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NFTを使った音楽の未来とは?NFTマーケットサービス「.mura」リリース記念対談【山口哲一×浅田祐介】

音楽×アートワークをテーマとしたNFTマーケットサービス「.mura」のリリースを目前に、Studio ENTRE代表・山口哲一と、音楽プロデューサー・「.mura」に作品出品予定の浅田祐介の対談をお届けします。

アーティストとして、「.mura」へ出品も予定している浅田氏。NFTやブロックチェーンの登場によって、音楽業界はどう変化していくのか。NFTと音楽の関係をアーティスト目線からお話していただきました。

山口哲一
(Studio ENTRE代表取締役)
1964年東京生。早稲田大学を中退し、バグコーポレーションを設立、アーティストマネージメント会社代表兼音楽プロデューサーとして活躍。
2010年頃からエンターテック・エバンジェリストとして、執筆活動、セミナー企画、アドバイザー活動を始める。『新時代ミュージックビジネス最終講義』『世界を変える80年代生まれの起業家』『コーライティングの教科書』など著書多数。
日本音楽制作者連盟理事(2005~2013年)「デジタルコンテンツ白書」編集委員(2011〜2020年)なども歴任。
大阪音楽大学「ミュージックビジネス専攻」特任教授 、 iU超客員教授として人材育成にも取り組んでいる。
浅田祐介
(音楽プロデューサー / 作・編曲 作詞家 / シンガー / Bromide.jp COO / JSPA理事)
1968年東京生。1995年にフォーライフからアーティストとしてデビュー。
4枚のアルバムをリリース。プロデューサーとして、Chara、傳田真央、Crystal Kay、玉置成美、CHEMISTRY 、織田裕二、キマグレン等々、数多くのアーティストでヒット曲を送り出し、また近年ではシンガポールJ-Popチャート1位を獲得するなど、日本を代表する音楽プロデューサーの一人。また近年はミュージシャンズxハッカソン、TECHSなどのエンターテック系イベントの企画運営や、デザイナーYUMA KOSHINOとの音楽レーベル「Blind Spot」主宰、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)理事など、活動の幅を広げている。


■デジタルファイルによる音楽の変化

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山口
昔はマスターテープを海外で録音したら、それを持って帰るのが命がけでしたよね。

浅田
「間違えてX線を通した」というのがレコード会社でも問題になっていました。

山口
そんな時代を知っているミュージシャンとして、デジタルファイルによって音楽にどういう変化が起きたと感じていますか?

浅田
端的に言えば、色々な意味で「軽くなった」。
まず、物理的には昔は分厚いアナログテープだったのが、ある日を境に、8分の1のデジタルMTRレコーダーになり、テープのメディアに48ch分が取れるようになったのです。
持ち運びの可搬性が高くなり、気づいたらハードディスクを持って、色々なスタジオを行ったり来たりするようになりました。

実際に僕も、レコーディングで中国や韓国に行ったときは、ハードディスクを持っていき(弁当箱くらいの大きさ)、これは便利になったなと思ったら、
USBメモリになり、今やクラウドにデータを置いておけば大丈夫という状況になりました。

そういう意味でいうと、物理的に軽くなったなというのと同時に、その現場に携わっている方々の責任感も軽くなったと思います。

デジタルデータのコピーは扱いも簡単になりました。
物理的に軽くなったし、価値としても軽くなったなというのがデジタルファイルになって感じますね。

山口
やはり緊張感が昔と違うので、価値も軽くなってしまったと感じるということですね。

浅田
昔のアナログテープは、万が一消したら取り戻せないのに、今やバックアップがあるし、操作すればすぐにデータが戻ってくることもあります。
エンジニアも一度バックアップをとったデータの扱いは粗雑だったりしますよね。

山口
一方で、トライ&エラーが無限にできるようになったというのは、クリエイティブとしてはいい側面もありますよね。

浅田
そうですね。僕らの時代は24chで、24個しか音が入れられない。「もっと音を入れたい」となっても、満杯で何もできない。
それが今や、技術上は無限大です。CPUのリソースに依存しますが、基本的には無限のトラックで記録ができます。

山口
音楽がデジタルファイルなったということは、結構色々なことに影響を与えている。
便利だけではなく、ネガティブ・ポジティブ両面の影響が出てきていると感じます。


浅田
NFTに関していうと、誰が書いた曲なのか、誰が歌っている曲なのかといったメタデータが入っているので、今後は作曲家不詳というのがなくなると思います。

■ブロックチェーン・NFTと音楽業界

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山口
デジタルファイルになって音楽のビジネス・リスニングの方法が大きく変わったように、ブロックチェーンというテクノロジーはインターネットと同じくらい社会を変えると思います。
デジタルファイルはコピーができますが、NFTはミュージシャンが「このファイルは本物だ」ということができる。デジタルによる複製がなかったころの、さらに上に行くことが起きると思っています。
浅田さんは、NFTについてはどう思われてますか?

