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#週一文庫「コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス) 」旦部幸博

一番おもしろかったのはP101-103
第4章 コーヒーの「おいしさ」 ところ変われば「味ことば」も変わる

例えばイギリスの一般消費者では、味は「苦味」、香りは「煙っぽい」「焦げた」「チョコレート」の順に、用いる頻度が高かったという報告があります。日本より香りの表現が具体的ですが、じつは「香ばしい」という言葉は日本と韓国にある(香ばしい=グスハン)程度で、大半の言語にはぴったり当てはまる訳語がありません。その分、欧米では特にコーヒーの香りをいろいろなものに喩える表現が増えるようです。逆に言えば、日本語では「香ばしい」の一言で伝えられるから、それ意外の表現が少ないのかもしれません。また「まろやかな苦味」「すっきりした酸味」など、味質を就職した表現の多さは日本特有で、欧米では味でも香りと同様に比喩的な表現が目立ちます。(中略)
また洋の東西を問わず、コーヒーの香味鑑定(カッピング)を行うプロたちは一般消費者より、はるかに語彙が豊富です。

味言葉ってたぶんきっと難しい

食レポするのってすごく難しいのだろうなあと、これまでテレビ観ながら思っていました。大概のレポートは「ん~! 香ばしいいい香り~! 見てくださいこの美味しそうな焼き加減! じゃあいただきます! ん~! 外はさっくり、中をもちもちしていて、何とも言えないたまらない食感です!」みたいな食レポな気がしています。

ま、別に視聴者側からしても、そんな文学的な表現を求めているわけでもないのだろうから、あれはあれでよいのかと思うのだけれど、じぶんゴトとなると そうも言っていられない。

たまにしか食べられない数千~数万円の料理を目の前にして、そして実際に口にする瞬間には、「それがどんな味だったのか」「どんな風に美味しいのか」「誰々に薦めるには何と説明してあげればよいのか」「同じジャンルの料理と比べて、なぜそのお店の味がよりよいと言えるのか」そういったことを表現することができないと、モッタイナイと思ってしまう。

だから、最近そんなことを書き留めておこうと試みたのだけれど、いや、これが実に難しい。

個人的な感覚としては、色に喩えるのが最も感覚に近いものを引き出せるのだけれど、それを人に伝えるときに用いてしまうと、その食べ物がそういう色であったかのように聞こえてしまう。

かといって、わかりやすい「甘い」だ「辛い」だ、「まろやか」だ「コクがある」だ、といったような一般的な味覚に関する言語表現も、個人的にはしっくりこない。せめて、「〇〇のように甘い」といった風に、何か別の食べ物/飲み物を引き合いに出しながら、味の想像を助ける表現をするよう心がけたいと思ってはいます。

でも、ここに書かれていたイギリス式の「チョコレートのような」とか「フルーティな」とかそういった風に感じたことはないし、日本式の「キレがある」とか「シャープな」とかそういった風に感じたこともない。だからといって「何ともいえない」とか「得も言われぬ」とかのような表現に逃げるのは好かない。

じぶんの感じた味を表現する「味言葉」を見つけ出すのってすごく難しい。

この本自体では、科学成分の細かさにまで深掘りして表現されているけれど、そのくらいまでにじぶんが拘れる表現というものを見つけていくことができれば、それはきっと、とてもおもしろいことなのだと思う。



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