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自分だけの"人生のテーマ"が、きっと見つかる! 連載「いますぐ勉強したい30のこと」はじまりはじまり。

突然ですが、みなさんは勉強は好きですか? 

世の中的には、"勉強"に対してよくないイメージを持っている人の方が多いかもしれません。


1週間の平均学習時間は4時間!

例えば、(ちょっと古いですが)2009年の調査によれば、高校生の約8割が「学校の勉強を「きつい」(「とてもきつい」+「まあきつい」)」と感じているそうです。その傾向は社会人になっても受け継がれ、2014年の調査によれば、社会人の自主的な学習に費やしている1週間の平均時間は4時間だけなのだそう。

セミナーや講座に参加したり、本を1冊じっくり読んだら、あっというまに終わってしまいますね。1年で4時間×52週=208時間、約8.7日になります。

僕ももうすぐ40歳になりますが、日本人の現在の平均寿命である83歳から逆算すると、平均的な40歳の人の残りの勉強時間は、8.7日×43年=374日≒1年分という計算です。この数字、多いでしょうか、少ないでしょうか。みなさんはどう感じましたか?


後悔したことの第二位が「勉強しなかったこと」だった

その一方で、こんな興味深い調査結果もあります。

55歳から74歳の男女1000人を対象とした「今、何を後悔していますか?」というアンケートでは、ダントツだった「もっと貯金しておけばよかった」に続いて、「もっといろんなことを勉強すればよかった」が二位にランキングしているのです(「プレジデント」2012/11/12号「金持ち老後、貧乏老後」特集より)。

ちなみに三位は「行きたい場所に旅行すればよかった」、四位は「年金で暮らせるよう生活設計しておけばよかった」ということで、旅よりも、年金よりも勉強!というところからも、その存在感が際立っています。それくらい勉強とは、生きることの本質であり、人生を豊かにするために欠かせない時間なのかもしれません。


ライフステージによって勉強することは変わる

とはいっても、そもそも"勉強"という言葉へのイメージや、人生のなかで勉強時間をどのように位置づけているのかは、人それぞれなのだと思います。

あくまで僕の個人的な経験でいうと、小学校、中学校はこの世界で生きるための基礎固めであり、高校の勉強は秋田から飛び出すために必要不可欠なことでした(つまりは受験対策)。ちなみに当時は数学と英語が得意で、いまの仕事の柱となっている国語は苦手科目でした。

つづいて大学の勉強は、自分が生きていきたい世界を知るためにあったように思います。結果的に高校時代の夢でもあったデザインの道に入っていくのですが、そのきっかけは大学の授業ではなく、大学からもらったアルバイトの仕事でした。

フランス文学部に合格したのも滑り止めで、当時はまだ国語への苦手意識が残っていたのでフランス文学の授業を真面目に受けていませんでした。それなのに20代半ばにジョルジュ・バタイユをはじめとするフランス哲学にはまったり、30代以降は潜在的文学工房(ウリポ)の代表的な作家ジョルジュ・ペレックにはまったりしているので、しっかり大学を活用できなかったことは今でも後悔していることのひとつです。

そして社会人としての勉強は、自分が生きていきたい世界の"現実"を突きつけられて、壁にぶつかっては足りない知識やスキルを学び、試すことの繰り返しでした。デザイナー時代しかり、編集長時代しかり、教員時代しかり(今ですね)、勉強とは「不足を補うために身につけるもの」だと僕自身も思っていました。


「study」と「learn」の違い

しかし30代に入ってから、勉強観が少しずつ変化してゆきます。いまの仕事には直接結びつかない、ただ導かれているとしかいいようのないテーマと再会することになったのです。

僕にとってのそれは、「弘法大師・空海」でした。そのあたりの経緯はこちらに書いていますが、僕にとって空海というテーマは「情熱を傾けるもの」だったです。

「不足を補うために身につけるもの」と「情熱を傾けるもの」。この2つは「勉強」を表現する2つの動詞と対応しています。前者は「習得する」というニュアンスが強い「learn」の得意分野であり、後者こそが"勉強"と訳される「study」の真髄です。

というのも、意外にも、studyの語源は"情熱"を意味するラテン語studiumであり、そこから派生したstudentもシンプルに「熱意を持つ者」という意味だったのでした(ので、「勉強家」の英訳はstudentかなと思い、名刺にはstudent / extraodionary professor と記しています)。

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study/learnの違い
語源:情熱/習得
態度:能動的/受動的
結果:問わない/問う
行動:突き進む/振り返る

「I learned English」というと、「わたしは英語が話せる」という含みを持っています。しかし「I studied English」は、必ずしも結果は問われず、ある時期にあることに情熱を傾けていたというプロセスに重きが置かれているのです。

空海をstudyしたところで、どうなるのか、いつ終わるのかもわからない。ただ導かれているだけであり、どこに向かっているのかも知らない。そんなことに時間を費やしていいのか、不安を覚えたこともありました。

しかし、learnとstudyの違いを知ったとき、その違和感がなくなりました。むしろ、この結果を問われない感じの方が、なんとも心地よかったのです。

24歳で初めて出会い、26歳に再びはまり、いっときソーシャルデザインに浮気して33歳で「空海とソーシャルデザイン」という、よりフォーカスしたテーマを発見します。さらにそこから大学教員に浮気したことで、やっと39歳にしてソーシャルデザイン教育という出口が見えてきました。空海というテーマと出会って15年、バラバラに置いていただけだった布石が、さまざまな仕事を経て一気につながりだしたのです。

