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平均球速について

 森本崚太氏の著書『野球データ革命』には、“変化球はフォーシームとの球速割合が重要”という項があります。 

 フォーシームのストレートと変化球との緩急は、速度差が大きければ大きいほど良いわけではなく、適切な速度差があるというものです。
 
 ここでストレートや変化球の球速といっても、毎回同じ球速で投げるわけではないので、その平均をとって比較をします。今回はこの平均球速について考えてみたいと思います。

球速の分布

  球種ごとに1球ごとの球速を集計していくと以下のような分布となります。 

 これはダルビッシュ選手の球速の分布を例として挙げたものです。他の投手についてはBaseball savantのPitching Distributionsというところからみることができます。

 シーズンや球種によって形は微妙に変わってきますが、大体以下の図1のような形になります。

 山型の分布で山の頂点あたりの球速での投球が最も多く、そこから球速が速く、もしくは遅くなるほど投球の頻度は少なくなるというかたちです。この分布の平均値をとると、山の頂点付近の値になります。

平均値では見えない所

  このように球速で分布を見ると、平均値では目の届かないところがあります。例えば、以下の図2のように平均値は同じでも分布を見ると形が異なる場合もあります。

 赤の分布は平均前後の球速が多いのに対し、水色の分布は平均よりも速い投球や遅い投球が多いという分布になります。このように、平均が同じでもデータの分散が異なるという場合があります。
 
 また、投手の場合、1回の登板でそれなりの球数をなげます。初球と100球目が同じ状態ではないのは確かで、こうした球速に影響する要因も存在します。

平均で丸められている投手の個性は存在するか?

  何も平均球速という値を用いるなといいたいわけではありませんが、このように平均値という1つの値に集約していく過程で漏れていく情報もあるということです。そこに埋もれてしまっている投手の個性のようなものはないだろうか?と考えた次第です。
 
 といっても、掘り返したところで何も出ない可能性もあります。それならば、平均球速のデータを気持ちよく使えるわけで、どちらに転んでも良いかなと考えています。
 
 次回は、同じくらいの平均球速の投手の球速の分散をまとめてみたいと思います。

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