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あなたのモヤモヤが即ワクワクに! 煩悩を転じて 「ほしい未来」を描く「MOYAMOYA研究」のすゝめ④

【19/10/31 追記】最新版「MOYAMOYA研究」の記事を公開しました!

本来の自分 × ほしい未来 × リソース × デザイン = ソーシャルデザイン!」というソーシャルデザインの公式の中から、〈ほしい未来〉にフォーカスするミニ連載。

第一回では〈ほしい未来〉の具体的な例を、第二回では〈ほしい未来〉と出会う2つのパターンを、第三回ではそもそも煩悩とは何かということをご紹介してきました。

最終回となる今回はオリジナルワーク「MOYAMOYA研究」のレシピを公開したいと思います。


〈MOYAMOYA研究のレシピ〉

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上が完成した〈ほしい未来〉シートです。「毎日、夫婦ゲンカしすぎ問題」が、「「問いかけあう」パートナーという新しい夫婦のあり方が広まる未来」へと転じたことを意味しています。(どうしてもWorldShiftの図に似てしまっていますが、ご容赦ください。むしろ大きな尊敬を込めて...)

トータルの時間の目安は90分としていますが、初めての場合は120分くらいを見込んだ方がよいかもしれません。ワーク前に気持ちを整える①チェックイン、感想をシェアする⑦チェックアウトの説明はここでは省きます。

①チェックイン(5分)
②「人生グラフ」を描く(10分)
③「六大モヤモヤ」をリストアップする(10分)
④「◯◯すぎ問題」を決める(10分)
⑤インタビュー + メッセージカードを贈る(20分×3人)
⑥「〈ほしい未来〉シート」を書く(5分)
⑦チェックアウト(10分)


②「人生グラフ」を描く(10分)

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お互いのストーリーを共有するワークショップの結果を左右するのは、自分の思いと語りが一致しているかどうか、だと思っています。取り繕ったような発言や単なる思いつきだけではその場は深まらず、最初のズレはワークの最後まで響いてくるからです。

特にモヤモヤについて語り合うとなると、直前のネガティブな出来事が心身の状態(ステイト)に影響を与えることがあります。だからこそ、大切なのはいったん呼吸を整えること、そしてじっくり思い出すこと。「beの肩書き」では「ライフヒストリー曼荼羅」と呼ばれるワークを取り入れましたが、ここではモヤモヤしていることを思い出す前のミニワークとして、よりシンプルな「人生グラフ」という手法を取り入れたいと思います。

人生グラフとは、人生の浮き沈みを曲線グラフで表現したものです。他者と共有することでより深まることはありますが、今回はこれまでのモヤモヤを思い出すためのものであり、共有を前提としていません。あくまで誰にも見せない自分だけのメモと考えてください。

上の図では「上京してから今まで」としていますが、「生まれてから今まで」や「この1年」など、ワークの趣旨に合わせて思い出す期間をあらかじめ決めておきます。

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真ん中を0として、調子が良かったときは上に、悩みが多かったときは下に、自分にとって喜びが大きかった、衝撃的だったときはその量をより大きく描きます。

そうやってひとつの線が結ばれると、これまでの半生の波が浮かび上がってくるのです。終わったら、山と谷を象徴するような出来事もメモ程度に記しておきます。

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もちろん、マイナスの時期でもプラスの出来事はたくさんあったでしょうし、逆もまた然りでしょう。考えすぎると難しくなってくるので、今の自分から振り返ってみて自分らしくいられた時期だったかどうか、直感を大切に取り組んでみてください。

このワークをするときに僕が必ず伝えているのは、僕自身の経験がまさにそうなのですが、山でも谷でも、その絶対値こそが人生の濃度を高めてくれているということです。マイナスに振り切っているからといって落ち込む必要はありません。できれば「それだけかけがえのない経験をたくさん重ねてきたんだな」と優しく自分を迎えていただけたらと思います。


③「六大モヤモヤ」をリストアップする(10分)

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ウォーミングアップとしての人生グラフが終わったら、いよいよ自分のなかのモヤモヤをリストアップしてゆきます。そのヒントとなるのが第三回でご紹介した、現代を生きる私たちに馴染み深そうな六大モヤモヤです。

自分に起こった出来事(内ファースト)でも、誰かから聞いた話(外ファースト)でも構いません。範囲は自分 − 家族・友人 − 職場・学校 − 地域 − 日本 − 世界まで自由ですが、なるべく具体的に挙げてゆきます。

とはいえ、「怒りを感じたことはないな...」という方もいると思います。全部を埋める必要はないので、思い当たるだけで構いません。また、このシートも共有しないので、安心して書き進めてみてください。