空海のことについては、知れば知るほどまだまだ探求の始まりにすぎないことがわかるので、きっと一生かけてともに歩んでいくことになるでしょう。

"大人の勉強"というと、外国語を学んだり、資格を取ったりといったことを思い浮かべるかもしれませんが、こうした一見遠回りのように見える数十年単位の勉強(study)こそ、人生100年時代を深みのあるものにしてくれると思うのです。


「いつかの布石」としての勉強のすゝめ

そこで提案したいのが、「いつかの布石」としての勉強です。

あることにはまったのがほんの1ヶ月でも、数日でも、マグマが溢れるように情熱を持って取り組むこと自体、すでに素晴らしいのだから、そのあと数年放置してしまっても気にする必要はないのかもしれません。

とはいえ、どんどん季節が流れて、いつかまたそのテーマと再会したとすれば、前に置いた布石のことを思い出してほしいと思っています。そうすることで、ひとつの物語が見えてくるからです。

それを碁盤に見立てて置いてみたものがこちらの図です。

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数字は年齢を表していますが、「空海」だけでなく、「言葉遊び」も「ソーシャルデザイン」も、繰り返すように何度も自分にメッセージをくれていたことがわかります。こうして布石を俯瞰して、その頻度や濃度を納得できたとき、自分だけの"人生のテーマ"が浮かび上がってくるのです

もしあなたが30代や40代だとすれば、人生のテーマの布石はすでに10代のときに置かれているのかもしれません。とすれば、あとはそれを思い出すだけでいい。

もしあなたが10代や20代だとすれば、いますぐ始めた勉強がいつかの布石となり、自分の原点に戻りたくなったとき、あなたを導いてくれるはずです。


いますぐ勉強したい30のこと

とはいえ「そもそも何を勉強していいのかがわからない」という方もいるでしょう。

そこでこの連載では、いますぐ勉強したい30のこと「study for being("本来の自分"を思い出すための勉強)」「study for resource("秘められた価値"を引き出すための勉強 )」「study for vision("ほしい未来"を描き出すための勉強)」という3つのカテゴリに分けて、ご紹介していきたいと思います。

また「何を勉強すればいいのか」だけでなく、「どう勉強すればいいのか」というヒントもお伝えできればと思います。もちろん30個すべてに答える必要はありません。何かひとつでも、ピンと来るものがあれば幸いです。

ということで、自分だけの"人生のテーマ"が、きっと見つかる新連載「いますぐ勉強したい30のこと」、はじまりはじまり◎

〈目次〉

【PART1】study for being
"本来の自分"を思い出すための勉強

「かつての夢」を勉強する
①10代の夢(例:ファッションデザイナー)
②就職活動で志望したこと(例:デザイナー)

「自分のルーツ」を勉強する

③意外と知らない地元のこと(例:出羽三山)
④家族がやっていた仕事(例:学習塾)

「beの肩書き」を勉強する

⑤職業メタファー(例:喜劇俳優)
⑥その他のメタファー(例:Eテレ)

「0th Place」を勉強する

⑦"本来の自分"を思い出す習慣(例:瞑想)
⑧"本来の自分"に戻れる場所(例:マウナケア)
【PART2】study for resource
"秘められた価値"を引き出すための勉強


「得意なこと」を勉強する

⑨当たり前にできることなのに、スゴイと言われること(例:言葉遊び)
⑩誰かに頼まれたときに、「お役に立てそう」と思うこと(例:司会)

「現在の偏愛」を勉強する

⑪影響を受けた人物、キャラクター(例:空海)
⑫新作が出ると必ずチェックする作り手(例:Rainのゲームチャンネル)
⑬持ち歩いている大事なもの(例:postalco)
⑭部屋にある大事なもの(例:ニルス・ホルガー・モーマン)
⑮プレゼントでもらって嬉しかったもの(例:雪の結晶のブローチ)
⑯自分にとって特別な食べ物/飲み物(例:寿司)
⑰自分にとって特別な動物/植物(例:ネムノキ)
⑱自分にとって特別な趣味(例:相撲、五目並べ、温泉)

「未来の偏愛」を勉強する

⑲本当は学んでみたい外国語(例:サンスクリット語)
⑳本当は行ってみたい場所(例:アイスランド)
㉑本当ははまってみたい趣味(例:乗馬、ジャズ)
㉒本当は憧れている死に方(例:本に埋もれる)

「大切な人のこと」を勉強する

㉓恋人や家族、親友にしてあげたいこと(例:エサレンマッサージ)
㉔恋人や家族、親友が大切にしていること(例:縄文時代)
【PART3】study for vision
"ほしい未来"を描き出すための勉強

「モヤモヤすること」を勉強する

㉕いつも怒りや悲しみを感じてしまうニュース(例:教育問題)
㉖暮らしの中で「なんとかしたい」と思うこと (例:夫婦喧嘩)

「未来の不安」を勉強する

㉗備えておきたい自分の健康(例:姿勢矯正)
㉘備えておきたい家族の暮らし(例:教育費)

  「妄想」を勉強する
㉙もし一年休みがとれたらやってみたいこと(例:ヨガインストラクターの資格を取る)
㉚もし1000万円自由に使えたらやってみたいこと(例:世界のリトリート施設を訪ねる)

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