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アイデア論 実践編2

 前回は、アイデアを出し、データの分析に至るまでの一連の流れを解説しました。

 データ分析に至るまでの論理の流れはケースバイケースなのですが、いくつか基本的なやり方を抑えていけば、そこからの応用で対応していくことができるようになっていきます。

 前回はオーソドックスな論理展開のパターンを紹介したので、今回は別のパターンを紹介してみたいと思います。

論争状態

 今回紹介するのは、先人の知見が論争状態にあるケースです。一方が正しいのであれば、もう一方は正しくないという結果になるはずなのですが、両方とも正しいという矛盾した知見が報告され、どちらが正しいという結論には至っていないという状態です。

 “論争”というと物々しいイメージをもたれるかもしれませんが、要は『きのこたけのこ戦争』状態にあるということです。きのことたけのこであれば、個人の好みで済むかもしれませんが、バレーボールにおいて、相矛盾する戦術がそれぞれ有効といわれているような状態は、放っておくべきではないでしょう。

 こうした論争が頻繁に起こるわけではないのですが、何年も論争が続くようなこともあったりします。バレーボールにおいて、矛盾した知見が報告されているというレベルの論争は、自分は寡聞にして知らないのですが、以前書いたレセプションについての矛盾などは、論争になり得るテーマといえます。

 このような、先人の知見が矛盾し結論が出ていないテーマというのは、難しいテーマではありますが、やりがいのあるテーマです。このテーマへの切り込み方としての論理展開の例を示したいと思います。

1. いずれか一方が正しいことを証明する

 論争状態を解決させる論理展開としては、矛盾しているいずれかの一方が正しいことを証明するというのが1番の基本でオーソドックスな切り口です。

 この場合は、前回紹介した論理展開と同じ流れになります。一方が正しいことを論理的に証明し、且つ、なぜもう一方でも矛盾した現象が認められたかという説明が必要です。

2. 両方正しい

 論争状態の場合、いずれかが正しいという答えだけではない可能性もあります。長年論争が続いくような場合、最終的には両方正しいということも起こり得ます。両案が成立することが無いから矛盾というのですが、この矛盾を解消する方法が発見されるということです。

 例えば、AとBは矛盾する仮説だったけれど、右から見ればAで左から見ればBという視点の違いだったという感じでしょうか。現実はこんな単純なことではないのですが、どちらか一方が正しいのではなく、矛盾を解消し両立させてしまうような展開もあるということです。

3.両方間違っている

 矛盾を解消して両方正しくなる展開もあれば、両方間違っているという場合もあります。間違っているというよりは、より包括的な観点から見れば先人の矛盾した知見は、その一部でしかなかったという意味です。

 このように、先人の知見が矛盾し論争状態になっている場合は、「どっちが正しい?」という考えに囚われがちなのですが、より包括的な枠組みに内包してしまうというような論理展開もあります。

 どのような展開になるかはケースバイケースなのですが、こうしたいくつかのパターンを事前にイメージしておけば、どこに落とし込んでいくのかと論理をまとめていきやすくなります。

先人の知見が無い場合

 論争状態に続き、先人の知見が無い場合の論理展開についても紹介してみたいと思います。

 先人の知見が無いといっても色々なケースがあります。その1つに、テーマを絞りすぎているというものがあります。前回に、いくつかキーワードを設定してテーマを決めると説明しましたが、このキーワードを増やしすぎると、返って合致するテーマが見つからなくなってしまいます。

 前回例であげた自分の学会発表用のテーマは、元々は野球で分析が進められていたテーマで、それをバレーボールに転用したものです。

 バレーボールで同じような研究が無ければ、他競技にテーマを探す範囲を広げると上手く行くという例もあるということです。

 このように、検索方法を変えれば上手く行くという例もありますが、本当に未知のフロンティアといえるテーマもあります。その場合は、どんな方向から手を付けても良いのですが、初学者にはあまりお勧めしません。

 なぜなら、どんな方向から手を付けてよいといっても、適当に1つ2つ分析するだけでは、ちょっと唾を付けたのと同じだからです。

 未知のフロンティアで分析を展開していくには、大局を踏まえたプランの構築が必要です。単発の分析ではなく、分析を重ねていく中で、全体としてどのようなものが出来上がっていくかという計画が必要になります。

 これが初学者にはちょっと難しいのです。できれば初学者の人は、既に先人の知見の流れができているテーマを選んで、知見が積み重なる経緯を追いながら、そのテーマが大局的にはどのように動き、どのような成果をあげていったのかという流れを身に着けていくほうが良いでしょう。未経験の状態からこれを構築するのは大変です。

 既に、未知のフロンティアを見つけてしまっているのであれば、もうやるしかないのですが、例えば、テーマが決まらない時に「誰も手を付けていないテーマは無いものか」とフロンティアを探し回るのは、初学者のうちは特に止めたほうが良いと思います。

おわりに

 以上、データを分析する際の論理展開の例を紹介してきました。この辺りの展開方法を知っておくと、いざという時に役立つかもしれません。

 後は、何度も言いますが経験のある相談相手を見つけることですね。特に初学者のうちは、自分で展開するよりも、経験者を頼ってコミュニケーションを取りながら進めていくスキルのほうが重要です。

 というわけで、次回からはデータの分析に戻ろうと思います。

 余談ですが、今年のバレーボール学会の開催期間が1カ月延長されています。オンライン開催の強みですね。


タイトル画像:いらすとや


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