#25: 文系大アカペラサークルでもPAから目を逸らすな

こんにちはもりーです。
先日Twitterで書いて欲しい記事のジャンルアンケートを行ったところ、PAに関する記事の需要が思ったより高いことがわかったため、具体的なPAの話をする前に1本記事を書いていこうと思います。

いささか過激なタイトルになってしまいましたが、やはりこの問題はアカペラサークルのPAを題材にする上で避けて通れないトピックかと思ったので尖りすぎない程度に触れていきたいと思います。

そもそも、歌うために入ったアカペラサークルでなんでPAなんかしなければいけないのでしょうか?
なぜ音響を勉強しなければいけないのでしょうか?
学んで何になるのでしょうか?
誰も学ばなければどんなことになるのでしょうか?

こういった諸々の疑問を切り口に個人的に思う健康的なサークルのあり方について音響という側面からアプローチできると言いなと思います。

そもそも音響ってなぜ必要なの?

この質問は簡単ですね。
アカペラは人間の声のみで演奏をする演奏形態を持っており、アンプやスピーカーを初っ端から使う必要のあるロックバンドなどと比べると音が小さいからです。
生声で聞かせることができる観客の上限といえば精々10人程度でしょうか。
また、ボイパやベースなどは音量の個人差が極めて大きく、音響ありきの演奏である側面は否めません。
つまり、大学の講堂であろうが広場であろうがでっかいホールであろうがアカペラにとって実力の有無に関わらず必要不可欠であることがわかります。

演奏に音響が必要であるということは即ち必然的に音響機器が必要になります。
それらを適切に調整できる人間も必要になります。
更に言うならば音響機器を運ぶ人や設営をする人も必要になります。

学内のライブでさえ専門の音響スタッフを雇えるほど潤っているサークルというのは古今東西聞いたことがありません。
強いていうならば各バンドにPAを付ける必要がある早稲田SCSくらいでしょうか。それもサークル員ですし。

お金がないなら自分たちでやるしかありません。
サークル活動に人件費は発生しないからです。

即ち、アカペラサークルで歌うということはそのまま音響に何かしらの形で携わる必要があるということとイコールであるといえます。

プロの歌手ならともかく、金のない学生風情は黙って体を動かすしかないということです。
そこにわかるとかわからないとかありません。
そういう前提から話を始めることにします。

歌うためにアカペラサークル入ったのにPA?

「いやー私、機械とかよくわかんないし、そもそも歌うためにアカペラサークル入ったんだよね、だからPAとか関係ないよ」というメンタリティの人が文系アカペラサークルには特に多い気がします。

違います!先程言った通り、アカペラで歌う=機材を使う、なのです。

「マイクから音が出ればそれでいいや~」と音響を軽視してる人は
「自分のバンドの魅力はこれくらいでいいや~」ってバンドの見せ方を軽視していることと同罪なのです。
音響の難しい概念がわからない、操作できないという人でもどんな音がいい音なのか、どんな音が悪い音なのか、ということくらいはわかります。
そういうところから意識を持ちましょうよって話なんです。

何をどれくらい学べばいいの?

これが一番温度感が顕著に現れる箇所だと思います。
個人的には、2つのレベルに分けて考える必要があります。

Lv.1 一般サークル員レベル
これはアカペラを演奏する人ならば知っていて当然の事柄です。
☆PAシートを正しく書く知識
☆音響機器の大まかな接し方
☆マイキングの知識

Lv.2 音響班レベル
ある程度専門的な知識が必要になってきますが、知っておかないとサークルの音響機器の性能を活かせないまま惰性でしょぼい音でライブをすることになりますし、演奏中のモニターが聞こえないなどサークル全体のパフォーマンスに影響ができるような明確な実害をもたらします。
☆PAシステムの原理
☆音響に関する知識
☆サークル機材の性能
☆音響機器の操作・調整

ざっとこんな感じでしょうか。
体感なのですが、Lv.1の知識すらままならない状態で音響班の幹部になり、何から手をつけて良いのかわからないという状態でサークルの音響を引っ張ろうとする人が多い印象です。
これらの個別の内容については次回以降の記事で書いていこうと思いますので今回は割愛します。

また、Lv.2の知識を手早く頭に叩き込みたい方は私が執筆したPA入門書があるのでこちらを御覧ください

学んで何になるの?

