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投球数と球速のばらつき 先発投手

前回の分析では、平均球速が同等の選手のストレートの球速のばらつきを集計しました。

 平均球速が同程度であれば球速のばらつき(分散)も案外差は無いのではないか?と考えたのですが、9人ほどのピックアップではそれなりに違いが見られました。
 
 今回はタイトルにもあるように、投球数に着目してみたいと思います。
 
 野球は槍・円盤・砲丸といった投擲競技のように、複数回の試技の中から最高の記録を競うわけではありません。ゲームを通して投球数が増えていくことで、球速にはどのような影響があるのでしょうか?
 
 案外下図のように、投球数が増えても球速のばらつきには変わらず一定なのかもしれません。

 この図は、大体球速がこの水色の範囲に収まる、つまりは球速のばらつきに変化はないのでは?というイメージです。
 
 しかし、投球数が増えて疲れてくれば、下図のように球速のばらつきが大きくなっていくという可能性も考えられます。

 また、投球数が増えてもまだ投げているということは、それなりに良いパフォーマンスであることから、投球数が増えるとばらつきが小さくなるという可能性も考えられます。
 
 これは、実際にデータを見て見ないことにはよくわからないので、以下の表1に示す。前回の分析対象者の中から、Yusei Kikuchi(菊池雄星)選手とBlake Snell選手の2人をピックアップしてデータ見てみたいと思います。2人を選んだのは、この中で先発投手だったためです。

投球数と球速の分散

 それでは、2021年の菊池選手とBlake Snell選手のストレートの球速と投球数との関係を、以下の図1-1と図1-2に示します。

 これは横の軸に投球数を、縦の軸に球速(m/h)を取ったものですが、2人とも球速のバラツキにそれほど違いが無いようにも見えます。
 
 これはあくまで視覚的印象なので、10球ごとに平均球速と標準偏差を求めたデータを以下の図2-1と図2-2に示します。

 真ん中の折れ線が平均球速の変化を、上下の色つきの部分が標準偏差の範囲となります。それほど大きな変化はありませんが、球速が多くなると標準偏差が小さくなります。
 
 次に、投球イニングごとに同様の集計をしたものを以下の図3-1と図3-2に示します。

 こちらは明確に、投球イニングが進むごとに平均球速に変化は無い物の、標準偏差が小さくなっていきます。

まとめ

 以上のデータから、投球数というよりは投球イニングが進むほど球速のばらつきが小さくなっていくということがわかりました。
 
 野球中継を見ていると、先発投手の立ち上がりの内容には随分と神経質だなとは思っていたのですが、今回のデータからは立ち上がりほど球速のばらつきが大きいことがわかり、これも神経質になる原因のうちの1つなのかな?と思いました。
 
 今回の結果は、あくまで2人の投手の傾向なので、もう少し範囲を拡大した分析をしたいところですが、次回はリリーフ投手で同様の集計をしてみたいと思います。
 

タイトル画像:いらすとや

データ

 

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