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#週一文庫

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毎週1冊の文庫もしくは新書を読み、その本の中でじぶんが一番おもしろいと思ったところを引用しながら、「なぜおもしろいと思ったのか?」を踏み込んで解説。 いわゆる書評ともちょっと違う…
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#歴史

吉原はこんな所でございました 廓の女たちの昭和史 (ちくま文庫) 福田 利子

この本は、吉原の地にあった料亭「松葉屋」の女将 福田利子さんが、吉原という地がどういったところであったのかを、実体験や文献を頼りに描き上げてくださる一冊です。 吉原とて、貸座敷のみにあらず一番おもしろかったのは、P76-78 二章 私が松葉屋に来たころ 吉原の仕組み 三業組織と申しますのは、貸座敷、引手茶屋、芸者屋の三つの業種のことで、この三つの業種に分かれていることによって、また別の見方をすれば、この三つの業種が一つになっていることで、吉原遊廓の中に格式が生まれていたと

ラーメンの誕生 (ちくま学芸文庫)岡田 哲

この本は、ラーメンが今のかたちに至るまでの歴史を、江戸時代やさらにもっと昔、ときには中国まで文献を辿りながら、明らかにしていく一冊です。 ラーメンって和食?一番面白かったのは、P140 第五章「ラーメンの魅力を探る」 複合されたラーメンのルーツ これらの情報を総合すると、第二次世界大戦の後に、大陸からの引揚者がもたらした中国北部のめんのスタイルに、中国の各地の麺料理の特徴が混ざり合い、さらに日本人の和食化への努力の繰り返しの結果が、今日のラーメンのルーツを形成している。こ

#週一文庫「現代語縮訳 特命全権大使 米欧回覧実記 」(角川ソフィア文庫)久米 邦武、 大久保 喬樹

今週の一冊は、米欧回覧実記 明治維新真っ只中の1871年に、岩倉具視をはじめとする使節団が、アメリカ~ヨーロッパへと視察に渡った際の随行記です。 一番おもしろかったのは、P440-443 第九十巻 欧州地理・運輸総論 陸路と海路の連携 欧州各国の文明が進んだのは国民の利益を図ろうと競って励んだ積み重ねの結果であり、その中でも自然条件の利用に努力してきたことの成果は今回の視察において最も注目すべき点の多いところだった。沿岸部では海からの利益を得る。山間部では陸から利益を得

#週一文庫「食品サンプルの誕生」 (ちくま文庫)野瀬 泰申

一番おもしろかったのは、P27-28商売は日毎に順調に進んでいった。制作する一方から捌けていくのである。食堂にはかつて料理模型の外交員から教わった貸付という方法を採った。ろうは熱や直射日光に弱い。いつかは形をくずしたり変色もする。日を決めて出張して行き掃除や修繕、着色を施すと製品はまた新しくよみがえる(中略) 現在もサンプルは販売ではなく貸し付けが主流である。この商法は瀧三が本格的に採用して今日に至っているが、発案者は瀧三ではない。瀧三に先駆けてのサンプルの仕事を始め、問題の