ON・YU(音癒)でデジタルデトックス!? ~お家にいながら癒しの空間を楽しめるKORGのインテリア雑貨とは~
こんにちは、オーディオライターの橋爪徹です。普段、AVWatchなどでオーディオ機器を紹介したり、アーティストやクリエイター・開発者のインタビューなどもやらせていただいてます。
このたび、KORGの新しいインテリア雑貨『ON・YU(音癒)』を試用する機会に恵まれまして、数週間自宅で使ってみました。
これはいいです! 予想以上に癒やされます! 「スマホやタブレットばかり触っていて、最近集中力が続かなくなってきた。家の中で本を読めなくなってきた。気がつくとSNSを見てしまう。目や脳が疲れてる」……なんて方にはお勧めしたいです。
小さくて可愛らしい見た目から奏でられる音は、空間を満たす本物の環境音のような自然さ。小柄な見た目と小さなスピーカーから想像するようなサウンドでは決してありません。
一人暮らしの私にとって、聞こえてくる音は味気ない生活ノイズばかり。ON・YUの3Dサラウンドを流すことで、まったく新しいリラックスした生活が生まれたように思います。
仕事の執筆中や、ちょっとした軽作業、料理や家事、入眠にいたるまで、ON・YUを鳴らすことで、ギシギシしていた自分の身体や頭(脳と心)がほぐれていくような気がしました。特にお気に入りのライブラリは、森のざわめき、秋の虫の音などを収録した「自然」ですね。故郷がそこそこの田舎だった私は、子供の頃は虫やカエル、野鳥の鳴き声とともに過ごしました。ON・YUが与えてくれた音による癒しに懐かしさすら覚えました。
「本や雑誌を自宅で読むことが出来なくなった、ついタブレットやスマホの画面を見てしまう」という方も、ON・YUを鳴らしてる間だけは、ざわつく脳と心を落ち着けて、積ん読してる本を手に取ることが出来るかもしれません。
KORGのインテリア雑貨「ON・YU」とは
さて、ON・YU(音癒)について簡単に解説しましょう。
ON・YUは、電子楽器メーカーのKORGがクラウドファンディングのMakuakeで販売を開始したところ、わずか32分で目標金額に到達。早割対象の限定数も56時間7分で完売するという大反響を経て、急遽追加生産が決定。200台の追加分が現在も販売中です。なんと、追加分も感謝割りとして28%割引されています。プロジェクト終了は7/30。本原稿を書いている時点ではまだ残数がありますので、気になる方は、早めにポチることをお勧めします。
このどんぐりのような見た目の不思議な物体は、厳選された「癒しのひとときをイメージした」効果音を3Dサラウンド再生するインテリア雑貨です。
インテリア雑貨と銘打ってますが、「音響インテリア」といってもいいかもしれません。
左右にスピーカーを搭載し、あらかじめプリセットされた「自然・瞑想・集中・快眠・子守唄・目覚め・リラックス」の全7種、内容の違う2セットの音源を再生出来ます。収録された音源は、ON・YUのために約1年かけて制作したという気合いの入ったオリジナルライブラリ。総収録時間は2時間50分に及ぶとか。ステレオ、モノラル、バイノーラルなど、ソースごとに最適な方法を吟味していて、ロケーションは、八ヶ岳・三浦半島・本栖湖などの富士山周辺、海外まで……なんだかSEの聖地巡礼をしたくなるラインナップですね。
デザインは、オーディオ機器に見えない、かわいらしく優しい木目調のボディが目を引きます。この木材はウォールナットやケヤキなどで試作した結果、家具やギターにも使われている木目の美しいサペリに決めたそうです。(サペリって知りませんでした)
オーディオ機器なら逆に存在を主張してほしいともいえる、ボタンやインジケーターは、徹底して最小限かつ目立たない場所に配置しています。フロント側には、動作状態を表示するLED(再生モード、電源ランプ)。リア側には、操作ボタン(再生停止およびコントロール、モード変更、ボリューム)と電源/充電用のDCジャックだけです。
スピーカーは、20mmのフルレンジが左右に1個ずつ。このスピーカーも、スピーカーにあまり見えないように色味とか、コーンの風貌は工夫されてると感じました。
これだけ空間に溶け込み、デザイン性のある小型スピーカーなら、自宅だけでなく、お店やオフィスのロビーなど、ビジネスの現場でも使用出来そうです。駆動は、付属のACアダプター(9V/1.7A)のほか、バッテリーも内蔵しています。持続時間は48時間(充電は4時間半)と音を鳴らす機器としてはかなりのロングライフ。アンプ出力は1.5W×2ですが、ボリューム最大にすると結構な大きさで鳴ってくれます。一般家庭なら十分な音量感ではないかと。
重さは、わずか590g。片手で簡単に持てる軽量ボディです。(丸い本体なのでつるっと落とさないように両手で持つことを推奨します)
セッティングは超簡単! というか、セッティングらしい手順もほぼありません。最適な効果を得るためには、「手の届く範囲 正面に置く」ということだけ。左右は40センチずつ、背後は10センチは空間を取ることを推奨しています。最適な3Dサラウンド効果を感じるためです。自分が試したところ、周辺空間を確保しつつ、部屋のどこかにポンと置くだけでも、さりげなく空間に溶け込むサウンドを提供してくれる超優秀アイテムです。
ON・YUを使ってみた!
