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【欲しい理由 / 初相談】夢の防音室を作るまで Vol.2

どうも、こんにちは。

オーディオライター、音響エンジニアの橋爪徹です。
ハイレゾ音楽制作ユニットBeagle Kickでは総合プロデュースも勤めております。

前回は防音室とは何なのか、そして筆者橋爪はどんな部屋を作ったのかを解説しました。
そして、部屋ができるまでの経緯を書き残すことで、防音室を作るという試みを少しでも現実的な選択肢としてオーディオファンに考えてほしいと述べました。

今回は、そもそもなぜ私が防音室をほしいと思ったかを書きつつ、施工依頼の始まりについて振り返りたいと思います。


ライト系オーディオ少年がガチ系オーディオ中年に

私は、オーディオを高校の頃から趣味として楽しんでいました。
当時人気だったPlayStation2を買うのを一年遅らせてまで、AVアンプと5.1chスピーカーセットを買う変な高校生でした。
ドルビープロロジックというシアターサラウンド形式をPlayStationでも採用しているソフトを楽しんでいた記憶があります。(パラサイト・イヴとかクロノクロス)

そんな橋爪少年は成人して上京し、声優を目指しながら仲間とボイスドラマやWEBラジオを作ることに没頭していきました。
そこで培った音響(録音)のスキルを生かし、2016年セミプロのエンジニアに。
以来、音声専門の音響エンジニアとして数々の現場で仕事をさせていただきました。
紆余曲折の末、声優は諦めたのですが、ひょんなことからオーディオ業界にスカウトされライターとしてデビューすることに。
趣味だったオーディオが仕事になりました。

そこでいくつかの問題が生じます。役者になるぞと上京してきた私は、墨田区にある6畳一間のアパート暮らし。押し入れもない古い木造1Kでした。
1畳まるまる使ってテレビやオーディオセットを設置していましたが、ラックは狭いし、ラック裏は狭いし、部屋は狭いし、音場感は狭いし、狭いし、狭いし…… (以下略)

薄壁のアパートでは音量も満足に出せません
和室なので響きもデッド。物が多いから吸音しまくりでモニター用途にはいいけれど、音楽鑑賞ではイマイチ面白みに欠けました

そんなとき、アコースティックラボに出会います。当時は九段下のショールームでオーディオイベントを不定期に開催していました。
私はルームアコースティックを科学的に解説するイベント内容と、ショールームの自然で心地よい響きに魅了されすっかりファンになってしまいます。
何回か通ううちにスタッフさんとも仲良くなり、イベントレポートなどを書かせて頂くようにもなりました。

このあたりまで説明すれば、もうオチは見えてきたでしょうか…
気がついたら、同社で防音室を作ることを決意していました。
30代も中盤にさしかかり、いつまでも家賃52000円のアパートでぬるま湯に浸かっているわけにはいかないと思ったのもあります。


こんな防音室、実現できますか?

防音室で実現したかった要素はこんな感じでした。

・隣戸や近隣を気にせず音量を出せること
・機材セッティングやメンテナンスが問題なくできる広さであること
・サラウンドスピーカーを備え、映画鑑賞にも使えること
・簡易収録スタジオとして使用できること

まず、防音室を作ろうと思ったら家を買わないといけません。
賃貸はリフォームができないので、工事を伴う防音室施工はどうしても持ち家に引っ越す必要がありました。
おおよその住宅購入金額を決めて、防音室に掛けられるだいたいの予算を立てます。
これらが分かってきた段階でアコースティックラボに計画を打ち明けました。 (2016年5月)

ここから分かることは、住宅の予定が立たなければ防音室の相談も難しいということです。
既にお持ちの住宅をリフォームするなら、すぐに相談すればよいでしょう。
現在賃貸で家は新しく購入するという方は、だいたいの予算を立ててから相談するとその後の打ち合わせもスムーズに進みます。

アコースティックラボにこういったケースごとの対応について聞いてみたところ、なんとコラムを執筆いただけました!
ご自分の環境に合う内容があるでしょうか。ぜひお読みください。


防音室を造るにあたり、代表的なケースを3つ挙げさせていただきます。

①マンション
オーディオを楽しんでいたが、上の階からクレームがあって大きな音が出せないことがストレスだ。
②戸建て新築
新築住宅を購入するにあたり、夢だった専用室を造りたい。
音がもれないことはもちろんだが、道路からの騒音が部屋に入らないようにもしたい。
③戸建てリフォーム
子供が独立して部屋が余ったので、2部屋を繋いで大きな一部屋にしたい
工事のきっかけとしてはやはりライフステージの変化が大きく、つまり引っ越しや家族構成の変化ですが、①のように外的要因によってやむなく工事をしなければならない方も一定の割合でいらっしゃいます。
日本は成熟社会ですので、ひと昔前に比べ、確実に趣味に対してお金をかける割合は大きくなりました。クレームが来たから音を小さくして楽しめばいい、では駄目ですし、大きな音が出せても部屋の音響特性が悪ければ、それもやはり駄目です。音についてお悩みの皆さんは、その理由がなんであれ、思いは切実です。橋爪氏のように、はじめから専用室ありきで相談をいただく例も、近年では珍しくなくなりました。好きな音楽を良い機材で、且つ大きな音で楽しむ贅沢は、決して庶民離れしたスタイルでは無くなりつつあると感じています。

====コラムここまで====


アコースティックラボに防音室作りたいことを打ち明けて、最初の打ち合わせをしたときのことです。
担当の方から言われたのは「ついに橋爪さんも落ちましたね(笑)」。

私にとってクライアントさんだからというビジネス面での理由ではなく、技術面でも安心してお願いできるという確信がありました。
それにこんな冗談を言い合える間柄でしたので、幸先いいなと思っていました。

最初に打ち合わせしたのは、「どういう防音室を作りたいか」ということです。
施工後の広さは6畳くらい。用途はオーディオメインのシアター兼用で、収録もできるギリギリのルームアコースティック。スクリーンを設置し、サラウンドスピーカーは壁に設置。
お世話になっていたケーブルメーカーの屋内配線やスピーカーケーブル、壁コンセントなどを採用してほしい。
早々に諦めたのは、収録ブースを部屋の中に区画を区切って設置することです。普通に防音室作るだけでも自分には精一杯でした。

打ち合わせの中で具体的なプロセスが見えてきました。

まず物件購入から工事完了までの手続きや期間について。これは追々解説しますが、事前に進めておくべき事項などイメージをすることは大切です。その時になって慌ててしまうと、不動産屋や工事をする職人さんに迷惑を掛けてしまうでしょう。
引っ越しがスムーズに出来るか、工事は住みながらやるのか事前にやるのか、管理組合への工事申請は、等々。初めてのことばかりで難しかったですが、「防音室がほしい!」という強い意志で乗り切れたと思います。

大筋が見えてきたところで、平行して物件も探します。
予算の関係で中古マンションを探すことにしました。

私は、住宅ローン減税について問い合わせたことをきっかけに、“買い手の味方だけをするエージェントタイプの仲介会社” リニュアル仲介にたどり着きました。
同社の担当さんは非常に有能で頼りになる人でした。

私の「防音室作るためだけに家を買う!予算はこれしかありません!でも、住宅ローン減税は受けたいです!駅から近くないとダメです!」という我が儘に最後まで根気よく付き合ってくれました。

何はなくともまずは都内で見つけたい……

そこには予想を遙かに超える困難が待ち構えていました。
次回は防音室を作るための物件選びについてお送りします。

では、また!


技術監修:アコースティックラボ

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