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2022年に作った曲まとめ(後編)

このnoteはTOKYO6キャラクターのファン仲間たちによるアドベントカレンダー企画「SynthVとかTOKYO6とか Advent Calendar 2022」の担当回です。

2022年に作った曲まとめ(前編)の続きとして、後編では7月に投稿した楽曲から振り返っていきます。

ドッカイリョク feat.夏色花梨

7月6日投稿
Q:彼女がいる小春先輩が彼女のために歌を作るから感想が欲しいと他の女のことを綴った曲の弾き語りをその女より先に聞かされる夏色花梨の心情を答えよ。
A:●ねばーか

フレーバーテキストがなげえ。

完全に概念先行で生まれた曲です。
全ての元凶はこのツイートです。

このキレッキレな概念に強く頭を殴られて(n回目)、イントロのアコギのアルペジオがすぐに浮かびました。そこから一気にコード進行と構成を組み立て、メロディの母体も3月の時点である程度完成していました。
3月は翌月に花梨のデビュー曲『レディ・トリックスター』の準備を進めていたこともあり、少し寝かせることにしましたが、その間も某東京拘置所の面々の概念を浴びながらこの曲も熟成していったのだと思います。

5月になり、そろそろこの曲も進めなければというところで、概念を展開した張本人のあるぱかの遊騎さんに責任を取ってイラストを描いていただかなければならないと思い、しおばな祭でご挨拶した後日にデモと一緒にぶん投げました。こいつ依頼する時デモで殴ればいいと思ってるだろ。

雨の曲であったため6月の投稿を検討していたものの、制作スケジュールの都合上7月にずらすこととし、前編で振り返った『ショーウインドウ・ガール』を6月の曲として制作した経緯があります。

サウンド面では、概念先行で生えたアコギのアルペジオをベースに、雨粒が落ちて弾けるようなイメージを狙ってリリースカットピアノをフィーチャーすることにしました。リリカってもう古いらしいですね。流行こわ。
冒頭と最後に雨のSEを入れている点もこだわりの一つです。全体的に音数が少ないので曲としての厚みが弱くならないか心配でしたが、余白たっぷりで結果的に概念の火力が増したので結果オーライだと思います。

恋日和 feat.夏色花梨

8月14日投稿
『この街で、恋をする。』

第一回FMおたるコラボ!オリジナル楽曲制作コンテスト」への応募作で、大変光栄なことにAHS賞を受賞した楽曲です。

仕事の関係で数カ月間札幌に住んでいた頃の休日、ふらっと出かけて歩き回った小樽の街並みを思い返し、明治~大正期の面影を残すレトロな景色と、そこで青春過ごす夏色花梨という少女の姿から、「大正浪漫」というキーワードをすぐに連想し楽曲全体の構想が浮かびました。

大正浪漫とは何ぞやとBGM集等を漁って考えながら、8分の6拍子の軽快なリズムにバンドネオンや少しひょうきんなブラス、あえてチープに仕上げたストリングスなどなどを混ぜ合わせ、どこかレトロな世界観を目指しました。

イラストについては、大正浪漫から安直にはいからさんを連想し、袴を着た夏色花梨を『レディ・トリックスター』以来である犬のぬけがらさんに描いていただきました。来年の小樽スタンプラリーの新設スポットでもある小樽貴賓館で花梨の袴姿が見れるということが後の生放送で発表されましたが、私を予言者と呼んでくれ。

歌詞についてはAHS様からの講評コメントでも触れていただきましたが、小樽の歴史や街並みをしっかり落とし込みつつ、「この街で、恋をする。」というコンセプトに合わせてそこで青春を過ごす花梨の実像を捉えられるように心がけました。なんか旅行会社みたいなコピーだな

小樽を知っていればおっ、と思えるようなフレーズも複数仕込んでいますが、一つ一つ解説するのも野暮なので皆さんも小樽スタンプラリーに参加して現地でこの曲を聴きながら探してみてはいかがでしょうか。自分も1月に約6年振りに小樽に行く予定です。冬の北海道自体が初めてなので、色々気を付けることがあればぜひ教えてください。

