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選挙をもっと気軽なものにしたい! ある地区だけ選挙の投票率を4%も上げた方法とは?

この記事は、書籍『空海とソーシャルデザイン(仮)』(春秋社、出版日未定)第一章の先行公開です。書籍掲載時には変更となっている可能性もありますので、あらかじめご了承ください。


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ソーシャルデザインってどんなもの?

前回の記事では第三問とともに、「モヤモヤ」から「ワクワク」へ、という発想の転換をご紹介しました。

ソーシャルデザイン・クイズも今回が最後です。

第四問
選挙をもっと気軽なものにしたい!
ある地区だけ選挙の投票率を4%も上げた方法とは?

① 投票所の近くでお団子をふるまった
② 話題の歌手が路上ライブでメッセージを広めた
③ 街中に投票所までの矢印を貼った



正解は...

「③街中に投票所までの矢印を貼った」でした!

ユニークな選挙キャンペーンの舞台となったのは、かつては日本三大ドヤ街(日雇い労働者の街)として知られ、今ではたくさんのアーティストが活動する横浜の寿町というエリア。

2006年に行われた横浜市長選挙の投票日前に、突如あちこちに「てがみはなくても、選挙権はあるんだ」「投票所は、あっち→」と書かれたカラフルな矢印型のポスターが貼り出され、街は投票所をゴールとする巨大迷路と化したのです。「矢印を貼るだけ」という誰でも参加できるシンプルさによって、その輪はまたたくまに広がってゆきました。

結果、横浜市全体では3%の下落となった投票率は、寿地区では4%の上昇を記録。後日談として、これまで素通りされていた選挙カーが寿町を訪れるようになっただけでなく、先入観から避けるようにしていた近隣住民も寿町を訪れるようになったそうです。

さらに興味深いのは、十一年後、2017年の衆議院議員総選挙のタイミングに再び復活したこと。有志によって「投票所はあっち→」プロジェクトが結成され、「言葉を変えない」「許可を取る」といったゆるやかな「気をつけること」に沿えば、誰でも矢印データをプリントアウトして自分の選挙区で利用できるプラットフォームへと進化を遂げたのでした。


「独り占め」から「オープン」へ

このアイデアから学べることは「独り占め」から「オープン」へ、という発想の転換です。

何か画期的なアイデアを思いついたとき、盗まれたり、真似されたりしないようにすることは、ビジネスやスポーツなどの競争の世界においては当然かもしれません。しかし、「投票率を上げて、政治への関心を高めたい」というふうに、究極のゴールを目指すソーシャルデザインの世界においては、いっそオープンに手法を共有した方が社会的なメリットは大きくなるといえます。

もちろん逆効果にならないように最低限のガイドラインは必要です。その上で、いつのまにか”生みの親”である自分の手を離れてアイデアがますます進化していくことも、ソーシャルデザインの担い手にとっては大きな喜びとなるのです。


「不信」から「信頼」へ。
無限の可能性を信頼し、アイデアや行動の源泉とすること。

「救う」から「一緒に遊ぶ」へ。
〈本来の自分〉を発揮すること。

「困難な条件」から「ユニークな魅力」へ。
秘められた〈リソース〉に光を当てること。

「モヤモヤ」から「ワクワク」へ。
煩悩をきっかけに〈ほしい未来〉を描くこと。

「独り占め」から「オープン」へ。
大きな流れに身を置きながら自分がやるべきことを〈デザイン〉すること。


クイズとともにお届けしてきた5つの発想の転換こそが、ソーシャルデザイン思考の柱になります。そしてこれらがすべて弘法大師・空海の教えの核となる五つの仏の智慧=五智とも重なるのです。(詳しくはまた!)

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