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【神戸出身エンタメ起業家に聞くスタートアップ!】nana music文原さんのサービスグロース~M&A~MBO秘話とこれから(イベントレポ)

2022年11月7日に、「nana music文原さんのサービスグロース~M&A~MBO秘話とこれから〜」が神戸三宮阪急ビルにて開催されました。

このイベントは、音楽サービスnana musicの文原 明臣さんと、エンタメスタートアップスタジオ・Studio ENTREの山口 哲一の対談イベントです。

nana musicがどのようにして生まれて、どのような苦労をして、今に至っているのか、またこれから会社をどのようにしていきたいのかを赤裸々に伺うことができました。

プロフィール


文原明臣

株式会社 nana music
創業者兼代表取締役・CEO
大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 客員教授

1985年10⽉⽣まれ。神⼾⾼専機械⼯学科卒業。19歳の時にF1の世界に惹かれ、そのままモータースポーツの世界へ進むも、⽬標に届かず夢を断念。

その後、2011 年に⾳楽×ITを⽤いたよりよい⾳楽の在り⽅を構想し、nana music Inc.を創業。現在、株式会社nana music代表取締役社⻑。



山口哲一
Studio ENTRE株式会社 代表取締役
エンターテック・エバンジェリスト

1964年東京生。早稲田大学を中退し、バグコーポレーションを設立、アーティストマネージメント会社代表兼音楽プロデューサーとして活躍。2010年頃からエンターテック・エバンジェリストとして、執筆活動、セミナー企画、アドバイザー活動を始める。『新時代ミュージックビジネス最終講義』『世界を変える80年代生まれの起業家』『コーライティングの教科書』など著書多数。
大阪音楽大学「ミュージックビジネス専攻」特任教授 、 iU超客員教授として人材育成にも取り組んでいる。


西川嘉紀

2012年4月、大手電子部品・電気機器メーカーに入社し、海外営業を担当。その後、2016年10月、大手自動車メーカーにて、海外営業・マーケティングに従事。2020年4月より神戸市へ。現在、イノベーション専門官として活躍する。2022年からStudio ENTREと共に若者が活躍できる街を作る取り組みを始めている。

nanaについて(サービス/会社について)


Nanaは、世界中の人とスマホでつながる音楽コラボアプリで、アメリカ法人でスタートした異色のスタートアップです。

登録者のうちの半分がスペインやインドなどの海外の利用者で、若年層がメインとされています。

デジタルネイティブの人たちに発信方法を与えることを目的としています。

また、もともとは手軽に発信ができる点が魅力でしたが、2年ほど前からはスマホだけで作曲できる製品を作ることに力を入れています。
収益の中心は、広告ではなくサブスクと投げ銭になっています。

nana HP→


【山口✖️文原 対談】


ユーザーに支えられて成長してきたnana


山口:起業したいと思ったきっかけは何ですか?

文原:24歳でF1レーサーを辞めて夢がなくなり、どうしようかなと思っていたとき、Twitterで色々な人に出会って、テクノロジー・起業に興味を持ちました

実際に起業したときは「起業したい!」というより、アイデアが浮かんできて「このサービス作りたい!」というのがきっかけです。

2011年に起業し、出資を受け、翌年8月にnanaをリリースできたものの、2012年後半から2013年までは、自転車操業で苦労しました。

2013年に次の出資が決まり、ここからiOS7の対応をしたり、「カラオケ」というキーワードを前面に出したり、多言語対応をしていきました。

そのおかげで1日のダウンロード数が10倍以上に伸びていったんです。

山口:当時僕がびっくりしたのは、カラオケって伴奏がないと成り立たないけど、nanaではその伴奏もユーザーが投稿しているんですよ。それが、普通のカラオケサービスと違うところで、初期のnanaは伴奏者に支えられていましたよね。

文原:トラックメーカーは5%ほどでとても比率が少ないのですが、逆に、少ないからこそ求められています。伴奏者にフォロワーが集まって、人気者になれるという構造になっていますね。

山口:他にはないnana独自の特徴ですよね。ユーザーの人同士も仲が良くて、文原さんに「このプロダクトを作ってくれてありがとう」と感謝していたときはとても感動しました。

起業当初よりnanaが苦労しているビジネスモデル【山口✖️文原 対談】


山口:nanaってユーザーから支持されて伸びていった素晴らしいサービスなのですが、ビジネスモデルでは苦労してらっしゃいましたよね。

2017年にDMMに企業売却し、4年間DMMの傘下でサービスを伸ばされていました。その後、DMMの方針が変わって再度買い戻したということですが、一連の流れを教えてください。

