【古典怪談】閲微草堂筆記:楊横虎【現代語訳】

 殷 贊庵(イン・サンアン)という外科医は、深州(しんしゅう)にある患者さんちから帰るときの話だ。

 家主は下僕である楊(よう)を派遣し、家まで送ることにした。

 楊は乱暴な人として有名だった。(横取りの横)「横虎」と呼ばれていた。道沿いに喧嘩を売っていた。そんな日々が続いていた。

 ある日の夕方、彼らはある村に辿り着いた。
 どのホテルも一杯だというので、お寺で一泊することに決めた。

 そして、坊主に言われた。
 「空いているのは本堂の後ろにある三室の空き家だけだが、実は魔物が出るので...」

 なのに、楊は答えた。
 「敢えてこの楊横虎にたたるものは、どこのどいつだい?ちょうどだ!会いたかったんだ!」

 そして、坊主に掃除を促し、殷と共に寝ていた。殷は臆病で壁近くで寝ていた。楊は扉側。

 亥の刻になると、やはり外からぐぅ..ぐぅ...という声が聞こえた。綺麗な女性だった。女はベッドに近づいてきた。

 すると、楊はいきなり起き上がって彼女を抱いた。さらにキスした。ふっと女は首吊り死体のような顔が現れた。恐るべき顔だった。楊は一瞬ゾッとし、ガチガチと歯が震えていたが、徐々に笑った。

 「お前、顔は怖いんだが、下半身は生人間と違わないはずだ。楽しいことでもやろうか!」と楊は言いながら、左手で女の背を抱き、右手は彼女のパンツを抜き始めた。ベッドまで押し倒した。

 すると、女幽霊は叫びだして逃げだした。

 おーい、おーいと、楊は呼びながら追いかけたんだが、追いつかなかった。なので、ベッドに戻り、朝まで安眠しちゃった。

 朝、別れの時、楊は坊主にこう伝えた。
 「この家、大きなメリットがある!いつか帰り道、俺はまた泊まるので、けっして他のヤツに貸しちゃダメだよ!」

 その後、殷は滄州に住む友人王 友三(オウ・ユウサン)にこう伝えた。「まさか縊死した幽霊を犯す者がいるとはね。さすが横虎だ」

<了>


出典:紀 昀(紀 暁嵐) (1798). 閱微草堂筆記 巻20 灤陽続録二
参照:https://zh.wikisource.org/zh-hant/閱微草堂筆記/卷20
翻訳許可:パブリックドメイン・許可不要


後書き:
 この前、日本の怪談を翻訳して台湾の掲示板にアップしました。そして、また台湾の皆さんからのコメントを翻訳し、原作の先生と共有しました。そこで、この話をネタにしたレスがよく見られるので、ついでに翻訳してみました。面白くて皆さんにもシェアしたいと思います。

 ところで、「閱微草堂筆記」とは、清国(古代中国)の志怪小説であります。原作者である紀 昀が著した五つの短編小説集、合計24巻をまとめた総集であります。

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