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小論:“数字に出ないプレー”の濃淡

 ちょっとイレギュラーな更新ですが、気になるニュースがあったので考えをまとめてみたいと思います。それが以下のニュースです。

 男子日本代表のネーションズリーグでスロベニア戦の記事ですが、注目したいのは記事の見出しにもある清水選手のコメントの太字の部分です。

スロベニアの強いサーブに崩され、ハイボールの処理がよくなかった。僕も含めて被ブロックやミスが多く、相手のディフェンスがいい時に我慢しきれなかったのが敗因。スロベニアは数字に出ないプレーがよく、ブロックフォローを何度もして決めてきた。お手本にしないといけないバレーをされた。明日はこの大会の集大成としてベストパフォーマンスをして勝ちたい」

 この“数字に出ない”というフレーズはよく耳にするのですが、これをブラックボックスではなく、その特徴を具体的に理解していくことで役立てることができるのではないかと考えます。

数字に出ないプレーとは

 まず、“数字に出ないプレー”という言葉を定義しておくと、それは「数値として測定されていないプレー」ということになります。反対に“数字に出るプレー”とは数値として測定されたプレーといえます。

 この“数字に出ないプレー”ですが、数値として測定することができるようになれば、それは“数字に出るプレー”となります。この“数字に出るプレー”への転換を、他の誰かよりも早く出来れば、それによって有利になる場合があります。

 というわけで、データを扱う者であれば、“数字に出ないプレー”に出会えば、それを数値化して役立てることができないかと考えるべきだと思います。その際のコツ、というわけではないですが、“数字に出ないプレー”の捉え方についてまとめたいと思います。

数字に出ないプレーにも段階がある

 “数字に出ないプレー”とはいいますが、単純に一括りにできるものではありません。その性質から、いくつかの段階に細分化できるからです。今回は例として、以下に示す4つの段階に分けてみました。

1.やろうと思えば測定することは可能だが、未だ測定されていない。
2.測定することは可能だが、コストがかかるため測定できていない。
3.測定するための機材が無い。
4.測定するための技術が確立されていない。

 段階が上がるにつれ数値による測定が難しくなります。

 1段階目は、未だ測定されていないというよりは、「測定する必要性に気が付いていない要素」といったほうが良いと思います。言われてみれば重要なことであっても、まだ気が付いていないことということは、しばしば起こるものです。

 2段階目は、コストの問題で測定できていない場合です。測定のための機材が非常に効果であるために手が出ないケースや、単純にカウントするようなデータであっても、必要な時間が長くなると人件費がかかって現実的ではないケースがあてはまります。

 3段階目は、測定する機材が無いことにはどうしようもないという話です。近年、トラッキングデータの測定が可能となり、人やボールの物理的属性を測定可能になりましたが、こうしたデータは測定ができる機材が開発さるまでは、手の出ない代物でした。

 4段階目、最後は「どうやって測定するのかですらわからないこともある」という話です。こうなると、なかなか手が出せる問題ではなくなってきます。

 こうした分類を考えずに、ただ“数値に出ない”と捉えてしまうと、比較的容易な1段階目であっても、手の出ない4段階目のように見えて機会を逸してしまいます。

まとめ

 というわけで、“数値に出ないプレー”と一言でいってもどれくらい数値化の見込みがあるかを考えるということは大切という話でした。

 最後に自戒を込めて書いておきますが、データを扱っていると、どうしても目先のデータ、つまりは“数字に出るプレー”の処理に終始してしまいがちになります。これは、データを見ていく上での視界が、現行の測定ツールの及ぶ範囲に限定されやすいということです。

 これに対して、今回紹介した清水選手のコメントにもあるように、“数値に出ないプレー”に対するアンテナは、実際にプレーしている選手が敏感な場合もあると思います。

 「視界を広く持て」といわれても人間限界がありますので、アンテナが敏感な現場とのコミュニケーションを密にしておくことで、目の届きにくい情報を得るということは大切だと思います。直接コミュニケーションが取れなくても、こうしたインタビュー記事にヒントがある場合もあるので、目を光らせておくと良いかと思います。

次回はデータの分析した結果を報告する予定です。

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