文原:2013年に資金難になったのですが、調達が決まったおかげでユーザーのアクティブ数やアクション数が伸び始めました。もちろん大変でしたが、成果が出ていたので、それ以降の資金調達自体はそこまで難しくなかったです。

その後、2016年にサブスクのプレミアムモデルを出すことを決めました。正直このタイミングでの課金はまだやりたくなかったのですが、出資を受けるために必要な転換だったんです。

そんな時、DMMの社長から声をかけていただきました。たくさん悩んだのですがDMMに入った方がキャッシュも体力もあります。当時、資金調達ばかりに目を向けてプロダクト開発にあまり関われていなかったことにもモヤモヤしていて「開発にフォーカスしよう」と決めたのがきっかけでDMMのグループ入りを決めました。

山口:普通の起業家と文原さんの違うところは、企業売却して終わりではなく、自分のやりたいことをするために必要なお金を調達するために企業を売却したところだと思います。

今は、経営的にはどんな目標設定をされていますか?

文原:ずっとリニューアルを進めており、”手軽さ特化”から”スマホだけで作品を作れる”という方向に完全にシフトチェンジをしています。

いまのところは開発に専念していますが、フルリニューアルができたら、マーケティングや資金調達にも目を向けていきたいです。

神戸のスタートアップ支援の現状とこれから 【山口×文原×西川 対談】

ここからは神戸市新産業課 スタートアップ支援をしている西川さんが加わって、3人での対談が行われました。

神戸のスタートアップ支援についてはこちら

https://life-techkobe.com/

山口:神戸市は本気で起業家を生み出して、街をよくしていきたいという思いを感じます。
文原さんは神戸出身の起業家ですが、現在の起業と文原さん時代の起業は環境も違うのではないでしょうか?

文原:起業当時は関西で一緒に起業する人を探しに勉強会にもよく行って色んな人達と話したのですが、見つかりませんでした。やはり、東京の方が出会いやすかったです。

西川:どのようなことがあれば、神戸や関西で起業しようと考えてくれますか?

文原:創業メンバーが見つかりやすい環境と資本の支援があればめちゃくちゃ嬉しいですね。
同じ志を持つメンバーと創業支援の資本の部分があれば、地方で起業することを積極的に考えられるのではないでしょうか。

西川:文原さんは、Twitterで出会った人をきっかけにして起業しましたよね。東京ではそういった偶然の環境を作り出しやすいと思うのですが、関西はまだまだ少ないと思っています。

しかし、最近は関西でもそういう活動が少しずつ盛り上がってきてきているなとは感じています。

山口:文原さんにとって神戸とはどんな街ですか?

文原:スタートアップの事例は印象が薄いです。神戸よりも福岡の方が数億円規模の出資をしてくれたりと、スタートアップエコシステムが効くと思いました。

西川:福岡は神戸がスタートアップ支援に手をつけるよりも何年も前から支援を始めています。神戸はVCが少ないので、それが課題です。


東京のスタートアップ最大の魅力 “エンジェル”【山口×文原×西川 対談】


文原:東京のスタートアップシステムの強さは、エンジェル投資の活発さにあると思います。

エンジェルからお世話になった起業家が上場して経済的リターンを得ると、その起業家がまたエンジェルになるという流れが東京では当たり前に行われています。

西川:エンジェルから投資を受けるとき、気をつけることはありますか?

文原:(起業家が)エンジェルに何を望むかと株式シェアの比率。この2点ですかね。

お金を受け取るだけではなく投資してもらいたいことが明確であることが必要だと思います。

山口:まず、(上場するときに問題になる)反社会的勢力のチェックは必須です。

それから投資家の評価も重要です。思っている以上に、投資家は誰が投資するのか気にしていると思います。

危険なエンジェルから投資されると、他の投資家が投資しなくなるリスクは十分にあります。様々な人から話を聞くことは本当に大事だと思います。

Studio ENTREでいえば、評判リスクをお伝えすることも大事な仕事の一つだと思っています。

文原さんの起業への考え方【山口×文原×西川 対談】


質問:起業で一番大切なことは何ですか?

文原:自分が最低10年できることを見つけることです。お金欲しさだけで起業すると、10年継続することはできません。

どのようなビジネスをしても必ず波はあるので、継続するためのモチベーション、動機 が必要です。

西川:10年継続できることは、どうやったら見つかるのでしょうか?

文原:意外と言語化できていないけど「何かすごいことを成し遂げたい」と思っている人が成功することが多いと感じます。自分の軸になる場所を作るのが大切だと思います。

山口:文原さんにとって苦しい時期はありましたか?

