ブロックの安定性
今回は久しぶりにデータを分析したいと思います。
というわけで、これまで分析してきたデータの安定性について、ブロックの分析が最後に残っていたのでこれをやっていきたいと思います。
ブロックの評価
これまでデータの安定性の分析に使ってきたイタリアのデータで、ブロックについては「ブロック得点」の1つしかありません。今回は、これを出場した1セットあたりの本数に換算して年度間の相関を求めていきたいと思います。
ところで、ブロックの良し悪しを獲得した「ブロック得点」だけで評価できるものでしょうか?
当たり前ですが、記録として用意されているスタッツに、バレーボールの全てが詰まっているわけではありません。ブロックにあたってラリーが継続した場合、ブロックタッチが無くても、アタッカーのコースを限定させてスパイクを拾うことができたら?こうした要素もブロックの仕事といえます。
さらに、上で挙げた以外のブロックの要素もあると思います。そういう諸々の要素はあるでしょうが、今回は「ブロック得点」しか扱うことができません。
手持ちのデータはブロックというプレーのごく1部に過ぎないかもしれない。こういうことは悲しいことに良くあります。そんな時は、今後のヒントになることもあるので、まずは手持ちのデータの性質をできる範囲で明らかにしていくべきです。
というわけで、「ブロック得点」のシーズンを跨いだ安定性を分析していきたいと思います。
ブロック得点の年度間相関
それでは、2010/2011シーズンから2018/2019シーズンのイタリアのセリエAの男女それぞれ1部(A1)と2部(A2)において、2年連続シーズン50セット以上(途中出場を含む)の記録のある選手を対象に、1セット当たりのブロック得点(得点/セット)の年度間相関を求めました。まずは男子のデータを以下の図1に示します。
1部(A1)と2部(A2)ともに相関係数は0.70を超えており、強い正の相関関係が認められました。
続いて、女子のデータを以下の図2に示します。
こちらは1部(A1)と2部(A2)ともに相関係数が0.80を超えており、さらに強い正の相関関係が認められました。
これらの結果からは、1セットあたりのブロック得点はシーズンを挟んで安定している、つまり変化の小さいスタッツといえます。
前年の成績からの変化
これまでの分析と同じように、前年のブロック得点と、翌年から前年の値を引いた(前年-翌年)、前年からの変化の値との相関を求めます。
年度間相関が認められず、この前年からの変化の値と負の相関関係が認められた場合、そのスタッツは、選手自身ではコントロールが難しい性質を持つということがわかります。
これまでの分析では、スパイク決定率ではそのような傾向が確認できています。
既に強い年度間相関が認められていますが、こちらの前年からの変化の値との相関を求めた結果を、まずは男子から以下の図3に示します。
続いて、女子のデータを以下の図4に示します。
どちらも負の相関としては極めて弱いもので、スパイク決定率では確認された傾向は認められなかったといえます。
まとめ
以上の分析より、ある程度出場機会を得た選手の1セットあたりのブロック得点は、それなりに安定しているということができます。
以前の記事でも紹介しましたが、イタリアの選手はシーズンを挟んで大体半数のメンバーが入れ替わります。
こうした事情を考慮すると、所属するチームの環境が変わって、選手間での約束事が変わっても、ブロック得点は、あまり大きな変化はなく、選手個人の能力が反映されやすいスタッツといえるかもしれません。
または、基本的なブロック戦術はセリエAに浸透しきっていて、所属するチームの環境が変わって、選手間での約束事が変わっても選手個人の能力が反映されているとも考えることができます。
この辺りはデータを見てもわからないので、実際のプレーをよく観察する必要があります。そして、ブロックには得点以外にも重要な仕事はありますが、得点という明確な記録として残る部分は、個人の成績としては安定しており、選手の能力が反映されたスタッツと見ることができそうです。
ということは、前年から大きな変化があった場合、選手の不調や成長を考える必要があります。
ブラックボックスの多いスタッツではありますが、目に見える得点という部分は暗手推しており信用できる性質を持っているので、まずはこのスタッツを軸に選手の評価をするというのも、それほど間違った方法ではないと思います。
というわけで、使えるスタッツでシーズン間の安定性を分析しましたので、次回からは別のテーマで分析していきたいと思います。
今回の分析で使用したデータは以下のGithubにアップしています。ご自分で分析してみたい方はデータをダウンロードして利用してください。
使用したのはこの中の以下のファイルを1シーズン分の成績に集計したものになります。
・legavolley_personal_gamelog.csv
・Legavolley_femminile_personal_gamelog.csv
タイトル画像:いらすとや
データ元
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