〈六大モヤモヤ〉
①「もっとほしい!」という〈欲望〉(貪/自分への執着)
②「うらやましい…」という〈羨望〉(瞋/自分の否定)
③「許せない!」という〈怒り〉(瞋/他者の否定)
④「これじゃない…」という〈違和感〉(瞋/他者の否定)
⑤「しておけば/しなければ…」という〈後悔〉(瞋/過去の否定)
⑥「どうしよう…」という〈不安〉(瞋/未来の否定)


恥ずかしいですが参考までに、ちょっと前までの僕のモヤモヤはこんな感じでした(今はおかげさまでかなり解決しています)。

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〈兼松佳宏の六大モヤモヤ〉
・(欲望)もっと一人旅に出たい!
・(欲望)自分の部屋がほしい!
・(怒り)自分ばっかり責められる!
・(怒り)食べ物、床に落としすぎ!
・(後悔)五目並べしすぎた…
・(後悔)スポーツニュースばかりみてる…
・(羨望)大きな仕事をしてていいなあ… 
・(羨望)本がたくさん売れてていいなあ…
・(違和感)借りてきた言葉ってやだな…
・(違和感)勉強ってもっと楽しいのにな…
・(不安)これからどんな仕事していこう…
・(不安)こんな夫婦関係で大丈夫かな…


④「◯◯すぎ問題」を決める(10分)

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モヤモヤを出し終えたら、「そろそろ本気で、なんとかしたい」と思うことを絞っていきます。

手始めに次の3つの条件に当てはまらないモヤモヤをいったん手放すことにします。

〈3つの条件〉
①何度も同じパターンを繰り返してきたし、今すぐ向き合うべきだと思う

②仲間の協力があれば、自分の力で何とかできそうだと思う
③ある程度は整理がついているので、仲間に共有しても大丈夫だと思う

何度も同じパターンを繰り返してきたし、今すぐ向き合うべきだと思うとすれば、それこそがあなたにとっての"人生のテーマ"なのかもしれません。その切実さをエネルギー源として積極的に利用してみてください。

次の②仲間の協力があれば、自分の力で何とかできそうだと思うについては、逆にそう思えないとすれば、自分にはまだ手に負えない大きすぎるテーマなのかもしれません。もう少し等身大のモヤモヤを選んでみましょう。

最後の③ある程度は整理がついているので、仲間に共有しても大丈夫だと思うがどうして大切かといえば、それを語り合うことで自分を傷つけないでほしいからです。このあとのグループワークではモヤモヤを仲間と共有していくことになるので、あくまでワークの題材としてふさわしいテーマを選ぶようにしてください。

いずれせよ、これらの3つの条件をクリアしたモヤモヤこそ、あなたにワクワクをもたらす種となります。


僕の例でいうと、以下のモヤモヤはいったん候補から消えました。

・(怒り)食べ物、床に落としすぎ! → 今すぐじゃなくてもなあ...
・(後悔)五目並べしすぎた… → 同上...
・(後悔)スポーツニュースばかりみてる… → 同上...
・(羨望)大きな仕事をしてていいなあ… → 同上...
・(羨望)本がたくさん売れてていいなあ… → 同上...
・(違和感)借りてきた言葉ってやだな… → 同上...
・(違和感)勉強ってもっと楽しいのにな… → 同上...

そして、残ったのは次のモヤモヤでした。

・(欲望)もっと一人旅に出たい!
・(欲望)自分の部屋がほしい!
・(怒り)自分ばっかり責められる!
・(不安)これからどんな仕事していこう…
・(不安)こんな夫婦関係で大丈夫かな…


続いて、こうして残ったそろそろ本気で何とかしたいモヤモヤを、ひとつの言葉にしてみます。その型となるのが"◯◯すぎ問題"です。

結局のところそれらをまとめると、あなたは何にモヤモヤしているといえるでしょうか? 全体を俯瞰して、しっくりくる言葉を探してみてください。


ふたたび僕の例でいうと、結局のところ僕が何とかしたいのは、

毎日、夫婦ゲンカしすぎ問題

だったのでした。ここではこれくらいシンプルで大丈夫です。

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⑤インタビュー + メッセージカードを贈る(20分×3人)

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いよいよここから3人一組をつくってモヤモヤを共有してゆきます。

まずは語り手、聞き手、メモ係に分かれ、続いて『アクティブ・ホープ』という本で紹介されているオープン・センテンスという手法で対話をはじめます。

ここでは聞き手もメモ係も何も言わず、注意深く耳を傾けます。語り手は、以下の未完成の文章のそれぞれについて、文章の始まりを読み、その後に自然に口に出てくることを話します。ここでは2分ほどの時間をとります。

〈オープン・センテンス〉
①私がMOYAMOYAしているのは…
②それはどんなときか、具体的にいうと…
③私が「なんとかしたい」と思った理由は…
④その感情についてどうするかというと…


