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打球の速度を見てみよう

打球の速度

 これまではStatacastデータの打球の角度に注目してデータを見てきました。今回からはもう1つの側面である打球の速度に注目したいと思います。

 とはいっても、以前紹介したStatacastデータの欠損値を扱った記事に速度の分布は紹介されています。

 また、BASEBALL GEEKSの記事では単打・二塁打・三塁打・本塁打の結果別の速度の分布が示されています。

 ただし、後者は前回までに見てきた欠損データを補填した値をどのように扱っているのか明確になっていません。また、両者ともゴロ(GB)・ライナー(LD)・フライ(FB)・ポップアップ(PO)といった打球の種類のデータがありません。

 そこで今回は、打球を上記の4種に分類しそれぞれで速度の分布を確認したいと思います。

打球の速度の分布

 それでは、2019年のStatacastデータからゴロ(GB)・ライナー(LD)・フライ(FB)・ポップアップ(PO)という4種の打球の速度の分布を確認します。データは以下の図1に示します。

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 速度の単位はm/h(miles/hour)となっています。小数点以下は切り捨てて、1m/hごとのケースをカウントしました。

 破線は前回までに扱った欠損値を特定の値で補填した(可能性が高い)値になります。実線が各打球の分布になりますが、欠損値抜きの分布であるので、真の分布からは歪んでいる可能性があります。

 各打球の分布は右に行くほど打球が早くなるわけですが、右寄りなのはゴロ(GB)とライナー(LD)で、フライ(FB)は少し左よりとなっています。全体から見るとフライの速度は少し遅めといえます。

結果別に速度の分布を見る

 次に、シングルヒット、二塁打、三塁打、本塁打、アウトという結果別に速度の分布を確認したいと思います。まずはシングルヒットの分布を以下の図2-1に示します。

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 100m/h前後のゴロ(GB)とライナー(LD)の分布はほぼ重なっています。一方で、80m/h前後ではゴロは少なく、ライナーが多いことを確認できます。フライ(FB)でシングルヒットになるのは70m/hとゴロやライナーと比較すると遅いのが特徴です。

 続いて、二塁打のデータを以下の図2-2に示します。

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 二塁打はライナー(LD)が多く速度の分布も右寄りで速い打球が多いのが特徴です。

 次は三塁打と本塁打を以下の図2-3と図2-4に示します。

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 この辺りは打球による違いはそれほど大きくないようです。

 最後にアウトのデータを以下の図2-5に示します。

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 野球ではヒットになるよりアウトになるケースのほうが多いので、このアウトのデータが最も多くなります。そのため図1と似た形となっています。

打球ごとに結果を比較する

 ここまでは結果ごとに打球の分布を見てきましたが、データを見る角度を変えて打球ごとに結果の分布を見てみたいと思います。まずはゴロのデータを図3-1に示します。

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 100m/h超の速いゴロはシングルヒット(single)とアウト(out)の数にそれほど違いはありません。しかし、100m/h未満の場合、速度が落ちてくるとシングルヒットのケースは少なくなってきます。したがって、100m/h超の速いゴロもアウトになることはあるが、それでも速いゴロを多く打つことがヒットの量産につながるといえます。

 また、短期的に見て100m/h超の速いゴロを多く打っているのにも関わらずヒットになっていない場合、不運な打者であるという評価と、そこからの成績の回復が期待できるかもしれません。この辺りは個別の打撃成績を確認する必要があります。

 次にライナーのデータを以下の図3-2に示します。

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 アウト→シングルヒット→二塁打→本塁打と、結果が良くなるにつれ分布が少しずつ右寄り、つまり打球の速度が速くなっていることを確認できます。

 最後に、フライのデータを図3-3に示します。(ポップフライは割愛します。)

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 フライにおいても、結果が良くなるごとに右寄りの分布となっています。ただし、シングルヒットのみ70m/h前後の打球速度としては遅いものが多くなっています。


おわりに

 以上、同じようなグラフばかりになりましたが、打球の速度を確認しました。こうしたデータが個人の成績を見ていく際の基準となっていくと思います。今回はその土台作りという意味合いが強いです。

 次回は、もう一度打球の速度について、打球の方向に着目してみたいと思います。

タイトル画像:いらすとや

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