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打球の方向と速度の比較 大谷翔平選手のPull - Opposite

 先日の分析で、方向別の打球速度の比較を行いました。

 今回は打者個人の方向別の打球速度を見ていきたいと考えています。

 ところで、『逆方向に強い打球を……』とは野球中継でよく聞くフレーズだと思います(MLBの中継では無いかも)。

 一般に、引っ張った(Pull)打球のほうが逆方向(Opposite)への打球よりも速度は早くなります。では、逆方向(Opposite)へ強い打球を打てる打者とはどんな打者なのでしょうか?

 可能性としては以下のような打者が考えられます。

・強く引っ張る(Pull)ことのできる打者は、逆方向(Opposite)にも強い打球が打てる
・引っ張り(Pull)はそうでもないが、逆方向(Opposite)に強く打てるスキルがある

 これを何人かの打者個人の成績を見ながら、どのような傾向になるのか探っていこうというのが今回のテーマです。

選んだのは大谷翔平選手

 というわけで、今回はタイトルにもあるように大谷翔平選手の方向別の打球の速度を比較してみたいと思います。パワーがあって強く引っ張る(Pull)ことのできる打者を想定しています。彼のパワーをもってして、逆方向(Opposite)に強い打球にも打てるのかというのがテーマとなります。

 最近は、大谷選手の打球の速度の情報まで教えてくれるニュースも増えましたが、個々の打球の速度ではなく、全体として打球速度がどのような分布になっているのか知りたいというのもあります。

大谷選手の打球速度の分布

 まずは、大谷選手の打球速度の分布を確認したいと思います。以下の図1-1から図1-3にゴロ(GB)の打球方向別の速度の分布を示します。

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 データは、2018年・2019年、2021年のものになります。2021年はオールスター前までの記録になります。3シーズンの打席数は同程度なので、比較するには丁度良い時期かと思います。

 左から、逆方向(Opposite)・センター方向(Straightaway)・引っ張り(Pull)の分布になります。縦の軸は打球数になります。速度の単位はmile/hourです。

 図1-1の逆方向(Opposite)へのゴロ(GB)を見ると、2018年と2021年はそもそも打球が少なく、2019年は90~100m/hのゴロが多いことがわかります。

 図1-2のセンター方向(Straightaway)へのゴロ(GB)は、2018年と2019年は100~110m/hのゴロが多いのに対し、2021年は90~100m/hのゴロが多いことがわかります。

 最後の図1-3の引っ張り(Pull)は、2021年は2018年と2019年と比較すると、80~90m/hと90~100m/hのゴロの数が少ないことがわかります。この速度のゴロが少ないために、2021年は今のところゴロの少ないシーズンといえます。

 続いて、ライナー(LD)について同様のデータを以下の図2-1から図2-3に示します。

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 図2-1の逆方向(Opposite)へのライナー(LD)は、図1-1のゴロに似て、2018年と2021年はそもそも打球が少なく、2019年では90~100m/hのライナーが多いことがわかります。

 図2-2のセンター方向(Straightaway)は、100~110m/hの打球が多いのは各シーズン共通ですが、2018年以降だんだんと少なくなってきていることがわかります。2018年は80~90m/hのところにも小さな山があり、100~110m/hの速いライナーと、80~90m/hの遅いライナーの2種類があったとわかります。

 図2-3の引っ張り(Pull)は、2021年に110~120m/hの打球が多いことが確認でき、打球速度の速いパワーのあるライナーが増えたといえます。

 最後に、フライ(FB)のデータを以下の図3-1から図3-3に示します。ポップフライのデータは割愛します。

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 図3-1の逆方向(Opposite)を見ると、2018年と2019年のピークは90~100m/hであるのに対し、2021年のピークは100~110m/hにあり、速いフライが増えていることがわかります。

 図2-2のセンター方向(Straightaway)は、3シーズンとも100~110m/hにピークがあることがわかります。

 図3-3の引っ張り(Pull)は、2018年と2019年は少なかったのに対し、2021年はかなり数が増えていることがわかります。

 こうして3シーズン分のデータを見ると、結構スタイルは変わってきていると見ることができます。2018年と2019年は現在よりもゴロが多く、特に2019年は逆方向(Opposite)へのゴロ(GB)とライナー(LD)が目立ちます。これに対して、2021年はゴロ(GB)が減り、引っ張る(Pull)フライ(FB)が増え、全体的に速い打球が多くなっています。これは大谷選手がパワーアップした結果といえるのではないでしょうか。

引っ張り(Pull)と逆方向(Opposite)の速度の差

 それでは、大谷選手の打球について、引っ張り(Pull)と逆方向(Opposite)の速度の差を比較してみたいと思います。

 ここで、引っ張り(Pull)と逆方向(Opposite)の『速度』をどのような値で見るかというのが問題になります。速度の平均値を求めても良いのですが、今回は100m/h以上の打球の割合を見たいと思います。

 打球の速度が100m/hを超えると、ライナー(LD)とフライ(FB)でHRになる確率が高くなります。これを大谷選手と、2017年から2019年までのMLBのデータで比較してみたいと思います。データを以下の図4-1(LD)と図4-2(FB)に示します。

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 水色がMLBのデータです。大谷選手のデータは全体的にこのMLBの100m/hの割合より高いことがわかります。

 したがって、大谷選手は、強く引っ張る(Pull)ことのでき、逆方向(Opposite)にも強い打球も打てるタイプの打者といえそうです。

 また、2021年と2018年の大谷選手のデータを見ると、水色のMLBのデータとほぼ平行であることがわかります。これは、強く引っ張る(Pull)と逆方向(Opposite)への100m/h以上の打球の割合の差自体は、MLBと大谷選手の間にそれほど違いが無いということを意味します。大谷選手は、逆方向(Opposite)への100m/h以上の打球の割合は、引っ張った(Pull)場合と比較して、低くはなるがMLBと比較してその差が特別大きくも少なくもないということです。

 この図で異質なのは、2019年の大谷選手のデータで、引っ張った(Pull)場合と逆方向(Opposite)との差がほとんどありません。

 図1から図3で見た打球の傾向では、2019年はゴロが多く、逆方向(Opposite)への打球の多かったシーズンです。こうした打撃傾向の場合は、両者の差が縮まる可能性がありますが、これは他の選手での確認が必要でしょう。

まとめ

 以上、大谷選手のデータでした。MLBのHR数トップを走るだけあって、納得のパワーといえるデータだったのではないかと思います。そして、そういう打者は逆方向(Opposite)にも強い打球を打てるという結果です。この結果は、2021年はこれまでのシーズンからのパワーアップと、それに伴うスタイルチェンジがあるのではないでしょうか。

 余談ですが、以下は私物のプロ野球チップスのカードです。現在の大谷選手はこの時よりも随分大きくなったように思います。

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 今後は、他の打者のデータも見てみたいのですが、パワーヒッターではなく、逆方向へ打つのが得意な打者を見てみたいところですが、この条件に合う選手などいないでしょうか。良さそうな選手がいたらリクエストいただけると助かります。

使用データ


 


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