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第5回Virtual World Tour 実施レポート

“おうちから世界を見よう、つながろう”をテーマに、
世界で活躍するIDCJの社員から仕事やリアルな現地事情について
聞くプログラムです。
第5回目となる今回のセミナーのレポートをお送りします。

<セミナー概要>

開催日時:2020年11月15日(日)13:00~14:30
講師:IDCJ 主任研究員 安居 信之
テーマ:「食べ物」から世界の今を見てみよう!

第5回目のVirtual World Tourも前回に引き続き、講師と参加者の皆様との双方向のコミュニケーションをより活性化させ、参加者の皆様の理解を深め、好奇心を刺激できるよう、講師の発表中にもお気軽にご質問していただけるようにしました。また、『おしゃべりタイム』では、テーマに関するお題について、講師とファシリテーターにて意見交換をしながら、テーマ全体の深掘りを行いました。

残念ながら、30分のお話しでは現状と課題の表面までにしか触れられず、もっと詳しく知りたい!というお声もいただきました。セミナーで感じた問題意識や関心の高まりをきっかけに、ご自身でさらに情報を収集したり、実際の行動に移してもらえればうれしく思います。

<セミナー内容>

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●画像出典:総務省HP

「食べ物」に関する世界的な問題は、持続可能な開発目標(SDGs)にも取り上げられており、「2:飢餓をゼロに」という目標が掲げられています。

先進国では飢餓の問題は優先課題とは言えませんが、
世界の状況を俯瞰すると、
私たちが現役世代の間にも食糧が不足してしまうかも、という大きな懸念を感じます。

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●画像:ハンガーマップ 2019(出典:WFP 国連世界食糧計画)

では、そもそも何で食糧は足りなくなるのでしょうか???

その理由は、農業で地域人口に見合うだけの食糧をまかなえなくなるからです。人は、農業なしでは生きていけません。

人間の主食は、地域によって異なりますが、お米以外にもパンやめん(小麦粉)、いも、トウモロコシなどがあります。

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●写真:ウガリ(アフリカの伝統食)Photo by 森 裕紀子

短期間に栽培でき、水もあまり必要としないトウモロコシやあわ、ひえなどはアフリカ地域の貴重な食糧ですが、雨頼みのアフリカの農業(”天水農業”と呼ばれます)は、近年の気候変動による降水量や雨季の時期の変化などが原因で、生産にも影響が出始めています。また急激な人口増加がそれに拍車をかけていて、食糧の供給不足は現実の問題として憂慮する事態になりつつあります。

飢餓の問題に対して、日本政府は、現地の人に技術を教え活かしてもらう支援だけでなく、備蓄米などの食糧を直接送る援助もしてきました。
また途上国の中でも地域によっては、『緑の革命』と呼ばれる種の改良や化学肥料の導入、農業の機械化も進みました。でも、依然として飢餓はなくなりません。

さて、ここで先進国の食糧事情を見てみましょう。

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●写真:Free-PhotosによるPixabayからの画像

おいしい牛肉を作るために、従来の牧草だけではなく、トウモロコシなどの穀物を与えるようになりました。
みなさんは、牛肉1Kgを生産するため必要な穀物の量を知っていますか?

なんと、8倍の8Kgも必要です!
豚肉では4kg
鶏肉でも2kg

また、アメリカで行われている灌漑農業は、広大な乾燥地でも地下水を汲み上げる大規模農業が行われています。ただ、過剰な地下水利用も指摘されており、地下水の枯渇も懸念されています。

水の最大消費者は、”農業”なのです。そのため、水不足と食糧不足は密接な関係にあります。

欧米諸国を中心として多かった肉の消費量が、いまや人口増加の著しい新興国でも上がっています。人の主食であるトウモロコシは、他方で家畜のえさやバイオエタノールなどにも利用され、必要な穀物量は増える一方です。

もしも、世界中の人々の食生活が変化したら、穀物生産は追いつくのでしょうか・・・?
これはまさに、大人も若い人たちも、みんなで考えていく必要のある人類共通のグローバルな課題ですね。

<おしゃべりタイム>

国際協力や援助の場では、

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ。」

と言われますが、食料を必要としている人々にとってはどちらがよいのでしょうか?

講師の安居とファシリテーターの鳥海の2名で、皆様からのご意見やご質問を受けながら意見交換をしました。
政府開発援助(ODA)や国際機関が行う支援はたいてい3~4年程度の中期的な支援計画です。
農業の成果はその支援期間だけでは測れない部分も多く、「魚の釣り方」を教えても効果が見えにくいことも指摘されています。

一方で、日本で学んだ知識や技術を、自国へ持ち帰ってそのまま活用できなくても、学んだ人々が応用して意外な方法で活かされることもあるようです。また、難民キャンプのように切羽詰まった状況では、やはり食糧の直接支援が必要です。

「魚」も「魚の釣り方」もどちらも必要です。状況や地域の特色に応じた、さまざま形の支援が必要とされる人々に届けられることが大切ですね。

ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!

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