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食材ひとつ料理1 「雷豆腐メキシカン」

今回のお料理をご紹介する前に、素描料理について少しお話したいと思います。

「素描料理」は私が作った造語なので、辞書には載っていません。
「素描」とはデッサンのこと。鉛筆で描く下絵ですが、素描料理も鉛筆で描くようにシンプルで飾らず、素を描くように料理することを大切にしています。「見る」「聞く」「嗅ぐ」「手を動かす」ことに集中しながら、今日のひと皿にしていきます。

素描料理は2つのパートに分けます。

I[台所考察]
考察というと難しそうなイメージですけれど、台所での動き方や料理する裏側を観ていくことです。
台所に立ったらひとりで料理するわけで、誰も助けてくれない。料理に向かう瞬間から後片付けまで、すべてを自分でやらなけばいけない仕事です。
どうしたら気持ちよく台所に立てるか。
どう動けばおいしくなるのか。
へこたれずに料理を続けるにはどうしたらいいのか。
そんな心の動きを応援するための考え方です。
アノニマ・スタジオWeb連載「宮本しばにの素描料理」で掘り下げていますので、そちらをご覧ください。

II[実践]
料理を「楽」にするための調理法です。
楽というと、袋を破っただけの料理とか、電子レンジでチンするとか、そんな料理を考えがちですが、そういった’楽’ではなく、
スムーズに料理する。
シンプルに考える。
料理で悩まない。
自由に考える。
というような、料理ストレスから開放するための料理法です。
できるだけ食材や手順を少なくし、道具を上手に使いながら簡素に仕上げます。
実践はAとB、ふたつからアプローチしていきます。

A. 土台レシピ+食材 
料理本は星の数ほどありますが「料理難民」から抜け出せずにいる人は多いはず。それを「土台レシピ」という形で料理を仕分けし、そこから広げていく方法です。
土台レシピと食材とのマッチングなので、料理を組み立てやすいのが特徴です。冷蔵庫の中にある半端な食材をダメにすることもなくなりますし、レシピのためにスーパーへ行く回数も減ります。
土台をしっかり、あとは自由に、という考え方です。
今までいくつかnoteに掲載していますので、そちらをご覧ください。

B. 食材ひとつ料理
ひとつの食材で作る料理です。
(調味料や薬味野菜などは使いますので、厳密には’食材ひとつ’ではありませんけれど。)
食材ひとつで料理できるので気が楽になりますし、ストレスが減りますね。
また必然的にシンプルなひと皿になりますから、仕事の負担も軽くなります。
目の前の食材ひとつを生かす。これも素描料理の表現方法です。

食材ひとつ料理・玉ねぎの和スープ
宮本しばにの素描料理4(アノニマ・スタジオWeb)

では「実践B・食材ひとつ料理」を実際に作っていきます。

雷豆腐メキシカン。豆腐1丁で作ります。
我が家のランチでよく作る料理。パン(ピタパンが合います)に挟んだり、トルティアで巻いて食べています。
ごはんにも合うので、ワンプレートの一品としても。

ちなみに、「雷豆腐」という料理は江戸時代に庶民のあいだで広まりました。豆腐を鉄フライパンで炒めると、バリバリッと豪快な音がするので、こんな名前が付きました。カリッと焼けた豆腐の香ばしさは格別で、塩、こしょうだけでも十分においしく、つまみ食いが楽しい料理です。
ぜひ、鉄フライパンでおいしい音を出してみてください。

雷豆腐メキシカン
・硬めの木綿豆腐1丁
・生姜、ニンニク 各ひとかけ(おろす)
・チリパウダー 小さじ1/3〜1/2
(チリパウダーはアメリカのメキシカン系料理に使われるもので、唐辛子、オレガノ、クミン、パプリカ、ニンニクなどのミックススパイス。チリパウダーがなければ、家にある単品のスパイスを混ぜて使う。チリペッパーだけでもいいし、オレガノやクミンを使うとメキシカンテイストになる。)
・しょうゆ ふたまわし
・塩コショウ 適量
・ケチャップ 適量

1.豆腐を適当にほぐしてザルにいれ、水を張ったボウルを重しにして上に重ねて30分ぐらい置く。時間がなければ10分ぐらいでもOK。

硬めの豆腐を使うと調理しやすい

硬めの豆腐であれば、手でしぼっても水分が出てくる。時間がないときにはこんなやり方もアリ。

時間がないときは手で絞る

1.鉄フライパンに油を大さじ1ほど入れ、鍋底に油を広げながら煙が出るまで熱し、一呼吸置く。これでフライパンの底が油でコーティングされる(強火)。

2.豆腐をほぐしながら炒める(強火)。木べらで豆腐を細かくしながら好きなサイズにする。

豆腐によっては、はじめは水分が出てグツグツと煮るような感じになるが、そのまま水分を飛ばしながら炒めていると、豆腐が引き締まってきてポロポロになってくる。水分が完全になくなり、豆腐に焦げ目がつくまで炒める。

炒め終わり
塩コショウだけでもおいしい

3.すりおろした生姜とニンニクを加えてさっと炒め、塩ひとつまみ(小さじ1/4前後)、こしょう、チリパウダーを振る。

4.しょうゆを回しかけて炒める。(この時点で味を決めなくてもいい)。

5.ケチャップをかけて炒める。
(ケチャップは味をチェックしながら入れる。)

ケチャップを入れて

6.最後に味をチェックし、塩で味をととのえる。
好みでスパイスを足す。

炒めて、炒めて

例えば、
チリパウダーの代わりにカレー粉を入れたり、
醤油とみりん(砂糖)でテリヤキ風の丼にしても!
オムライスや洋風チャーハンの中身として。
豆腐の佃煮もいいなぁ。

ポロポロでカリッとした豆腐の違った姿形は、想像力を掻き立てられて、新たな料理の発見にもつながると思います。

食材ひとつ料理の可能性をこれからも表現していきたいと思っています。

トルティアとチーズをフライパンで温め、
雷豆腐メキシカン、アボカド、サルサソース、スプラウツ(+マヨネーズ)をのせて巻く

最後に、
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