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新しいスタッツを作ってみよう サーブの効果とは
新しい「サーブ効果率」の提案を目指すこの企画ですが、前回のサーブの得失点の価値の重みづけに続いて、今回はサーブの『効果』について考えていきたいと思います。
サーブの効果とは、相手のサーブレシーブを乱したという意味になりますが、Vリーグでは相手チームのサーブレシーブの受数から、サーブレシーブの優と良を引いた値になっています。今回のテーマはこの効果の価値についてです。
サーブ効果の基本
効果の価値を考える前に、サーブ効果の基本的な性質を抑えておきたいと思います。
サーブ1本あたりの効果の平均はどれくらい?どれくらいの値になれば、効果が多い、少ないといえるのか?
こうした要素は基礎統計値と呼ばれるもので表され、この基礎統計値がわかるからこそ、データの多寡や良し悪しを判断することができるようになります。
というわけで、2017/18、2018/19シーズンのVリーグの1部(プレミアリーグ・DIVISION1)の選手を対象に、まずはサーブの打数と、打数あたりの効果の割合(効果/打数)の値を以下の図1に示します。
この手の値の特徴として、打数が少ない場合、効果/打数の値が極端に高く、もしくは低くなりやすくなることを図からも確認できます。100打数を超えたあたりからは範囲が安定してきます。どちらかというと、女子のほうが高い傾向も確認できます。
このデータから100打数以上の選手を対象に、基礎統計値を求めたものが以下の表1になります。
平均±標準偏差の範囲に大半(だいたい2/3)の選手が該当することを表しています。その下は最小値(Min)から最大値(Max)までを示しています。こちらでも女子のほうが高いことを確認できます。
続いて、効果/打数とサービスエース率(得点/打数)とミス率(失点/打数)との相関を求めます。
仮に得点/打数と正の相関関係が認められれば、得点の多い選手は効果も多いということになり、得点と効果の元となる能力は同じようなものであるという可能性も考えられます。
まずは、図1と同じくプロットしたものを以下の図2に示します。
ここから100打数以上の選手を対象に相関係数を求めたものを以下の表2に示します。
特に男子で得点/打数と効果/打数の相関が強く、得点の多い選手は効果も多い関係となっています。女子の場合、この関係が少し弱くなります。
効果の価値は?
基本的なところは確認できたので、前回のサーブの得点と失点と同じく効果の価値を考えたいと思います。
効果の難しいところは、得点や失点と違ってラリーが終了していないところになります。得点も失点もしていない状況の価値とは何か?というところが問題になります。
ただ、得点も失点もしていない状況ではあるものの、以下の図3にイメージを示しますが、状況としてどれくらい得点、もしくは失点に近づいたかという評価は可能で、これをサーブの効果と考えてみたいと思います。
それでは、サーブ効果がもたらした状況とは何かを考えるに、『その後の得点確率』というものを当ててみたいと思います。この得点とはサーブ側の得点、つまりはブレイクする確率ということになります。
以下の表3に、同時期のサーブ後のサーブレシーブの返球精度による、サーブ側の得点確率を示します。
サーブが効果と判定された場合の得点確率は男女ともに50%程度であることがわかります。精度が良→優とあがることで得点確率は低下します。
このデータより、サーブで効果を得ることは、得点の50%を達成することができた。つまり、サーブ効果率を求める計算式においては、効果は得点の半分の価値を割り当てることができる、という仮説を設定してみたいと思います。
効果の部分は可塑性に富む
以上、効果の基礎統計値の確認と、価値設定についての仮説を提案してみました。現状はあくまで仮説の段階ですが、とりあえずこれを元に新しいサーブ効果率の設定を行い、使えるものかどうかを検証してみようと思います。
ところで、今回は既存の指標であるサーブの「効果」を使っていますが、ここはサーブの評価を行う上では、もっと自由になっても良いところだと考えます。指標として何を用いるか、価値設定の方法等、改善や修正の方法は既存の指標に縛られる必要はありません。
最終的な評価ツールとしての効果が認められれば問題はないので、いきなり大規模な検証は難しくても、小規模なデータによる新指標の検証などはもっと気軽にあっても良いのではないかと思います。
タイトル画像:いらすとや
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