次に聞き手はもっと語りを引き出すために、5つの質問をQ1から順番に尋ねてゆきます。語り手は聞き手の誘導に沿って答えていってみてください。メモ係は語り手の答えをシートにメモしつつ、タイムキープをします。各質問は2分ずつ、合計10分です。


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参考までに、5つの問いそれぞれの意図を簡単にまとめてみます。

Q1. まずは誰に対して、どんなことを分かってほしい/ほしかったですか?は、受容をめぐる問いです。誰かにしっかり話を聞いてもらえただけで、何だかイライラが消えてしまった、ということはありませんか? それほど私たちは受容される機会が足りていないのかもしれません。ここではあなたの心の叫びを出し切ってみてください。

Q2. むしろそれと向き合ったことで、よかったといえることはありましたか?は、冥利(知らず知らずのうちに受けている恩恵)をめぐる問いです。悩みの最中では気づきにくいかもしれませんが、問題と向き合ったからこそ開かれた可能性もあったのではないでしょうか。ちょっと難しいかもしれませんが、心に浮かんできたことを言葉にしてみてください。

Q3. 結局、あなたが本当に求めている/いたことは何だと思いますか?は、本当のニーズをめぐる問いです。日常的に起こる問題の多くはたまたま顕在化したひとつの症状であり、対症療法だけではぶり返してしまいます。だからこそ、あなたが本当に望んでいることを突き止めてほしいのです。わかってほしかったということならQ1で、意外といいこともたくさんあったとすればQ2で既にそれは解決しているのかもしれません。

こうして少しずつ、問いは深まっていきます。

Q4. そのモヤモヤは、この世界のどんなことを象徴していると思いますか?は、自分に起こった出来事は、世の中で起こっている出来事を何らかのかたちで代表しているとすれば、それはどういうことなのか、と向き合う問いです。自分から世の中へと視点が広がったとすれば、それこそが慈悲の心の芽生えなのだと思います。

いよいよ最後の問いは、Q5. そのモヤモヤは、どんなメッセージをあなたに与えてくれていると思いますか?です。この深い洞察によって「どうして私ばっかり...」という「Why me...?」が、「これこそが私の役目なんだ!」という「Why me!」へと転じていくのです。


以下はサンプルです。このときのワークでは、すでにQ2の時点でスッキリしていることに気づきました。そしてQ4とQ5で、「いい夫婦ケンカはあっていい」「それは"問いかけ合うパートナーシップ"なんだ!」という大きな発見に至ったのでした。

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10分経ったら、メモ係から1分くらい軽くフィードバックをし、その後の3分は〈ほしい未来〉につながりそうな問いを重ねます。そして残った時間(4分ほど)で、語り手の話から感じた〈ほしい未来〉の候補をメッセージカードに書いてプレゼントします。 これを3人分繰り返します。


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⑥「〈ほしい未来〉シート」を書く(5分)

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いよいよフィナーレです。ここまでのプロセスを一枚の〈ほしい未来〉シートとしてまとめます。

上の"◯◯すぎ問題"はそのまま書き写し、下の〈ほしい未来〉はもらったメッセージカードを参考しながら、自分がしっくりくる言葉を探してみてください。

書き終えたら全員で共有し、チェックアウトして終了です。おつかれさまでした!


改めて僕のケースでは、「毎日、夫婦ゲンカしすぎ問題」というモヤモヤがあったものの、「わかってほしい」という感情を吐ききり、「なんだかんだ、乗り越えるたびにありたい自分に近づいている」ことに気づいてからは考え方がガラリと変わりました。

決して離婚したいというわけではなく、いい夫婦ケンカはあっていいし、こうした夫婦の積み重ねが僕の人生にとって欠かせないものであるということ。フリーランス同士で結婚した夫婦が増えているとすれば、もしかしたら"問いかけ合うパートナーシップ"を実践する自分たちの日々が、誰かにとっての希望になるかもしれないということ。

そうして「問いかけあう」パートナー(Wicked Partner)という新しい夫婦のあり方が広まる未来という言葉に落ち着いたとき、心の底からワクワクしたのです。


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こうしてプライベートなことをあれこれオープンにすることは、お見苦しくお恥ずかしい限りです。それでもなお、このカミングアウトこそが〈ほしい未来〉への第一歩につながると信じて、サンプルとして書いてみましたが、今は不思議な爽快感に包まれています(ぜひ、さまざまなご意見お待ちしています!)。

みなさんもぜひ、MOYAMOYA研究を通してあなただけのWhy me!を探してみてください。毎日の小さなイライラ、嫉妬、違和感こそが、あなたが進むべき道を照らしてくれているはずです。

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