使ってみた感触としては、「どこでも使ってみたくなる」が一番感動したところです。確かに3Dサラウンドを味わう上では、適切な設置方法があるのですが、それに気を付けなくても、いい感じに部屋を音で満たします。
オーディオファン的な視点で見ると、「スピーカーから鳴ってる感」が薄いというのも重要なポイント。スピーカーから音が鳴ってると、やっぱり直接音に意識が向きがちです。それは音楽を聴かせる意味では好ましい状態なのですが、環境音などを流して音による癒しや心地よさを味わうというON・YUのコンセプトからすると、主張が強すぎるというデメリットになってしまうでしょう。その点、左右にスピーカーが付いていて“ユニットが正面を向いていない”、3Dサラウンドを感じるために“特別に作成された音源”というON・YUの2大要素はいい感じに音の発生源を意識させないようにしてくれるのです。
一応、断っておきますと、置いている場所は分かります。置き場所すら忘れさせるほどの不思議サウンドではありません。ただ、スピーカーの存在を意識させにくい、自然に漂うような“環境浸透型サウンド”と言っていいと思います。
リビングのPCデスク
まず、リビングの仕事机で使ってみます。パソコンは外付けモニターとキーボード、マウスを付けていますので、ご覧の様なシステムです。
手の届く場所にLEDを正面にして設置。再生ボタンを押して、全曲リピートで流してみました。私は、執筆や事務作業をしながらの“ながら聴き”は音楽もラジオも両立出来ないタイプです。ところがON・YUから流れてくる立体音響は、気が散らないというか、むしろ少しリラックスして作業や執筆が出来るではありませんか! メロディーがある音源は、ほとんど収録されておらず、基本は環境音やSEっぽい音が主体なのも影響していると思いますが、普通のスピーカーからストレートに2ch音源を流していたらこうはいきません。私の場合は。
音場的には、自分が半円球、プラネタリウムのような音場にスッポリ入っているような、あるいは頭を突っ込んでのぞき見(のぞき聴き)しているようなイメージを持ちます。コンパクトなボディからは想像も付かないような包囲感です。
部屋にポン置き ~軽作業時など~
次に、ちょっとした軽作業のお供に、リビングや4畳半くらいの小部屋で床などにポン置きして鳴らしてみました。頭を包むような3D感はさすがに感じられません。でも、これは意外といいと思います。ふんわり漂う環境音。部屋を自然に満たすストレスフリーな音響空間が簡単にON・YUひとつで現実になります。音量を適切に調整して、さりげなく鳴っているくらいにするのが空間浸透度を高めるには適当だと感じました。私の場合は、あまり音量を大きくすると、スピーカーの存在に意識を引っ張られました。
入眠のお供に
味を占めたので、就寝時にも使ってみました。私は、寝るときにラジオやテレビ、動画サイト、音楽も含め、一切音を鳴らさないタイプです。気が散って眠れないからです。
ON・YUは、ライブラリの中に虫の鳴き声や風の音などを収めた「自然」がありましたので、ループ再生にして流してみます。あれまぁ、これはステキ!! 私が少年時代を過ごしたのは、浜松市の田んぼに囲まれた地域でした。クーラーのなかった実家では、夏は窓を網戸にして、扇風機だけで過ごします。雑草や稲が風になびく音、カエルやコオロギ、スズムシの鳴き声で夜は自然の子守歌を聞きながら寝るのが当たり前でした。窓を閉める中間期であっても、遮音性能が悪かったため、環境音はうっすら聞こえてきてましたね。数十m先には遠州鉄道も走ってましたし。
「自然」を選んで、布団に入ると、まずボリュームの微調整が大事だと気付きます。リラックスして気持ちよく入眠するためには、音量がしっかり自分に合ってないと気が散ります。上げたり下げたり、微調整していい感じに聞こえてきたらいざ就寝!