クラテリス feat.夏色花梨

9月9日投稿
『どうしようもない世界でも、君がいたから。』

正直この曲についてだけで余裕で記事1本かけるレベルなんですが、後に曲がめちゃくちゃつっかえてるのでほどほどにします。

9月9日、夏色花梨の初めての誕生日に投稿した楽曲です。声の良さ、何よりもキャラクターそのものに惚れ込んだ彼女へ最高の曲をプレゼントしたい一心で、当時の全てを出し切って制作しました。仮に「お前の代表曲は何だ」と聞かれたら、食い気味にこの曲を挙げることでしょう。

これまで振り返ってきた楽曲を生み出していく怒涛の日々に、周囲のTOKYO6キャラクターを愛用するボカロP達が次々と様々な形で成長していく中、自分だけずっと取り残されているように感じていました(今もですが)。

何度も創作を辞めようと思いながらも、花梨やSynthVの歌の可能性に支えられて、もう少しだけ頑張ってみよう、と踏みとどまりながら曲を作り続けています。そうした思いをダイレクトにぶつけたからか、歌詞に共感したという声を複数いただいており、自分自身とても救われたように感じます。

君が好きだと言ってくれた僕を 今なら胸を張って自分に誇れるから

きっくす『クラテリス feat.夏色花梨』

この落ちサビの歌詞、特に創作活動をしている方には何か感じるものがあるのではないでしょうか。自身の創作のモチベーションのひとつに、「自分が好きだと思ったものに対しての共感が欲しい」というところがあります。
みんな推しは推せるうちに推そうな。

『クラテリス』という曲名は、9月9日の誕生星であるコップ座β星の英名である『β Crateris』に由来しています。「意見を曲げない自我」という星言葉があり、反転して「自分がどうあろうと関係なく、世界は回り続ける」というニュアンスも含みます。花梨と一緒にいることで少しは前向きになれた気がしているので、そうした強い力を持つ彼女は自分にとっての一番星なんだと思います。まぁクラテリスって4.5等星なんですけどね。

サウンド面では、2022年時点の自身の曲で最速のBPM172(おっそ)で、ドライブするギターにピアノやストリングスの美しい旋律が絡む古のボカロ名曲風のオケを意識しました。こいつsupercellとか好きそう。
Aメジャーのキラキラ感を基本にしつつ、A~Bメロは違った雰囲気での明るさを出したいと思い、Aメジャー⇒Aマイナーへの転調をフックに、平行調であるCメジャーと強制的に解釈する手法を採用しています。書いててお前何言ってんのって思ったけど、とりあえず3度上の転調はいいぞ。

イラストについては前作の『恋日和』からの流れで引き続き犬のぬけがらさんにお願いしており、専属という訳ではありませんが本格的に自分の曲のイメージとして定着してきた頃だと思います。動画は初めてNekuruさんにご依頼させていただきましたが、CG等も手掛けておられることもあり、お渡しした素材以上に豪華で美しい映像に仕上げていただきました。

有難いことに、9/22のニコニコDAILY_TOPICSに取り上げていただいたことで色々な方に触れていただき、自身初の1万再生を達成する等、名実ともに今の自分の代表曲となりました。逆に言うと、その最高を更新できていないということはまだまだ力不足であるので、これからも精進したいと思います。

置き去りの花 feat.夏色花梨

10月8日投稿
『縋る手はもう、届かなくて。』

ボカコレ2022秋 TOP100参加作品です。この曲もいわゆる概念先行でできた曲となります。
7月頃に藤堂茶路さんが描かれていた夏色花梨幼女化概念にハマった際、勝手にCeVIO AIトークでセリフを喋らせてキャッキャしていたところ、唐突に
「なにかに使えたら…」とDMで一枚絵が送られてきました(???)

その日の内にファーストインプレッションとして受信した概念を怪文書にしたためて茶路さんに投げつけ、その5日後にはメロと編曲ができました。
なお、このイラストのファイル名は「きっくすしね.psd」でした。しんだ。

この頃、10月発売予定の花隈千冬の一斉投稿に着手しており、タイミング的にボカコレの方は注力ができない覚悟をしており、度々「ボカコレ?行けたら行くわ~」というネイティブ関西人ムーブを決め込んでいました。
しかし、千冬曲の方針が固まった後、やはり参加したいという思いから寝かせていたこの曲に着手し、開催一週間前くらいに告知ビジュアルとともにおもむろに参加を表明した記憶があります。

