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得点と勝利確率

 先日、バレーボール研究第22巻第1号が届きました。日本バレーボール学会が発行している機関紙ですが、そこで研究資料として「得失点とサーブ権によるバレーボールの勝利確率の推定」が掲載さることとなりました。渡辺啓太氏との共著になります。

 今のところ会員しか読めませんが、近々Webでも公開されると思うのでそちらで見てもらえればと思います。

 今回はその記念というわけではないですが、紹介も兼ねて論文とは別のデータも出してみたいと思います。

得点から戦況を推定する

 バレーボールのプレー、もしくは観戦の経験が多少あれば、得点を見ればどちらのチームが優勢なのかというのはだいたい検討がつくと思います。

 今回の研究の目的は、両チームの得点とサーブ権(※)の有無から、一方のチームが勝利する確率を推定することでした。

※ラリーポイント制の導入後にサーブ権は存在しませんが、ここではサーブから始まるラリーかどうかという意になります。

 体感的になんとなくわかることを、わざわざ数値化するメリットは?

 と思われる人もいるかもしれません。しかし、経験のある人だけが試合を見るわけではなく、ビギナーには補助的な情報として役立つでしょう。

 また、あるチームが逆転でセットを取った場合、その逆転劇がどれくらい追い込まれていたのか、逆転のきっかけとなったプレーは誰によるものなのかといった試合を振り返る材料を豊かにしてくれます。

 その他にも、勝利確率が動くという性質を利用した応用が利くというメリットもあり、バレーボールへの導入を試みたわけです。

イタリアのデータでも見てみるか

 というわけで、論文はそのうち見ることができるようになると思います。論文では、日本のVリーグのデータを用いて分析しましたが、今回は思うところがあってイタリアのリーグのデータを集めたので、同じ分析はできませんが、イタリアでの得点と勝利確率の関係を分析してみようと思います。

イタリアのデータには得点経過の記録がある

 というわけで、以下のイタリアのリーグより、2010/11シーズンから2018/19シーズンまでの1部(A1)の試合における得点のデータを集めました。

男子

女子

 上記のサイトには以下のリンクのように試合ごとの記録があり、

 そこでは下図のように1から4セットでは8点、16点、21点先取した時点、第5セットでは5点、10点、12点を先取した時点での得点の記録があります。

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 今回は、このデータを使って、各得点先取時における得点差ごとのセットの勝利確率を求めました。

8・16・21点先取時の勝利確率(1~4Set)

 まずは、1から4セットでの8・16・21点先取時の勝利確率のデータを以下の図1-1から図1-3に示します。

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 8点先取時に得点差が+3つまり、8-5のスコアの場合、8点先取したチームのセットの勝率はおよそ80%という感じでデータを見ていきます。8点先取時はまだ序盤のような気もしますが、リードしている側にかなり有利な状況といえます。

 細かなデータについては表にして末尾に載せておきます。

5・10・12点先取時の勝利確率(5Set)

 続いて、5セット目の5・10・12点先取時のセットの勝利確率を以下の図2-1から図2-3に示します。

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 5セット目はサンプルが少ないので、図1よりもガタガタしたグラフとなっていることが確認できると思います。これが実際のデータから勝利確率を求める上での弱点で、ゲーム中あまり起こらない得点差は極端な勝利確率となってしまうリスクがあります。

 論文ではこの問題を考慮して統計的に予測式を作成し、推定値を求めています。ここではイタリアのデータをそのまま載せています。

やろうと思えば勝利確率を求めることはできる

 というわけで、多少の問題はありますがデータを集めることで勝利確率を求める例を示しました。これ以外のデータであっても、データさえあれば同じように勝利確率を求めることができます。

 あって困るデータではないので、いろいろなカテゴリで使われるようになればと思います。

ハイキュー!!最終回に寄せて

 本文とは全然関係ない話ですが、本日で漫画『ハイキュー!!』が最終回を迎えました。物語にいつか終わりは来るものですが、やはり寂しいものですね。

 古舘春一先生、今まで素敵な作品をありがとうございました。

 単行本派なので最終巻を楽しみにしております。


タイトル画像:いらすとや


以下、図1と図2で示した値の表を掲載しておきます。細かいところまで気になる方は参照してください。

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