文原:一番苦しかった時期は、2013年です。10ヶ月間自転車操業をしていたので、大変でした。

山口:その時期の文原さんに何度かお会いしましたが、すごくタフでした。その明るさはとても大事だと思います。

文原:自分の製品に自信がありましたし、すべきことが自分の中で明確でした。
やるべきことは明確、あとは作るだけ、でも作れる人(エンジニア)がいない、エンジニアを雇えれば前に進む、となると必要なのはその原資、なのでいますべきことはお金をなんとかするだけ、という考え方でしたね。

エンタメ業界で起業する魅力 【山口×文原×西川 対談】


山口:エンタメ・音楽分野で起業をする良いところと悪いところは何ですか?

文原:良いところは、エンタメそのものに関われることです。

エンタメは、人を感動させることと収益を生み出すことがダイレクトにつながってて。人の感情に直結しているから属人的でもある。でもつまりそれはオリジナリティーを生み出しやすいということでもあります。

山口:スタートアップは会社の課題解決だと言われてますが、エンタメ分野で起業する時は、課題解決よりも欲望達成が大事だと思います。

「自分がファーストユーザーとして起業する」という考え方は素晴らしいと思いますが、文原さんはまさにその考え方で起業されましたよね。

文原:そうですね。しかし、それが参入障壁にもなります。
当人にしか価値がわからないので、資金調達が困難になるなど、悪い方向に向いてしまうこともあります。もちろん、周りには真似できないオリジナリティーにもなります。

西川:オリジナリティーがある製品の場合、他人に理解されず不安になることはありますか?

文原:どれだけ自分が説明しても、全く伝わらないという経験をたくさんしてきました。
しかし、たくさんの方への説明を繰り返すと、理解してくれる人はいます。結局はどれだけ数をこなすかが重要だと思います。

山口:従来の日本のエンタメ業界の仕組みは、今ほとんど有効性を失っているので、日本で新しい人がエンタメ業界に挑戦するというチャンスは非常に多いと思います。

これから、Web3.0やブロックテクノロジーは機関技術になる時代は必ずやってくるので、エンタメコンテンツはこれから活躍の範囲が広がってくると思います。

【参加者からの質問】


質問
:nanaの主な資金源はサブスクと投げ銭ですが、広告費に頼らなかった理由は何かありますか?

文原:最初は広告を出していました。が、広告モデルは大規模なアクティブ数がないとたいした収益にならないので一旦ストップしています。フルリニューアルが完了したら再度スケールにチャレンジしていくので、将来的には再開を考えています。

nanaに限らず、規模を数千万から数億のユーザー数にしないと、広告でも十分な売り上げにはなりません。

一方で、投げ銭はアクティブ数が上記の規模でなくても,一定以上の収益を見込めることが証明されてきています。SNSのサービスにおいて、投げ銭モデルは広告モデルの次のスタンダードになるのではと期待しています。

質問:アメリカではスタートアップは「大企業にM&Aされる」ことを目指し、日本では「IPを目指す」を目指すと言います。日本でスタートアップ市場が活性化するためには、どのような環境が必要だと思いますか?

山口:大企業によるスタートアップのM&Aはすごく重要だとおもいます。
現在の日本の大企業は、高収益の体質に生まれ変わりづらかったり、社内から新規事業が生まれなかったりといった悩みを抱えています。

そこを解決するために、日本の企業は起業文化を今の時代に合うようにアップデートすべきです。

文原:「起業家の方がM&Aされてもう一度起業する」という流れが増えていくといいと思います。
その人たちが違う起業家のエンジェルになりますし、利点は多いです。

【文原さんからのメッセージ】


質問:文原さんから、これから企業を考えている人へのメッセージをお願いします。

文原:起業するというのは、どれだけ継続することができるかだと思います。
失敗したら終わりと思っている人もいると思いますが、もし失敗しても地方でまた起業したり、大企業に入社したりして活躍している人もたくさんいます。

起業するということは0→1を作って、荒波を越えて、人を雇用して、マネージメントやファイナンスなども全て自分でするということです。

このことを乗り越えてきた人は、当然大企業にとってすごく欲しい人材です。

山口:失敗しても就職には有利になるので、大学生のうちに一度は起業することをおすすめします。

文原:強い人とは、変化に馴染める人だと思います。何があってもその時に最適化して、必要な対策を打つことはとても大事です。

変化に対応できる自力をつけるというのは、すごく重要なことだと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

インターン生の私もこの対談を拝見させていただいて、大変勉強になりました。

起業したいけど、そうしたらいいかわからない方、失敗を恐れている方。一歩踏み出してみてもいいかもしれませんね。

Studio ENTREでは起業家の方とともに一緒にビジネスやサービスを作っていくスタートアップスタジオです!

起業に興味のある方、マーケティングに興味のある方、お気軽にご連絡ください!

Studio ENTREホームページ:https://entre.studio/


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