この曲の位置づけとして、『不香の花』に次ぐ『○○の花』シリーズと銘打った六花一味3名の失恋ソングの一つになります。大人になることへの不安から抜け出せないまま、先に大人になってしまう誰かに置いて行かれてしまうことの悲しみを幼女の姿で歌ってもらいました。小樽組にはなぜこうも失恋が似合うのだろうか。
ちなみに千冬の『○○の花』曲についても既に構想し始めているので、遠くない将来に発表できるといいですね。

曲調の割にかなり重たいベースやドラムの音がキモとなっているのですが、低域の処理がうまくいかず直前までマスタリングで悩んでいたところ、前月に限界コンピを生やしたボカスト京都でご挨拶させていただいたたくしPさんにご協力いただき、何とか完成に漕ぎつけることができました。

賞レースとしてのボカコレでの結果は、行けたら行くわ勢だったので当然ながらさっぱりだったのですが、それでもこれまでになく色々な方に自分の曲を聴いていただけた良い機会になったと思います。

ひらりしあわせ feat.花隈千冬

10月19日投稿
『しあわせくれて、ありがとう。』

花隈千冬のクラウドファンディング支援者一斉投稿への参加作です。
この曲は本当に難産でした。

千冬の声のイメージについては奥野さんの歌や開発中バージョンの『ヒメタルネ』等から想定していたのですが、いざ自分が作ると考えた時、どういった曲が合うのか、ずっと悩ましく思っていました。ボカロP仲間との話の中では「あの女なんもわからん」って連呼していたと思います。

悩みに悩んだ結果、少し落ち着いた柔らかいポップス路線に決めました。
具体的なリファレンスとして、麻倉ももさんの『彩色硝子』をかなり参考としています。2020年以降アイドル系ポップからシフトした現在の大人可愛い路線が好きで、これは千冬にも合うのでは……と考えた次第です。

自分が唯一演奏できる楽器はギターなのですが、最近の曲では何故かピアノが土台になっていることが多いです。昔にピアノを習っており一向に上達しないままギターに転向したという過去から、五線譜の読み方やコードの基本についてはピアノが下地になっているということがあるかもしれませんが。
ただしメロディとコードはギターで作っているので、その辺りのバランス感でうまく自分の作風を固めたいですね。

ちなみに、よく聞かれるのですが、ピアノ音源は一貫してxln audioのAddictive Keys Studio Grandを使用しています。エレピは時によりけりですがLounge Lizardを使うことが多いです。

イラスト・動画は『クラテリス』と同じメンバーでお願いしています。サビ等で使用しているワンピース姿の千冬の背景イラストについては窓の配置等何度も調整していただき、結果幸せをかみしめる開放的な千冬の表現に繋がったと思います。書斎の背景イラストの、ぬけがらさんのアイデアで入れてくださった平積みにされた本の山の上にちょこんと座るラークパッチがお気に入りです。

雪空に溶けて feat.小春六花

12月2日投稿
『雪降る季節に、会いに行くよ。』

「ゆっくりボカロ曲投稿祭 2022冬」参加曲です。
完パケまで実働18時間を切った過去最速の限界DTM作品となります。

本来、自身のオリジナル曲投稿に向けての制作は都合2か月程度かけて進行しています。イラストの依頼や動画を自分で仕上げる場合でも依頼する場合でもバッファを踏んでこれくらい見積もっています。
今回、イベント期間が12/2~4ということで12/6の「毎月6日はTOKYO6の日」に投稿する『君色レター』との並行作業は困難と判断し、残念ながら不参加の予定でした。

このツイートをした後、「いや~でもゆっくりな曲って自分の得意分野だしなぁ……結構参加する人多いみたいだしなんかもったいないなぁ……ちょっとだけ、ちょっとだけ……」とおもむろにDAWを開いた結果、なんか割とキラーフレーズが浮かんでしまい後に退けなくなりました。出張帰りの疲れた体に鞭打ち、その日の深夜にメロとコードまでなんとか仕上げました。
翌日11/30の仕事帰りにオケの打ち込みを仕上げて一部作詞に着手、翌12/1の夜に歌詞を仕上げて歌を打ち込み、ミックス・マスタリングまで駆け抜けて12/1の23:50頃に音源が完成しました。

