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【伊・コロナ記録メモ】 ワクチンキャンペーン2021年上半期②

2021年1月〜4月頃のヨーロッパは、

● 英国変異種が猛威、ロックダウンのままイースター(4月上旬)
● ヨーロッパ13国でAZワクチンの使用一時ストップ(3月中旬)や、供給量不足でキャンペーン捗らず

などとボロボロだった印象。英国だけはワクチン接種が順調にすすみ、3月30日にはロンドンでのコロナ死亡者が0人に。

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州対抗ワクチン接種競争?

3月31日時点、80才以上で少なくとも1回のワクチンを接種した人の割合、EU加盟国別に↓

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イタリアは57%と、ほぼ真ん中。

5月ごろから、州によるワクチン政策の違いが出始め、スピードも加速していった印象。

州ごとの接種率ランキングもよく見るように。

こういった空気の中、私も実際、「エミリアロマーニャ州は結構はやいほうだよね」といった会話を何回かしました。

そして接種をさらに加速させるための切り札「Opnen Day」が始まったのも、たしか5月中旬ごろだった気がします。


会場に行けば誰でも接種できる「Open Day」

”州対抗ワクチン競争”は、ローマのあるラツィオ州がかなり頑張りました。

日にち限定で、大型接種会場に行けば基本的に誰でも接種してもらえる「Open Day」を積極的に取り入れていきました

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例えば、↑この「Open Day」はおそらく35歳以上なら誰でも予約なしで接種できるというもの。

なぜこんなことが可能かというと、不人気で余っているAZワクチンを活用したからです。

しかし、AZワクチンについては欧州でかなり紆余曲折がありました。


二転三転したAZワクチン使用

AZワクチン使用についての紆余曲折とは、

❶ 3月中旬に、ヨーロッパ13国で使用一時ストップ騒動

❷ドイツでは接種対象年齢を当初は65歳未満、のちに60歳以上と真逆に変更。

特に❷の件については「そんなことってある⁈」と思いました。そして、欧州のワクチンキャンペーン自体が壮大な治験なのだ、と感じさせられました。

私も、もしAZワクチンだったらどうしよう? 拒否しようか? そうしたらどこまで先送りされるのだろう? などと自分の年齢層ではまだ予約も始まっていない頃から考えていました。

イタリアでは基本的にワクチンの種類は選べず、直前までワクチンの種類を知らされないという自治体もあります。

多くの人が私と同じように「できればAZよりファイザーを打ちたい」と思っているだろう、、と思っていました。

ところが。


どのワクチンでもいいから早く接種してバカンスへGO

「一度ストップまでかかったAZワクチンより、できればファイザーを打ちたい」

当時私はこう思っており、当然みんなも同じように考えているだろうと思いました。

ところが、そうでもなかったのです。

「どの種類でもいいからとにかく早く打ちたい」という人が私のまわりにも結構いました。

一つの理由は、AZワクチンで起こった血栓症の副反応にしても確率からすれば僅かなもので心配には及ばない、というもの。

もう一つの理由が「バカンス第一」。

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EUでのワクチンパスポート導入はたしか5月頃にはもう決定済みで、これがないと夏休みに自由に旅行できなくなるかも?という懸念をみんなが持ち始めていました。

つまり、ワクチンの種類にこだわり接種が遅れバカンスに支障をきたすぐらいならAZでもいいから早く打ちたい。

夏バカンスがイタリア人(おそらく欧州人全般)にとってどれほど重要な意味を持っているか、イメージはあると思いますが、それはもう想像しきれないほどのものです。

すでに5月頃から、みんなの頭の中の大半をバカンスが占めるようになります。

そんな5月の空気が「Open Day(予約なしで接種可能)」を後押ししました。「あ、今週末にワクチン打てちゃうんだ。それならさっさと済ませてバカンスに突き進もう」という感じで足を運ぶのでしょう。

各地で「Open Day」が催されるようになりました。

が、エミリアロマーニャ州(ボローニャ州都)は、もともと積極的でなく、州知事も「我々はOpenDayを開催する予定はない」と5月頃には発言していたと記憶。

しかし各地で「Open Day」がとりわけ若者の動員に成功しているのをみて、無視できなくなったものと思われます。他州に遅れをとりながらも6月2日に第一回目をボローニャ見本市会場で開催しました。

私が日本語を教えている一人にボローニャの学生がいるのですが、いつものようにオンラインレッスンを始めようとすると、普段と違う場所にいるようだったので「どこにいるの?」と聞くと、海の近くの別荘と言います。

なんでも、6月2日のボローニャ「Open Day(1回の接種で済むジョンソン&ジョンソン使用)」で接種を済ませ、その2日後にはもう別荘へ。「これでやっと心おきなくバカンスを楽しめる」。

この「Open Day」は事前予約なしだったので、前日夜から泊まり込みで並んだそうです。上記の動画でもその様子がわかります。


18歳の女の子が亡くなる

5月25日にジェノヴァで行われた「Open Day」で、AZワクチンを接種した18歳の女の子が、その16日後に血栓症のため亡くなりました。


2月、3月頃に優先接種の対象だった先生の中にも、AZワクチン接種後に血栓症で亡くなった方が結構いました。

「パレルモの46歳教師、血栓症で死亡。AZワクチン接種10日後」(3月28日)

「AZワクチン接種後に血栓症。メッシーナ55歳教師死亡」(3月31日)


しかし、18歳の女の子が亡くなったとなると社会的なショック、インパクトが違います。彼女の実名、写真までが全国紙1面に掲載されて報道。

即座に、AZワクチンの59才以下への使用が禁止になりました(6月11日)

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話は逸れますが、IT分野などの個人情報管理にはかなり厳しいヨーロッパですが、こういう場合のプライバシーは全く無視されています。ネットで拡散されたというレベルでなく、実名と顔写真を全国紙1面に堂々と掲載していました(上記の顔写真は自分で塗りつぶしました)

これ以降、イタリアでのワクチンは、実質的にファイザーかモデルナだけになりました。5月頃からジョンソン&ジョンソンも使われ始めていたのですが、供給量が少ないのか、だんだん聞かなくなりました


AZワクチンを自ら接種したドラギ首相、その一方保健省トップは

AZワクチンは、先述のとおり、3月にヨーロッパ13か国で一時使用ストップがかかり、欧州医薬品庁による再調査で「安全かつ有効」と結論づけられ、使用再開になったという経緯があります。

この後、デンマークなどはAZワクチン全面使用禁止にしているわけで(4月14日)、もっと慎重になる選択肢だってあったはずです。

しかし、イタリア政府は「欧州医薬品庁のお墨付き」を理由に、安心安全を言い続けてきました。

その「安全性」を国民に示すために実際にAZワクチンを接種した伊ドラギ首相は立派だと思います(独メルケル首相も)。これなら説得力があります。

しかし、ロベルト・スペランツァ保健相↓などは「効果的かつ安全」と言い続けながらも自分はAZワクチンを接種していません。

州対抗のワクチン競争みたいになってしまったことにも問題がありました。

接種スピードばかりが優先された結果、余ったAZワクチンを「Open Day」に投入するという流れができてしまい、10代の若者まで参加可能の「Open Day」もあったわけです。

せめて「Open Day」には年齢制限を設けるべきでした。

コロナ対策にしても、ワクチンキャンペーンにしても、その国ごとの問題がまるであぶり出されるかのようで本当に考えさせられます。

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