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打球の方向と速度 -Pull型・Opposite型の打者の比較-

 今回は、方向別の打球速度の比較を行いたいと思います。

『逆方向に強い打球を……』とはよく聞くフレーズですが、逆方向(Opposite)へ強い打球を打てる打者とはどんな打者なのでしょうか?

 前回は、大谷翔平選手を例にデータを集計してみました。

 今回は、2020年のデータからDJ LeMahieu選手とKole Calhoun選手の2人のデータを見ていきたいと思います。

DJ LeMahieuとKole Calhoun

 選んだ2人ですが、DJ LeMahieu選手は逆方向(Opposite)への打球が多い打者です。

 一方で、Kole Calhoun選手は引っ張る(Pull)ことの多い打者です。

 上記のリンクより、2人の打球関係のデータを抜粋したものが以下の表1-1と表1-2になります。

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 2020年のデータを見ると、DJ LeMahieu選手は逆方向(Opposite:Oppo%)への打球が多く、ゴロの多い打者であることがわかります。一方で、Kole Calhoun選手は引っ張る傾向(Pull%)の強い打者です。MLB全体のゴロの割合(GB%)は約42%、フライ(FB%)が約35%、ライナー(LD)は約20%なので、Kole Calhoun選手はライナーの多い打者といえます。

打球速度の比較

 このように打撃スタイルが大きく異なる2人の打球速度を打球と方向別に比較していきます。

 まずはゴロについて、以下の図1-1から図1-3に示します。

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 横の軸に打球速度を区分し、縦の軸はそれぞれへの内訳を表しています。2人の打者と一緒に、2020年のMLB全体の分布も示しています。打球速度の単位はmile/hourです。

 図1-1と図1-3を見ると、DJ LeMahieu選手とKole Calhoun選手の分布は二山あるような形となっています。これは、速度の速い強いあたりのゴロと、遅いあたり損ねのゴロに分かれていることを意味します。

 図1-2では、Kole Calhoun選手は二山ありますが、DJ LeMahieu選手の山は一つです。DJ LeMahieu選手のセンター方向(Straightaway)への打球は他とは傾向が異なるようです。

 このデータは選手間の比較なので、選手内で打球の方向別に速度を比較したものを以下の図1-4と図1-5に示します。

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 図1-4のDJ LeMahieu選手は、引っ張った打球(Pull)の100~110m/hが少なく、引っ張った打球のほうが速いわけではないことがわかります。

 図1-5のKole Calhoun選手は、100~110m/hの割合が最も高いのはセンター方向(Straightaway)への打球であることがわかります。引っ張った(Pull)打球の分布を見ると、左側の山、つまりはあたり損ねの打球の分布が一番右よりで打球速度が速いことがわかります。

 同様の分析を、ライナーでもやってみたものを以下の図2-1から図2-3に示します。

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 2人の間で分布はそれほど変わりませんが、Kole Calhoun選手は逆方向(Opposite)へのライナーの速度がMLBやDJ LeMahieu選手と比較して速いことがわかります。

 選手内で打球の方向別に速度を比較したものを以下の図2-4と図2-5に示します。

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 図2-4のDJ LeMahieu選手は、逆方向(Opposite)への分布が左寄りで、速度が遅いことがわかります。逆方向(Opposite)への打球が多いといっても速度が速いわけではないというデータです。

 図2-5のKole Calhoun選手は、打球方向に寄る分布の違いはそれほどありません。センター方向(Straightaway)への打球では、100~110m/hが多く、引っ張った打球(Pull)だと80~90m/hの打球もあるといったところでしょうか。

 最後に、フライのデータを以下の図3-1から図3-3に示します。

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 Kole Calhoun選手はこちらも二山ある分布となっています。DJ LeMahieu選手は図3-2と図3-3で一山100%の分布となっていますが、これはセンター方向(Straightaway)と引っ張った打球(Pull)がそれぞれ1球ずつしかないためです。

 選手内で打球の方向別に速度を比較したものを以下の図3-4と図3-5に示します。

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 図3-4のDJ LeMahieu選手は、センター方向(Straightaway)と引っ張った打球(Pull)の100%の山が気になりますが、先述したようにこれはサンプルが少ないためです。ただ、この点考慮しても、逆方向(Opposite)への打球にそれほど速い打球の無い分布です。

 図3-5のKole Calhoun選手は、打球方向に寄る分布の違いはそれほどありません。ただ、ゴロの時と同じく、センター方向(Straightaway)への打球では、100~110m/hが多く、引っ張った打球(Pull)だと80~90m/hの打球もあるといったところでしょうか。引っ張った(Pull)打球の分布を見ると、左側の山、つまりはあたり損ねの打球の分布が一番右よりで打球速度が速いことがわかります。

まとめ

 以上、タイプの異なる打者の方向別の打球速度を比較しました。どうも得意とする打球方向に必ずしも早い打球を打っているとは限らない結果といえます。

 とはいえ、2人をピックアップしただけですので、もう少し対象者を増やして検証が必要です。それは、次回以降の課題とします。


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