この即堕ち2コマっぷりである。

イベントのスタートは12/2の0:00だったので動画を作ることを考慮すると遅刻は確定。もういっそ落ち着いてちゃんと歌詞を反映したMVにしようと決め、イラストはノーコピーライトガールよりお借りし、1時間程度で仕上げて遅ればせながら投稿祭に参加することができました。

オケについてはギターを録音して処理している時間はないと判断し、ピアノを主役に据えて乗り切ることにしました。1サビ後の間奏からオケが入ってくるエモい展開を仕掛け、さらにラスサビで半音転調させることで最高潮に持っていく、という形で楽器の少なさから単調にならないような工夫をひねり出しています。本当はバイオリンとかCCをもう少し追い込んで抑揚をつけなければいけないのですが、さすがにそれは厳しい……

この楽曲から、先日大幅なアップデートがなされたSynthesizer V Proの1.8版を使用しました。同時に刷新された小春六花の歌が段違いに進化しており、特にボーカルスタイルのBallade値がこうした小編成のしっとりした演奏にバッチリハマる、大人びた声に仕上げてくれました。
前述の通りの限界っぷりだったので、基本となるパラメータの設定以外に能動的な調声は一切行っていません。AIリテイク機能によるピッチ・声色の調声ガチャのみで、全く破綻のないうえに一定のクオリティまで仕上げることができるのは本当に驚くばかりです。

君色レター feat.夏色花梨

12月6日投稿
『手紙を書く時は、君に夢中。』

2022年最後のオリジナル曲になります。
手紙を書いている時間は相手の事をずっと考えている時間であり、その思いが文字という形になっていく、という瞬間の喜びをテーマにしました。

たかぴぃさんの公式デモソング『イエナイコトバ』では、器用なのに実は素直になれない花梨の姿が描かれていましたが、そこから少しだけ成長した姿を感じられたら……という意味も込めて「言えないコトバ」という詞をオマージュとして入れています。

楽曲全体の仕上がりとしてはkoyori(電ポルP)さんのようなシンプルかつハートフルなミディアムテンポのポップスを目指して組み立てていきました。今のボカロ曲のトレンドとは言えませんが、個人的には癖なので追求していきたい方向性のひとつです。

ミックスの際、前述のSynthesizer V 1.8版で大幅に進化したボーカルをどう馴染ませるかの試行錯誤を重ねたのですが、まるで本物のボーカルを扱うかのようで、ますます技術の進化を感じました。
ブラックフライデーで入手した諸々のプラグインも投入しているので、少し過去の曲と比較して質感が変わっているかもしれません。

等身大の少女としての花梨のイメージから、『ショーウインドウ・ガール』以来のpiちょんさんにイラストをお願いし、ポップでかわいい花梨を描いていただきました。動画については初めてアフタさんに依頼させていただき、全体の構成等はほぼお任せしたのですが、文字・言葉をテーマとした曲にふさわしい歌詞をフィーチャーしたMVに仕上げていただきました。

まとめ

以上、前後編にわたって2022年に投稿したオリジナル曲を振り返ってきました。1年で合計13曲、月1曲以上のペースは恐らく一般的なボカロPとしては高頻度な部類かと思います。
自分の才能、センス、知名度では周りに追いつけないと焦りながらも試行し続け、それを通して界隈やコンテンツの盛り上がりに微力ながらでも貢献したいという思いで一年間走り抜けてきました。六花の発売から1年、花梨・千冬の発売という記念すべき年に、私も少しは爪痕を残せたでしょうか。

来年についてですが、2/4~6で開催される、自分も企画に参加しているSynthVの投稿祭「Synthesizer V Unofficial Festival 2023」で楽曲を発表できるよう準備中です。ボカロシーンのメインストリームでバチバチにやり合う人間ではないので、ほどほどに創作しつつ、たまにまた限界もやっているんだと思います。

他には、即売会等のイベント参加ができるように準備していきたいと考えています。M3やボーマス等の大型イベントはボカロPとしてはまだまだ弱小な自分には難しいので、よりTOKYO6キャラ等にフォーカスしたいわゆるボイチェビ系のオンリーイベント等を考えています。即売会で僕と握手!

それでは、来年もきっくすをよろしくお願いいたします。

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