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ありがとう、ツルネ。ありがとう、京アニ。

振り返るに、充実の秋冬シーズンであった。

アニメである。
弓道に取り組む男子高校生たちの青春を描いたTVアニメ「ツルネ」2期が2023年1月~3月のいわゆる「冬アニメ」として放送され、リアタイできない民としてAmazon PrimeのPrime Videoにて更新されるたび心待ちにしていた。

近年観てきたものがPSYCHO-PASS、ジョジョ、進撃、ブルーロック、呪術廻戦、チェンソーマン、ニーアオートマタ、とダークな世界観・エグめ・ゴリゴリ系だったため(いやそれも好きなんですが)、久しぶりの京都アニメーション(以下、京アニ)の繊細な作画や、きらめく男子高校生たちの心理描写に心が洗われた。語彙を失うことを許せば、考察とかようわからんけど、ただただ尊い。
「ep11.息合う場所」と「ep12.繋がりの一射」に関しては、ほぼずっと泣いていた。

けして大きな事件・事故が起こるわけでもなく、弓道の県大会~地方大会~全国大会に至るまでの過程を、どちらかというと淡々と描いていると思う。
京アニといえば「Free!」という世代?の私は、序盤物足りなく感じてもいた。しかし、急激ではないけれども確実に進むキャラクターの成長や、キャラ間における関係性の変化、胸がしめつけられるような美しい作画と音楽、ツルネは私を毎週美しい空間に導いてくれた。

個人的には主人公の湊くんをめぐって、静弥くん(寄り添い支える枠)、愁くん(煽り育てる枠)、マサさん(見守り導く枠)、とスパダリが3人も揃っている構図が興味深い。できることなら、湊くんの弓具となって成り行きを見守りたい。
スパダリ:スーパーダーリン。欠点が無く、対象に狂信的な愛を見せる人のこと。良くも悪くもネジが飛んでいる。

また、1期では思わず「夜道では背後に気をつけろよ小僧。」と言いたくなるほど感じの悪かったライバル校の双子が、2期では人格改造したんかっていうくらいキュートになっている点や、ダークホースとして現れる辻峰高校のスタートアップだからこそ味わえる苦悩や喜びにも胸を打たれた。

ツルネという作品の美しさもさることながら、弓道という競技・武道の美しさにも魅入られた。
弓道の美しさは「今、ここ」にフォーカスすることをシビアに求められることから現れているのではないかと思う。キャラクター達は、自分の引いた弓が当たっても外れても、喜んだり悔しがったりする様子を見せない。勝ちたい、的に当てたい、という欲を乗り越えて刹那の一瞬一瞬を味わっている彼らの姿は、とても美しい。

ヨガレッスンでも頻繁に使われる、
「今、ここ」に集中するということ。
シンプルだけれど、簡単ではない。
私たちはどうしてかいつも、過去に起きたこと・未来に起こることに囚われる。自分のことを考えているようでいて、他人の言動・持ち物ばかりが気になっている。
そうして「今、ここ、この瞬間」を楽しむことをせず、気がつけばただ時間ばかりが過ぎている。
それはたぶん、不幸なことなのだろう。

ヨガのアーサナ(ポーズ)や瞑想の練習中や、ヨガレッスンをしているとき、ごくたまに集中していて一瞬がすごく長く感じるようなときがある。どうやってそこに至っているのか、末端ヨギである私には上手く説明が出来ないのだけれど、たぶんそれが「今、ここ」に集中している、ということなのだと、現状理解している。

毎回完璧なタイミングで流れるツルネのエンディング主題歌「ヒトミナカ」も儚い一瞬の美しさを表現していて、作品の良さを際立たせていた。

このあまりにも綺麗に輝く瞳中  映る景色すべて輝いて見えたから

ヒトミナカ 丁(てい)


最後に、

あの陰惨な事件を乗り越えて、今なお美しい作品を生み出し続ける京都アニメーションの皆様に、心から感謝を伝えたい。
暴力では、人から創作を、情熱を、愛を奪うことなど出来ない、というパワーを見せていただきました。

ありがとう、京アニ。

【作品情報】
2018年10月~1期ツルネ-風舞高校弓道部‐
2022年8月~劇場版ツルネ‐はじまりの一射‐-
2023年1月~2期ツルネ‐つながりの一射‐
原作 綾野ことこ KAエスマ文庫  制作 京都アニメーション

(撮影協力)香川県立武道館 弓道場


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