浅田
基本的にポジティブに捉えています。

しかし、色々なことが変わるんだろうなと思っています。
いわゆる生態系の変化が海外も含めて急速に進むため、それを日本の音楽業界が受け入れられるのかが不安です。

インターネットが出てきた時、「インターネットを使って音楽が売れるわけない」という方はたくさんいましたが、いまはほぼいなくなってしまいました。

同じように、NFTやブロックチェーンという技術が出てきたときに、利用法をマスターしないと業界から駆逐されてしまうのだろうなと思っています。また、それくらい大事な技術であるとも考えています。


山口
僕も同感です。

理屈っぽくいうと、サブスクが世界では音源ビジネスの「幹」になっていますよね。
サブスクは再生回数至上主義なので、「アーティスト・ユーザーダイレクトファイナンス」といわれるようなものが、サブスクの不足分を補っていく必要があります。。それがクラウドファンディングなどではないでしょうか。


けれど、日本の場合はクラウドファンディングが音楽の分野では定着していません。
たとえばアメリカでは、アルバムを作るときに、INDIEGOGO(https://www.indiegogo.com/)やKickstarter(https://www.kickstarter.com/?lang=ja)などで、500万円から1000万円くらいの資金調達をするのが当たり前になっています。
この世界観が日本にはないので、NFTがそこをやらないといけないといけないと思っています。

また海外では、クラウドファンディングのように「アーティストとユーザーをダイレクトに繋ぐもの」として、日本特有のカルチャーだった「ファンクラブ」が広がっています。
NFTもその流れを組み、アーティストとユーザーのエンゲージメントを形にするものとして、アーティストの意向に沿って作品をシェアできるキッカケになっていくと思っています。

また、「.mura」について言うと、アーティストがマスター音源、もしくはレコーディングする前に.muraに出品してもらうようなことが起きれば、良い循環が生まれるのではないかと思っています

.muraの利用者には音楽ファンが多いと思うので、たとえば浅田祐介の新作を買って、一年後に再度販売してお金が稼げたらぜひそのお金を無名の新人に再投資してほしいですね。

浅田
いやいや僕に再投資してほしいですよ(笑)

山口
(笑)ただ、そうやって(新人のアーティストへ)循環させたいという想いが運営としてはありますね。

浅田
スモールファンベースをNFTで補えればいいということですね。それはすごく面白いと思います。

■.muraの活用法

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山口
あとは、ミュージシャンは、やはり多くの人に聴いてもらいたいんですね。なのでそこで「コモンズオーナー」という仕組みをつくり、【マスターデータと同じファイルがNFTで証明されたファイルが持てます。原盤や出版の売り上げの一部をコモンズオーナーに分配されます】という機能をもたせました。こういうことに、ミュージシャンも挑戦してもらえると面白いですね。

浅田
アーティストは常にコンテンツを出す継続性が重要です。
それをコモンズオーナーの方がサポートいただけるといいですね。楽曲を購入した人達が楽曲を元に何か色々仕掛けてくれるとすると非常にありがたいなと思います。

山口
コモンズオーナーも売上分配が自分に入ってくるわけだから、頑張って宣伝して欲しいですね。コモンズオーナーという言葉には、「みんなのものにすればするほど自分が得をする」という思いも込めています。
アーティストファーストで、その曲が広まると自分も名誉やお金が手に入るようなことになる、ある種のパトラネージュになったらいいなと思っています。

浅田
そのアーティストの楽曲を買う人は、当初はそのアーティスト愛情があって購入すると思います。その人たちからすると、自分の好きなアーティストのプロモーションができるのは、たまらないことだと思います。
アーティストが好きな人を増やせるというのは、アーティスト側からしてもありがたいですし、僕もやってみたいです。

山口
浅田さんは.muraでどんな作品をどんな風に出していきますか?

浅田
あるファッションデザイナーのショーで使ったラフデザインなどに僕が曲をつけ、そのラフデザインと音楽をパックにして出したいと思っています。それを服にするなどもできるかなと考えています。

山口
それはすごく楽しみです。
浅田祐介のアーティスト活動も継続してやっていただきたいですし、プロデューサーとして、.muraを活用して色々なアーティストの活躍の場として使っていってほしいです。

浅田
二次創作以降の複次創作の可能性があるのも面白いなと思います。
いまは曲を作る時に使うサンプル素材をパックで購入していますが、将来的にはこれをNFTを入れて無料に、誰がどのサンプルを使ったか行く末をわかるようにするようになるといいですね。

山口
NFTに限らず、ブロックチェーン技術によって、時間はかかっても、そういうことを当たり前にしていく流れが必ず来る世界だと思います。

音楽著作権と呼ばれるものは、ブロックチェーンで即時的にアーティストダイレクトで管理される時代は必ず来るので、そこに向けて僕らが促進する方向でどういう活動・ビジネスができるのかというのは引き続き考えていきたいです。


NFT×エンタメ or アート関連情報
https://note.com/yamabug/m/med04b6ee2ab2
.mura
https://dot-mura.com/


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