見出し画像

音楽デジタル市場を攻略するために【第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.6】

9月5日

第六回は、Merlin Japan株式会社 General Managerの野本晶氏を講師にお招きし、「サブスクリプションの攻略法-デジタルリリース前にやるべきこと-」についてお話しいただきました。

大まかな流れ
・国内とグローバルマーケットの近況について
・デジタルリリース前にやるべきこと
・ケーススタディ


〇国内とグローバルマーケットの近況について

まず、日本とグローバルマーケットの近況についてお話しいただきました。各国のストリーミングサービス利用の動向や、ユーザーが音楽を聴く動機などについてお話しいただき、現地の市場特性への理解を深めました。
グローバル戦略にとって、ローカルで人気のサービスのみならず、ライセンスを世界へ広げていくことが重要であるとのことでした。


〇デジタルリリース前にやるべきこと

次に、野本氏の経歴を活かした視点から、デジタルリリース前にやるべきことについて教えていただきました。

前提として、ストリーミング収益構造を理解する必要があります。再生単価のみに注目するのではなく、無料・有料会員一人当たりの再生数と掛け算した時に、どんなバランスになっているかを確認することが重要とのことです。

続いて、教えていただいたポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。

・マーケットリサーチをする
分析ツールなどを用いながら、ユーザーの嗜好性や興味関心が何処にあるかを把握することが非常に大切とのことです。

・作家としての著作権を登録する 
音楽ストリーミングは世界中から収入が得られるため、著作権(作詞/作曲)の国内外の徴収方法についても確認することが必要になってきます。

・Spotify for Artistで準備を行う
リスナー数とストリーミング数の割合に注目します。リスナー数よりもストリーミング回数が多いということは、同じ人が繰り返し聞いていることが予測され、コアなファン層が存在するという分析に繋がります。
マーケティングやそういったファン層を通じて、同じような嗜好性を持ったユーザーにアピールしていけるかがヒットの鍵となります。
また、フォロワー数を増やすためには、継続した関係作りが必要です。ある一曲を気に入ってもらえた際に、同じアーティストの別の曲を聞いてもらえるような流れを作り、アーティストとの接点を増やしていくことが重要です。

・リリース日のインパクトを準備する
リリース日は多くの注目を集めることができるため、利用するべきだといいます。具体例としては、Pre-Save(プリセーブ)、Pre-Add(プリアド)機能があります。これを利用し、配信前のアルバムやシングルを事前に予約することで、配信開始と同時にユーザーのライブラリやプレイリストに楽曲が自動追加されます。
現状として、ストリーミングされている楽曲の約7割が18ヶ月以上前の楽曲だといいます。そのため、このような機能を利用することで、アーティストやレーベルは、新譜率の維持や向上に繋げられる可能性があるとのことでした。

・ミュージックビデオを作成する
今の時代、YouTubeというプラットフォームを避けては通れません。必ずしも予算を掛けたミュージックビデオである必要はありませんが、動画要素は必要だといいます。ただ、ストリーミングよりもビデオが先行してしまうと、ストリーミングサービスにおいてプレイリスト検討対象から外されてしまうため、注意が必要です。
また、オンライン上に出す場合、同時に複数のプラットフォームに出すことが重要です。仮に一つのプラットフォームでの限定公開になってしまうと、他サービスへの導線を引くことができず、楽曲そのものが広がりにくくなってしまいます。

・オーディエンスに愛される曲になる
Spotifyでは、30秒以上の再生を一再生としてカウントします。この数に加え、ユーザーが能動的に最後まで楽曲を聴いたか、SNSにシェアしたかなど“愛され度”によってAIがおすすめする確率が高まります。そのため、ストリーミングサービスにおいては、少なくてもいいので、熱狂的なファンを獲得することに価値があるとのことでした。


〇ケーススタディ

実際のアーティストの具体事例(ARLO PARKS, ONE N’ ONLY, The fin.など)に対する分析についてご紹介いただきました。
国ごとに別のパートナーサービスを選んだり、日本語以外の言語で楽曲を作ったりと、海外マーケットへ参入する上で有効な施策を学ぶことができました。
そして、人が多くいる場所に、好かれそうなものを出していくというプロモーションの基本や、SNSでのきっかけ作りの重要性を再確認しました。
また今後、日本語という独自の言語を活用した戦略で、新たなヒットを生み出すプロモーションができるかもしれない、と仰っていました。


マーケティング施策案のフィードバック

最後に、講師陣から、各チームのマーケティング施策案についてフィードバックを頂きました。チームメンバーの強みを活かした施策を行い、仮説検証の場としてもこの二か月間を活用してほしいとのことでした。

〇次回予告
次回9月12日は、LIFESOUND, INC.代表取締役の山内直己様を講師にお招きし、「日本人アーティストの海外アプローチ&経験談」についてお話しいただきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?