としては問題文本文の中段に書かれています。
1-1、1-2、1-3節の関係を図で示すと次の通りです。
問題文の例示では、1-2.(変化の背景)として"競合相手が同種新機能を発表"したことをあげており、"そのままでは目的が達成できなくなる"から、"同機能を前倒し"してほしいという1-3.(計画変更の要求)につながっています。
よってはじめに1-1.でプロジェクトの目的を触れてから、1-2. で発生する"変化"によって目的の達成ができなくなることを論述することが必要でしょう。
この構造を説明するために1-2.で書く変化は事業環境を揺るがすレベルの変化でなくてはなりません。
そうでなければ、ステークホルダからの計画変更の要求を待つことなく、プロジェクト内部で処理して自走できる範囲の変化となってしまい、出題趣旨に反してしまうからです。
余談ですが、事業環境の変化の素材集めには、事業課題や目的、ビジネスモデルの視点があると考えやすいため、ITストラテジストの知識があると有利な問題であると言えるでしょう。
設問イの設計
設問イは「機会を生かす対応策」「脅威を抑える対応策」「確定させた計画変更の内容」が問われていますが、採点講評にもある通り、最も差がつくのは「機会を生かす対応策」でしょう。
問われていることを問題文と対応付けて図示したものが以下の通りです。
変更を受け入れるのはストレスがかかります。
変更を機会として捉えることで、チームとステークホルダを説得し巻き込んで進めることができます。
では、どういったものを機会ととらえるべきでしょうか?
問題文のように「チームの成長のため」とするのも無難かもしれませんが、より説得力を持たせるために、1-1. のプロジェクトの特徴に伏線を持たせておくことを本記事ではおすすめいたします。
論文の設計を行う時は、せめてここまで骨子を作りこんだ上で設問アの書き出しをするのがよいでしょう。
また、機会と脅威への対応策を策定することにより、計画変更することになるのでプロジェクト内の他の要素に影響が出ることが想定されます。
この部分を掘り下げることで字数の充足と知識のアピールを行うことができます。
掘り下げを行うにあたり、利用できるフレームワークは色々とありますが、ここではQCD(品質・コスト・納期)を扱うことで進めていきます。
機会としては、
"UNIXサーバ特有の保守が不要となり、ランニングコストを低減できる"
それによる課題としてチーム内にノウハウが無いので、対応策として
"リファクタリングに強みのある他社とコンサルティング契約を締結"
としました。
同様に脅威についても対応策の掘り下げ方を図示します。
脅威としては、
"アーキテクチャが変わることによる品質低下"
それによる対応として追加テストは納期に影響が出る懸念があるので対応策として
"IAサーバ調達前から検証環境を構築し、追加テストを前倒し"
としました。
以上のように2-1.と2-2.でそれぞれ機会と脅威について論述すればよいでしょう。
また設問イでは「確定させた計画変更の内容」も問われています。
問題文に対応箇所は無いので自分で論述する必要がありますが、メインは2-1.と2-2.と思われるので分量は少なめで良いと思います。
2-1.と2-2.の対応策をまとめ直すイメージで論述すればよいでしょう。
設問ウの設計
設問ウで問われていることは「計画変更の実施状況」と「事業環境の変化への対応評価」です。
設問イまでの計画変更の実施状況と、その評価となるので比較的典型的な設問だったと言えるでしょう。
「実施状況」は計画変更の後のプロジェクトの実行状況を書けばよいでしょう。
たとえば開発工程、テスト工程を順調に消化したことなどです。
「変化への対応評価」はプロジェクトの目的を遂行できたことを書けばよいでしょう。
本記事のプロジェクト目的は”競争力強化と顧客囲い込み”なので、"変化に対応したことによって競争力・顧客満足に寄与した"という文脈としました。
論文骨子
以上を踏まえ、論文骨子は次のようになりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、令和4年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。
"不確かな変化への対応"は今後頻出の分野となっていくと考えられます。今後プロジェクトマネージャーを受験予定の方は参考になる分野なのでぜひ練習を重ねてください。
今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。ではそれまで。
論文全文について
ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますがこの先をご購入ください。
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■設問ア
1.プロジェクトの目的、事業環境の変化、計画変更の
要求
1-1.プロジェクトの概要と目的
スーパーマーケットT社はオンライン配送サービスを
手掛けている。論述の対象とするプロジェクトは課金・
請求サービスのアップデートであり、同サービスを月額
サブスクリプションで利用できるようにし、競争力強化
と顧客囲い込みに繋げることが目的である。本プロジェ
クトの特徴は次の通りである。
・課金・請求サービスのシステム基盤の一部がUNI
Xサーバで構築されており、専門のシステム開発ノ
ウハウが必要
・利用者の決済に関わるシステムであり高い品質が要
求される
私はT社のプロジェクトマネージャーの立場で本プロ
ジェクトに携わった。
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