これに関しては学内ライブでのQOLが露骨に上がるというものが筆頭に挙げられるかと思います。
私が以前所属していたアカペラサークルに文化祭のPAをしに訪れた時、5年生をやっていた同期たちから「やっぱりPAで演奏のやりやすさは変わるね」
と言って貰ったことを未だに覚えています。
また、PAを学ぶことで箱ライブの時とのPAさんとのコミュニケーションも円滑に進みますし、しっかりとしたこだわりを持つことにも繋がります。

また、Lv.1の内容に関しては知っていないと明確にデメリットが発生するものですので、知っているとこういう得なことがあるというよりも、知っていなければ絶対にデメリットがあります。

確かに、ハモり方やステージでの見せ方、発声の仕方を学ぶことも大事ですが、音響というアカペラにおける基本的なインフラについて無関心でいることはあまりにも勿体なく不合理的な選択と言えるでしょう。

誰も学ばなければどんなことになるの?

サークルで誰もが音響に無関心で、音響長でさえまともに音響機材に関して知らないという絶望的な状態が数代にわたり続くことで様々な問題が生まれます。
一例を上げると:
・外部のライブに対して過度な期待を抱き始める
・「マイク練」の意味がなくなる
・機材の消費スパンが早くなる
・どう考えても買い替えが必要な機材を無関心なまま使い続ける
・学内のライブがしょぼすぎるため経験にならない
というような問題です。

特に一番上の「外部のライブに対して過度な期待を抱き始める」は特に強調したい箇所です。
脳死で外部のライブ=いい音と思い込みを持つあまり、その期待値を下回った際にやたら態度が悪くなる人が多いです。

サークルライブなどで外部のPAに委託し、委託先の機材を使うサークルの場合、使い勝手の点から無線マイクを使う場合が多いと思うのですが、それがサークル内オーディションというふるいにかけるシステムとリンクしているため、脳死で「無線マイク=オーディションの勝者だけが握ることを許された素晴らしい機材」のように考えている人は一定数いました。

他にも私がPAを担当した『Fuchu A Cappella Avenue』でもこのようなことが起きました。
本イベントは150バンド程が街中の野外ステージでリハーサルも無しで歌い続けるイベントでした。
また、使う機材もサークルで使用する機材に毛が生えた程度の機材しか使っていません。
つまり、出る音のポテンシャルもサークルの機材と大差ないということです。
リハなしで大した機材も使っていないライブでカエシが聞こえづらかった、全く聞こえなかったなど言われてもどうしようもないよとこちらとしては言いようがないわけです。
特に、私が担当したフォーリス前ステージは、50メートル先にもう一つステージがあり、音が混ざるわ被るわで正直スタジオなどと比べて環境は最悪だったと言えます。
そのような環境なども考えず、外部のライブ=いい音に違いないと思い込んでその期待値を下回っただけで文句を言うのは少し違うのではないかなと思います。

何が言いたいのかというと、まともに音響に関しての理解や知識があれば少しはマシで健全な議論ができるのではないかということです。
音響という重要過ぎるファクターから目を逸らし続けた結果が今の不健全な音響に対する理解や行動に繋がっているのではないかなと思います。

「私はわからないから」、「俺は音響班じゃないから」とかいう訳のわからん見栄の張り合いみたいなのやめてみんな最低限の知識は身につけませんかという話です。
リズムの取り方は後輩に講釈垂れるくせに音響の話からは目を逸らすって、最高にダサいですよ笑

まとめ

このような愚痴めいた感じで記事を〆るのは少しはばかられるので補足としてまとめておきます。
別にアカペラサークルの全員がミキサーを手足の如く操れる必要は全くありません。
しかし、最低限のリテラシーや協力体制はプレイヤーである以上持ち合わせていなければそれはプレイヤーとしてどうなんだということです。

次回以降は今回の導入で触れたそれぞれのポイントについて解説を行いたいと思うので気になった方はTwitterやnoteのフォロー、そしてこの記事のRTや拡散にご協力をお願いします。

最後まで読んでいただきありがとうございました、もりーでした。

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