ああ……この空間を自然に満たす虫の鳴き声、森のざわめき……いいですね~
疲れた心と身体をクールダウンしてくれるようです。夜、横になった直後は、いろんな考え事をしてしまうタイプな私。ON・YUが鳴っていると、適度に頭が環境音に意識を使うので、変な事を考えなくて済みます。何日間か就寝時に使ってみたところ、途中で止めたくなることは一度もなく、スムーズに快眠できたと思います。
ということで、ON・YUによって、家事や軽作業、仕事、就寝、その他あらゆる隙間時間に至るまで、相性抜群な3Dサラウンドライフを楽しむことが出来ました。
何度も言うようですが、理想的な設置位置は厳守じゃないです。好きなところにポン置きするだけでも、オーディオ機器から音楽が鳴ってるのとは別の世界が広がります。
興味が沸いて来た方、まだ台数あるみたいなので、追加生産分をチェックしてみては!?(PR案件じゃないです、マジです)
細かな使い方や機能
操作は、最小限のボタンで行えます。音量-、+とMODEは、音量の上げ下げと、再生モードの切替え。再生/停止ボタンは2度押すと次のトラック、3度押すと前のトラックを再生し、長押しで電源のオン/オフができます。
タイマーはMODEボタンの長押しで有効/無効の切替えを行ないます。
各種リピートやランダム再生を無効にしつつ、タイマーを無効にしていると1時間で電源オフ。タイマーを有効にしていると30分で電源オフです。リピート再生やランダム再生をしていて、タイマーを無効にすれば、バッテリーが切れるまでずっと再生を継続できます。
説明書は、添付の紙にQRコードがありますので、そちらからWEBベースの取説にアクセスできます。
ON・YUは、シンプルイズベストという言葉がしっくりくる、機能を徹底的に絞り込んだ製品。例えば、音源の入れ替えや追加は出来ません。ファームウェアの概念もありません(機能追加などがない)。専用のコントロールアプリもありません。Bluetoothスピーカーにもなりません。よって、オーディオ製品というより、やはりインテリア雑貨というカテゴライズが適切だと思えます。
目の前に置くだけで、まるでその場にいるような臨場感、没入感が味わえるということですが、その技術的背景はKORGオリジナルのAcoustage技術にあります。基礎となる技術は昔からフロント・サラウンドのホームシアターなどにも応用されており特別新しいものではありません。人間の聴覚が、2つの耳だけで距離や方向を感じられる理由について調べたことのある方もいるでしょう。まさにアレがベースです。Acoustageによって、2つのスピーカーだけで3Dサラウンドを感じることが出来ます。Acoustageの強みは、独自に開発した測定方法とこれまでの知見に基づいたシステム全体の位相や周波数の最適化を行なっている点にあるそうで。ON・YUのAcoustageは、空間に音をちりばめる一番潤沢な処理を施しており、その準備は音源制作時に完了しているため、ON・YU本体にはDSPなどは入っていないと思われます。低コスト化・高音質化にも貢献してそうですね。
橋爪徹が考える「ON・YUの後継モデルがあるとしたら?」
ON・YUを使ってみて、もし後継機が出るとしたら、こんな機能が欲しいというアイデアがいくつか浮かんできました。思いつく限りの要望(願望)をまとめて本稿を締めたいと思います。
コントロールアプリ(再生中音源の確認/本体ボタンのリモコン機能)
ファームウェアアップデート機能
ボリュームインジケーター
底面に三脚穴
音源追加機能
USB-PD充電機能
カラーバリエーション
①は、一番ほしい機能ですね。音源は7種類+ダイジェスト1種の計8種が2パターン入っているのですが、今流れてる音がどれなのか時々分からなくなりました。心配なのでマニュアルを見ながら再生ボタンを2回押してトラック送りをして、音源ライブラリを一周して目的の音を探すというケースが実際にありました。
また、ボリュームは、就寝時に手元のスマホでコントロールできると嬉しいです。ベッドに寝っ転がって音を聞き、音量を調整したくて起き上がって、チェストまで移動してボリュームを微調整してまた寝転がって、また音量調整するために起き上がって…を繰り返すのは、億劫でした。
②は、ファームウェアアップデートで新機能が追加されたり、機能改善してくれたら嬉しいなと思ってリストに加えました。ボタンは4つだけですが、ファームウェアアップデートによって、押し方を変えることで新機能を使えたりとかオーディオ製品あるあるですよね。LEDの照度を変更できたりとか。夢が広がりんぐ!
