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イタリアバレーの採点をポジション別に比べる

 現行の採点法の仕組みを理解することを目的に、前回の分析ではイタリアセリエAの試合ごとの採点を集計しました。

 今回は選手のポジション別に採点の傾向を比較してみようと思います。

ポジションによって採点に違いはあるか?

 前提になりますが、選手の成績はポジションによって変わってきます。一般に、ミドルブロッカーはスパイクの打数が少なく、決定率は高くなる傾向があります。これに対して、サイドの選手は、スパイクの打数は多いですが、決定率は低くなる傾向があります。一方、セッターがスパイクを打つ機会は稀で、得点はサービスエースか、ブロックによる得点が中心です。また、リベロはプレーが直接得点になることは稀です。

 こうしたポジションによるプレーと得点への関与の違いは、採点に影響するのか?というのが今回のテーマです。

 採点が高くなりやすいポジションなどがあるのでしょうか?

使用データと選手のポジション

 というわけで、採点をポジションごとに比較したいと思います。

 分析に使用するデータは、イタリアセリエAの男子1部(A1)と2部(A1)の2010/11シーズンから2018/19シーズンのレギュラーラウンドの試合結果と、女子男子1部(A1)と2部(A1)の2010/11シーズンから2016/17シーズンのレギュラーラウンドの試合結果になります。

 今回は、セリエAの公式サイトに登録されている選手のリストから以下の4つのポジションに選手を分類しました。

・Schiacciatore – Spiker – スパイカー
・Centrale – Middleblocker – ミドルブロッカー
・Palleggiatore – Setter – セッター
・Libero – Libero – リベロ

 あくまで登録上のポジションなので、試合には異なるポジションで出場している可能性もありますが、そうしたケースは少数で無視してもそれほど大きな影響はないと考えます。また、女子に少数Oppsiteに分類される選手がいましたが、人数が少ないので今回はSpikerに分類して集計しています。

ポジションによる採点の比較

 それでは、選手の採点の分布をポジションごとに集計したものを見ていきます。まずは以下の図1-1-1に男子1部(A1)のデータを示します。

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縦の軸は該当する選手の人数を表します。ポジションごとの内訳を%で表しても良かったのですが、採点の付く人数の違いを確認する意味も兼ねて人数表示にしています。

 リベロにも稀に採点がつくケースもあるのですが、データを集計したとところ、リベロとして出場した試合に採点が着いたケースは無かったため、集計からは除いています。

 データを見ると、ミドルブロッカーの採点が他と比べると高くなるケースが多いことが確認できます。ポジションごとの特徴は後で勝敗と一緒に確認しますので、以降は他のカテゴリの分布を確認していきます。男子2部(A2)のデータを以下の図1-1-2に示します。

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 男子1部(A1)とそれほど違いの無い分布です。

 次に、女子のデータを以下の図1-2-1に女子1部(A1)、図1-2-2に女子2部(A2)の集計結果を示します。

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 ミドルブロッカーの分布に少し特徴はあるものの、概ね男子と同じ分布となっています。

 以上のデータより、男女1部2部に関わりなくポジション別の採点の分布は概ねおねじ傾向であることが確認でき、どちらかというとミドルブロッカーの採点が他のポジションより高くなることがわかりました。

勝敗による採点の比較

 次に、勝敗による採点の違いを比較していきたいと思います。全部のポジションを一度に比較するのは情報が多すぎるので、これもポジション別に比較していきたいと思います。

 まずは、スパイカーについて、以下の図2-1-1に男子1部(A1)、図2-1-2に男子2部(A2)の集計結果を示します。

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 1部と2部の違いはほとんどありません。負けた試合では5.5の採点となる選手が多く、勝つと6.0以上の選手が多くなります。また、採点が5.5点未満になる選手はほとんどおらず、5.5を最低ラインと見て良いでしょう(A2に1人だけ5.5点未満の選手がいました)。

 続いて、女子のデータを以下の図2-2-1に女子1部(A1)、図2-2-2に女子2部(A2)の集計結果を示します。

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 基本的には男子と同じ傾向です。女子ではA1に1人だけ、A2では15人が5.5点未満でしたが、カテゴリ全体の1%に満たない人数なので5.5点を最低ラインと見て問題ありません。

 次に、ミドルブロッカーについて、以下の図3-1-1に男子1部(A1)、図3-1-2に男子2部(A2)の集計結果を示します。

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 1部と2部の違いはほとんどありません。そして、勝っても負けても6.3点の選手が最も多くなっています。ただし、勝った場合は6.8点の選手が多く、負けると6.0や5.5の選手が出てきます。スパイカーと同じく、こちらも5.5点が最低です。

 続いて、女子のデータを以下の図3-2-1に女子1部(A1)、図3-2-2に女子2部(A2)の集計結果を示します。

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 1部と2部の違いはほとんどありませんが、男子と比較すると少し違いがあります。6.3点が最多なのは男子と変わりませんが、それ以上の高得点の選手が少なく、6.0や5.5の選手が多くなっています。分布に3つのピークがあり、選手の出来と不出来がわかりやすくなっています。最低点が5.5なのは共通です。

 最後に、セッターのデータを以下の図4-1-1に男子1部(A1)、図4-1-2に男子2部(A2)の集計結果を示します。

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 5.2点と6.3点にピークがあり、勝敗の差はそれほどありません。これまでのポジションんと比較すると分布の幅が広いことが特徴で、5.5点を下回るケースもあれば、非常に高い得点になる場合もあります。

 続いて、女子のデータを以下の図4-2-1に女子1部(A1)、図4-2-2に女子2部(A2)の集計結果を示します。

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 こちらも男子と同じく、分布の幅が広いのが特徴です。女子1部(A1)では勝利した試合の採点が高いケースが多いですが、女子2部(A2)では勝敗の差はそれほど見られません。

まとめ

 ポジションごとに採点を比較しましたが、ミドルブロッカーは採点が高くなりやい事がわかり、単に得点の高低を見るだけではなく、それぞれのポジションに応じてよい成績だったかどうかを確認する必要があることがわかりました。

 ここで注意しておきたいのは、採点の目的は「勝利への貢献度」を得点化することであって、現状ではポジションごとに採点に差があるからといって、無理にそれを修正して揃える必要はないということです。

 現行の採点法がどれくらい勝利への貢献度を反映できているかという観点から評価されるべきで、そこにポジションによる貢献度の違いがあれば、それは勝利への貢献度の違いとして得点化されるべきことです。

 というわけで、次のテーマは各ポジションのどのようなプレーが採点に反映されているかということになります。次回以降これを検証していく予定です。

おわりに

 今回の分析で使用したデータは以下のGithubにアップしています。ご自分で分析してみたい方はデータをダウンロードして利用してください。

 使用したのはこの中の以下のファイルになります。

 ・legavolley_personal_gamelog.csv
 ・legavolley_gamelog.csv
 ・Legavolley_femminile_personal_gamelog.csv
 ・Legavolley_femminile_gamelog.csv

 今回は、ここに選手のリストのデータを追加しました。公式サイトにある選手のリストをデータ化したものです。

 このデータも以下のファイルとして上記のリンクに追加していますのでご利用ください。

・Legavolley_playerlist.csv
・Legavolley_femminile_playerlist.csv

 今回は選手のポジションの識別に用いましたが、年齢や身長、出身の構成などの分析にも使えると思います。

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タイトル画像:いらすとや

データ元


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