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音楽と脳③

「熟練の技がなければ、霊感などは風にそよぐ葦(あし)にすぎない。」 by ヨハネス・ブラームス


前回の音楽と脳②では、音楽を聴いた時の脳の処理領域についてお話ししました。今回は、脳領域と訓練についてのお話です。

ハノーバー音楽演劇大学の研究所では、音楽的トレーニングや、「聴音養成訓練」を受けた時の脳内の変化を研究しています。まずは脳電図研究室での実験をご紹介します。

32人の音大生に140の長和音、短和音、増和音、減和音をバラバラの順序で2秒間ずつ聴かせた。各和音と和音との間に2秒間の静寂を挟んで”脳内聴音”の時間とした。

30分のセッションの後、2グループに分け、一つのグループにはカセットテープを使って標準的な聴音養成訓練を受けさせた。もう一方のグループには短編小説を読ませた。

その後、被験者全員に先ほどと同じ和音を一回めとは違う順序で聴かせた。短編小説を読んでいたグループは、1回目に和音を聴いた時に左右両半球の前頭野と側頭野が活性化したものの、その直後からこの活性が徐々に鈍っていった。

それに対し、聴音養成訓練を受けたグループは、2回目の聴音で素早く和音を認識できた他、感覚認知と運動認知を統合する脳の中枢部がより活発に働いていた。聴音の訓練を、ピアノの鍵盤に指を置き、弾くことを思い浮かべながら和音を聞くことで、感覚と運動が脳の中で連携したと考えられる。

また、他の実験では、アマチュアの音楽家に簡単な曲をただ聴かせる場合と、消音したピアノで指を動かしながら聴かせ、両方にその曲の練習期間を設けました。すると、消音ピアノで”演奏”しながら聴音した方の脳は、感覚運動野が活性化するようになり、プロのピアニストの脳の活動と似たものになったという結果が出ています。

楽器を演奏する場合には、音楽は運動とも言えますし、楽譜を読む場合には、記号を読み取る際に頭の中で音楽を思い描いて記憶することができます。熟練された音楽家の脳では、実に多様な方法で脳内に表現されていることがわかります。

さらに、音楽が誘発する感情については、大脳辺縁系が関わってきます。結局、脳がどのように音楽を処理するかは、音楽の体験の仕方などによって人それぞれで異なるということです。脳の領域も多岐にわたるので、単なる音以上のものとして認識しています。

音楽と脳について3回にわたってお話ししましたが、研究はまだ始まったばかりです。わかったことは、一人一人の脳がユニークな音楽中枢であり、脳の構造は新しい状況に素早く適応し、変化していくということ。研究余地の可能性も無限に広がることでしょう。

参考文献
How many Music Centers Are In Your Brain? / Eckart O. Altenmuller
The Cognitive Neuroscience of Music/ Oxford University Press 





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