③は、アプリが無いと仮定した場合の代替案でもあります。ボリュームの状態(数値等)が分からないので、シチュエーションが変わるたびに適切な音量を微調整しないといけないのはちょっと不便です。「就寝時は3目盛り」「リビングでやる作業時は6目盛り」というように、音量インジケーターがあれば、ベストな値をユーザが覚えておくことで、スムーズに音量調整が出来るのではと。
あるいは、今あるモードLEDだけでボリュームインジケーターを実現するという方法も考えられます。ボリューム操作をしているときだけ、モードLEDがボリューム表示を担当するというもの。ボリュームゼロは点灯・点滅なし⇒(左から)1個目点滅⇒1個目点灯⇒2個目点滅(左隣のLEDは継続点灯、以下同様)⇒2個目点灯⇒3個目点滅⇒3個目点灯⇒4個目点滅⇒4個目点灯、これで9段階のボリュームが表示できます。実機は15段階くらいボリュームを変えられるため、もし同じステップで実装するなら、色を変えていくことでさらに階層表現するとか。最初は、白で点滅・点灯していって、さらに上げるときは左から黄色で点滅・点灯していけば、9+8で17段階表現可能? この辺りは、ファームウェア機能があれば、追加で実装出来そうです。
④は、設置場所の自由度を高めるためのもの。一脚や三脚の上に設置できればよりベストな3D音場を楽しめると思うからです。特に私の場合は、就寝時に頭の左真横に設置するしかありませんでした。枕元の上、左右の耳に均等に音を届ける場所に置くためには、我が家のベッドでは対応できません(シンプルなベッドで物を置くスペースが無い)。底面に三脚の穴があれば、カメラ用の三脚が使えます。重さ的にもカメラ+レンズの方が重いくらいなので、いけるかと。重量バランスもよさそうですし。
⑤は、⑥と一緒に実現してほしい機能です。USBでPCに繋げて、オプションとして追加配信されるコンテンツ(音源)をインストール出来るようになれば、末永く使えるでしょう。追加配信コンテンツは、個別に有料でもいいですし、次世代ON・YUを購入時に「追加コンテンツ4本保証版」とか「3年保証版」とか別プランを設けて、それを買った人に無償で提供するのもありかと思います。また、9VバッテリーはUSB-PDで充電できそうなので、iPadとかのUSB充電器が流用できると理想的です。
⑦は、ピュアオーディオのスピーカーのように、木目を基調としたワインレッドとか、ピアノブラックとか、色違いがあれば選ぶ楽しさも増えて面白そうです。
試用を終えて
ということで、PR案件じゃないのをいいことに好き勝手に要望を書いてしまいましたが、こんなに新しいアイデアが沸いてくるくらい、プロダクトとして魅力的で、可能性に溢れていて、KORGの次のアクションに期待したくなる逸品なのです!
シンセサイザーや電子ピアノといった、まさにガチの電子楽器メーカーKORGがインテリア雑貨を出すというサプライズは、クラファンの大成功によって幸先のよいスタートを切りました。追加販売分も本稿執筆時点で残り138個としっかり売れている様子。ネット上にON・YUを使ったという一般の方の感想やレポートが溢れれば、きっとKORGさんもレギュラー製品としてインテリア雑貨をカテゴリーに加えてくれるかも!?
ということで、大変楽しい試用でした。KORGさん、ありがとうございました。
よろしければサポートをお願いいたします。お気持ちだけでも構いません。 いただいたお金は今後の記事の充実などのために活用させていただきます。