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「きっぷのうた」をとおして

言いたいことは大抵作品に落とし込めばいいというのが普段の基本的な指針ではあるものの、社会性に欠損がある分、出力ばかりに傾倒せず、もう少し入力の共有に働きかけるということをしたほうがいいんじゃないかと思い、投稿します。






きっぷのうた

今年の三月に「きっぷのうた」というEPをリリースしました。
オリジナル作品の公開を始めた十七歳当時の作品を全てリメイクして収録しています。
昔から知ってくれている方には懐かしがってもらえたかわかりませんが、はじめましての方でも何か拾ってもらえたら幸いです。




リメイク前の原作は動画サイト上でしか公開していませんでしたが、リメイクするにあたって、今後を見据えれば遅かれ早かれ正式な商用リリースも考えないわけにはいかず、どうせならまとめてEPにしてしまおうと画策し、それでも三曲ではちょっと寂しいということで、新たに一曲書き下ろして解き放った次第です。




すこし話は逸れますが、2年ほど前まで商用リリースしていた音源では数箇所見直しが必要な点に気づき、全て取り下げました。
そこからは暗い天井を見つめる時間が増え、それまで企てていた制作も暗礁に乗り上げ、ひとまず療養も兼ねて安静に過ごしながら、昨年は諸々を再構築していました。




どうせならけじめとして、来た道を辿りつつまた改めてスタートを切ろうと思い立ち、くたばるよりはいいからやり直してみよう、という感じでふらふらとデスクに向かうのでした。




そしてEP制作に手を付け始めたのが昨年のちょうど今頃で、気付けばそこから一年ほど経っていました。
映像に関しては完全リメイクしたので随分かかってしまいましたが、少なくとも十七歳の自分は喜んでくれている気がします。
右も左もわからず作っていたものがおよそ基点となっているので、リメイクしたところで多少垢ぬけた程度に過ぎず、人前で堂々と聴かせられる自信もそんなにありませんが、"どこまでもこぢんまりとしていてほしい" と "そんなことばかりいってられない"とのせめぎ合いの果てに付いた折り合いが「きっぷのうた」でした。




曲と映像

01 - ねぼけうた
イントロのフレーズだけは元々昔からあったので、他の三曲と一緒に収録することに特に抵抗も無く、一曲に仕上げるのも割とスムーズでした。


02 - シオンの花束

晩夏の曲です。一曲全体をとおしてリメイク前とあまり変わっていません。映像は、絵を含めて一週間もしないうちに出来上がってしまいましたが、いい感じに落ち着いたと思います。


03 - 教師Aの顛末

音がシンプルな分、絵の構図もあまり難しいことを考えず描こうというつもりではいましたが、線画をアナログで描いていたり、完全なループではなかったり、しっかり音に合わせたり、なにより4Kで書き出すなどしているので、結構時間がかかってしまいました。ちゃんと終わってよかった。


04 - Bonam Noctem

映像は'23年と'24年を跨ぐ年末年始頃から、遅くても春までには決着をつけておきたくてなんとか一旦完成させて投稿しましたが、作画ミスやプラットフォーム側での処理が上手くいかずに結局何度か修正。傍から見ればほとんど気にならないレベルではあるんですけども。密やかなこだわりとしては、木の線画を(たしか)全て複製せずに描いているところです。




おわりに

全然楽しくなかった高校時代を今回の制作中に何度も思い返していました。
当時は携えられていた付け焼刃の演技力もいつしか底をつき、今の自分では開けることのできなくなった扉がいくつも残ってしまったけれど、それでも未だポケットで擦れあう数少ない鍵のひとつが、自分の場合は音楽だったんだなと、ひしと感じています。




その当時から思い入れのあったミュージシャンが最近亡くなり、特にあの頃の音楽を聴き返しては、自分がそこで一体何を受け取ってきたのかを反芻していました。
今はデジタルで作品を残せば、肉体的に死んでもコンテンツとして生き続けていくことはできるし、それを今自分がやっていることの名分としていた節もあるにはあるのですが、これを書きながらも遣る瀬無い気持ちが残っている以上、やはり肉体とコンテンツは所詮まったく別だなとも思います。
だからこそ、もう二度と再生できない、決して元に戻らないというのは、それでも尚目の前にある対象や、今度は自らの手で新しく作り上げることができる対象を教えてくれているような気がしました。




ひとまず「きっぷのうた」はこのへんで区切りです。
今もまた制作に取り組んでいます。
今後もご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、何卒引き続きよろしくお願いいたします。